第15話 魔女同盟
「今彼女、『空間』の魔女と言った気がするんだけども」
「間違いないですね」
「で、どうするの? ノインの失態よ、ノインでどうにかしなさい」
「自分じゃ何も出来ないから私に押し付けただけだよね! 私にも今は何も出来ないのわかってるくせに!」
「ゴードンくん、君の力を使う方向が今変わったよ」
「言われなくてもわかりました。彼女らを捕獲した方が……」
「うん、よっぽど確実だね」
ゴードンは地面から大きな手を出し、彼女らを握ろうとする。
土属性の魔法なら縄やらの道具にするより手を作り出した方が捕獲術としては確実だ。
だが、不思議なのは彼女らが一切抵抗せずあっさりと捕まったことだ。
捕まえた彼女たちに魔力を無効化する手錠をハメ、その場で少し話し始める。
「抵抗はしないのかい?しないならこちらとしてもかなり助かるんだけどさ」
「する意味ないもの」
「する意味が……ない? それはいったい」
「正確には私は抵抗出来ませんし…」
「とりあえず詳しい話は場所を移そうか…」
×××
「で、えーと君が空間の魔女のノイン…そっちが」
「遊戯の魔女アンナ…はあ。魔皇が2人とか運がないわ。そうじゃなきゃ…ブツブツ」
クリーム色の髪をサイドテールにしている紫色の瞳の少女が空間の魔女を名乗るノイン。
そして、その隣で椅子の上に胡座をかくように座っているセミロングのくせっ毛なオレンジ髪に緑色の瞳をしたのが、遊戯の魔女アンナ。
空間の魔女の魔力は任意の位置に空間の穴を開くもので、移動や防御に使える。
しかし、攻撃力は皆無である。
逆に遊戯の魔女の魔力については詳しい事は聞かされていないが、戦闘には向いていない魔力らしい。
「というか、そもそも私の魔力を使うのなら戦闘員は必要よね。脳みそ腐ってるわ、あの人たち」
彼女は非常に口が悪い。
それよりもさっきから彼女たちは気になる事を口にしている。
「さっきから気になってたんだけど、あの人たちってもしかして君たち以外にもいるのかな?そうだな、例えば魔女が」
「いるわよ、私たちの目的は他の魔女の速やかな発見、そして回収」
「そっ!そこまで教えちゃっていいの!?」
「問題ないわよ。そもそもこうやって捕まったのもあの人たちのせいよ?戦闘員をよこしていればこうはなってないもの」
アンナの方は自分らがあっている不幸の腹いせにある程度の情報は聞けば答える姿勢のようだ。
ノインに関してはどこまで話していいのかがわからず慌てている様子だ。
「聞かれるまでもなく答えられることは教えてあげるわ。私たちは7人の魔女同盟、今この世界に降り立ってるのは私たち含めて4人…いえ、5人ね」
「今の含みのある言い方が気になるけど、まあそこはいいか。でも君たちこんな所で呑気に捕まってていいの?目的があるんだろ?」
「そうねぇ。多分一つは手に負えない感じよ。もう一つは多分彼女1人で足りちゃいそう…私たちは炙り出すくらいしかやることないわね。それにもうこれも終わりよ」
「まったく、捕まっただけでは飽き足らず。我々の情報をペラペラと…」
「お迎えありがと。カリーナさん」
ゴードンとペルディ王子にまったく気付かれずに部屋へと侵入していた全身を黒い装甲で覆った彼女は驚く2人の反応を見てため息を吐き、一言呟く。
「その反応も二度目だ。これだからつまらんのだ、人間は」
そして、ゴードンとペルディ王子は彼女の侵入を忘れた様に、目の前の少女二人の前に立つ彼女に驚く。
「やっぱりズルいよー!その魔力ー!」
「っ!?そんなバカな!魔力を無効化する手錠を付け忘れるなんて!」
「ノイン、行くぞ」
「りょーかいしましたっ!では、皆様またご機会あったら!」
ノインの空間の魔力により現れた空間の穴から3人の姿は消えてしまった。
その一連の流れをボーッと見ている事しか出来なかった2人だった。
×××
「ゴードンくん、君はどう思う?手錠をし忘れる。そんな初歩的なミス、この場に2人も魔皇がいながらありえると思うかい?」
「いえ、突然現れた黒い装甲を身にまとった彼女が何かをした。と考えるのが妥当でしょう。しかし、手錠をした記憶がないのも確か…もしかしたら本当に」
『空間』『遊戯』だけでなく、もう一体現れた謎の魔力の魔女。
魔皇が2人もいながら、それもそのうちの1人は最強と謳われるペルディ王子でありながら為す術もなく捕り逃してしまったことに動揺を隠せずにいた。
そして、それとほぼ同時刻…カルデは────
「洗脳された人達は片付いた…が、どこにもいないな。本体」
新たな魔女に苦戦を強いられていた。
久しぶりの更新になります。
やっと時間が出来たので、ここからは時間のある時にその他の作品と一緒に更新させていきます!