第7話 危険な奴
「やってない!?」
手応えがない。
いや、確かに殴るのは魔力の拳だ。
俺に手応えがあるかと言うとないんだが。
確実に生き物を殴った感覚がなかった。
魔力とその術者はリンクしていて、何かを殴れば重みだけなら伝わる。
けど、それがない。
「あれで私がやれると?舐められたものだ、魔皇になる者だぞ。あの程度の対策は済んでいる。」
「どうして俺の背後に……。」
まさか……あの巨人の拳はフェイク!?
俺の集中を一瞬でも逸らすのが目的……?
だが、ゴードンは俺にそこまで注意する必要は……。
「一撃で仕留めなかった自身を呪うんだな。私は、先輩殿が巨人の拳を使用した時点で、魔皇と戦っている認識をさせてもらった。」
魔皇として認識!?
巨人の拳一発使っただけで、そこまでの認識をする必要はない。
むしろ、その判断は過剰だ。
「どうして、そんな判断に。」
「先輩殿は魔神装が使え、魔女級の魔力がある。そして、失敗したようだが、魔神の鉄槌を使おうとした。先輩殿を魔皇として見るには十分過ぎる。」
決定打のほとんどが俺の行動かよ。
俺のバカ、なんで魔神の鉄槌なんて使ったの。
……すいません、カッコつけたかったんです。
だってしょうがないじゃないですが、今まで魔法なんて使えなかったんですよ。
だから、最初くらいは?すごいのを的な?
……俺が全部悪いですね、はい。
「さて、どうする?何か打つ手があるか?」
「流石にお手上げだ。」
全身タイツの変態に出来ることはもうございません。
対象の位置がわからないんじゃ、どうしようもない。
「じゃあ、これでトドメとしよう。巨人の拳。」
俺へと、巨人の拳が近付いてくるのがわかる。
抵抗なんて今更しないが、勝てると思ったんだが上手く行かないもんだな。
俺の横を何かが走り抜けたような気がした。
いや、確実に走り抜けた、それは巨人の拳の方へと一直線に。
「フンッ!!!」
素手で巨人の拳を粉砕する、頭のおかしい奴に見覚えがある。
というか、この格好は魔神装?
「久しぶりだなぁ。カルデぇ。」
「グレン……。」
「貴様……。」
「なんだぁ?ゴードンてめぇ、俺に文句でもあんのかぁ?」
グレンはお互いの兜の額に額を当てる。
魔神装《ヘパイストス》。
グレンの魔神装の名前だ。
魔神装には固有の名前と、特性がある。
グレンの魔神装《ヘパイストス》は炎属性の火力増しと、更に武器の錬金が出来る。
錬金術の魔神装とも言える。
「俺の嫌いな事、わかってんだろぉ?」
「何の事だろうか?」
「……てめぇ、本当に気に食わねぇなぁ。俺の嫌いなこと、それはァ……。」
大きく息を吸い、片足を踏ん張ろうとするのを見て、俺はすぐさま伏せる。
あいつ、こんな所であれする気かよ!
「弱いヤツが調子に乗ってんのがたまらなく気に入らねぇんだよ!!!」
叫ぶと同時に、踏み込む。
グレンを中心に強い熱風が発生し、近い塀などは崩れる。
《ヘパイストス》の特性なのか、わからないが。
あいつの怒りのボルテージが一定以上の時に、踏み込むと発生する強い熱風。
俺らはアレを怒熱風と呼んでいる。
あ、ちなみに俺の魔神装にはそんな便利な特性はない。
無だ、無。
状況が状況だからこんな格好しているが、全身タイツみたいなこの格好、出来ればしたくない。
というか、どうして今日がこんなに大きく変化を?
どうして、グレンが……。
そうか、俺とゴードンのせいか。
お互いに前回の今日の記憶がある。
そして、その未来を変えるために戦うことで未来に大きな変換が訪れた。
もうこれは俺らの知ってる今日じゃないって事か。
実力的にも本物の魔皇のグレンが来た時点で、もう一命は取り留めたようなもんだが。
これ以上あの2人に戦われると、この辺一帯がもたない。
もう既に俺らでもかなりやり過ぎた状態だというのに、これ以上は本格的にまずい。
何とか止めなきゃ────ッ!
「何をしていらっしゃるんですか!?」
「うわぁ、これは酷いや。」
「この状態、やったのはグレンとゴードンですか?」
部長、俺を選択肢にまず入れないのは当然だけど複雑な気持ちです。
ほとんどが、俺とゴードンです。
「あぁっ!?俺じゃ────。」
「とりあえず、その話は後で致しましょう!今は魔女を見つけるのが最優先ですわ!」
「魔女……?そりゃあ、おもしれぇ。」
今更「あっ」て、顔をしないでくださいお嬢様。
グレンは魔女との契約により、魔皇になった1人だが、それ以来というもの魔女とやり合いたいとそればっかりだ。
だけど、もう手遅れだ。
グレンを止める事の出来る奴なんて、この場にはいやしない。
グレンの進行方向を土の魔法が塞ぐ。
「他の奴らは良いだろう。だが、貴様だけは行かせられん。あれは私のモノだ。」
「そうかぁ、てめぇ。その魔女と契約する気だな。」
グレンは大きく笑い、ジッとゴードンを見る。
そして、声色が変わる。
「……邪魔すんなよ。」
嗚呼、等々本気でグレンを怒らしたよ。




