第13話 防御系
彼のあの傲慢な態度は実力もそれに相応しいが、それは魔皇ならみな同じ事。
彼が他と明らかに違うのは、魔神装の特性があまりにも無敵すぎるのだ。
「チート野郎が……っ。」
「異論はないだろ?じゃあ、こいつは連れて行かせてもらうぜ。」
ゴードンの手錠を外し、裁判所から連れ出す。
「あ、い、行くぞ。みんな!」
×××
「ちょっと待ってくれ!」
「ん?あ、君はえーと……タイツ属性の魔皇だっけ?」
「あんた、バカにしてんのか?」
「そんなわけないだろう?」
「そ、そうか。ならよかっ────」
「同じ魔皇という立場でありながら、大人数の見ている前でそんな変態だ、と宣言しているかのような全身タイツ姿。君をバカになんてしない。ただ、軽蔑しているんだよ。」
やめて、俺のガラスのハートが砕け散るから。
本当に勘弁してください。
俺は顔を手で覆い、そこに倒れ込む。
「死にたい……。」
「バカ!何言ってんの!?」
「さ、ささ流石に冗談だよ。」
すいません、結構本気で言ってました、許してくださいフゥさん。
と、そんな事より……
「ゴードンを連れて行く本当の理由はなんだ。利用か?」
「まあ、悪く言えばそんなとこ。3人目の魔女らしきものを見つけたと言ったけど、実際はそれらしき痕跡だけでね。」
「それとゴードンを連れて行く関係性は?」
「極秘だから、その痕跡がなにかだけ教えてあげるよ。」
ゴードンが関係する痕跡……地形が変わったとかそんな感じか。
「街一つが跡形もなく消えたんだよ。突然ね。」
「はあ!?」
予想を遥かに上回るスケールだった。
街が突然と消えるってそんなバカな話があるか、突然って事は転送系?街一つを一瞬で移動させるレベルの?
「問題は消えた事よりも、消えた街やそこのいた人の所在が完全に不明な点だ。つまり、この世界の外に転送されている可能性すらある。」
「最悪の場合……。」
「完全に消滅、の可能性だな。」
冗談キツイな……。
街一つを一瞬で転送、または消滅する魔女だって?
そんなの手に負えるわけないだろう。
俺らも消されて終わり、そんなバカな話が……。
万が一、仮にもそんな事が出来たとして、どれだけの魔力を使っていて、どれだけの負担をしているのか。
数発の使用が出来るんだとすれば間違いなく全滅するだろう、戦うだけ無駄という事だ。
「わかっただろう?彼の使い道が。」
「そりゃあ、理解出来るさ。ただ、ゴードンに何かあったら許さないからな。」
裏切られたとはいえ、大事な仲間だ。
魔皇になった今なら、もうあんな真似もしないだろう。
「俺を誰だかわかってるだろ?……保証するさ、彼の安全くらいは。」
信じきれるわけじゃない、ただ俺らには俺らのやるべき事がある。
2人目の魔女……彼女の正体を突き止める事が。
×××
メイティスに関しては理事長に話をしたら、まるで探してたかのように引き取ってくれた。
これでメイティスの件も解決している。
「今!回!は!私が活躍してみせますわ!前回は何も出来ませんでしたもの。」
「それは嬉しいんだけどな、何かあるのか?彼女の特異属性の目星が……。」
「……まったく。」
さすがお嬢さま、言うことが違いますね。
目星もないのに活躍してみせるとは、俺も驚きを隠せませんよ。
「……もう!ならカルデは何か目星がおありですの!?」
「いや、俺もないんだがな。」
「っ!?普段から変態かのような格好されときながら収穫すらないなんて、なんて無様なんですの!」
なんでみんな、俺の魔神装をそんなに無理矢鱈に傷つけるの?泣くよ?泣いちゃうよ?
確かに変態チックだ。
住宅街を全身タイツみたいな格好で走り抜ける俺の姿……想像するだけで死にたくなる。
神よ……なぜ俺にこんな魔神装を……、あなたに慈悲はないのか!?
しかし、全く見当がつかないわけではない。
彼女の行動からある程度の可能性は導き出せている。
何となくではあるが、この可能性は当たればやっぱり攻略は困難と言える。
一つ目の基準として、彼女は魔法を使ってから1度も動いていないのだ。
その場に立っているだけ、目が見えないから攻撃に無闇に当たらないためなのかもしれないが、不自然な点である。
次に度々発動しているという事実だ。
何か理由があるから、度々発動するのだろう。
単純に彼女は生活するために、特異属性を使っていると考えられる。
目の見えない彼女が、生活するために度々使うというのは外敵から守るため、という可能性が大きい。
つまり防御系の特異属性って確率が高い。
風属性じゃ壊せないようなバリア、とか……。
もしかしたら攻撃力の高い土属性なら割れるんじゃないか?
部室の扉をノックする音が響く。
「失礼しまーす。えーと、高等部1年の海星ですけど、誰かいます?」
「ああ、どうしたの?」
「校門の前に、皆さんに用があるって方が。」