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拘鎖の束縛者  作者: 宵闇崎タケル
第一章 入学編
5/6

迷子、教室へ

「はぁ、やっちまった…」


思わずため息が溢れる。


あれほど本気を出さずに負けようと思ってたのに、ついカーッとなって、格下相手(・・・・)にあんなことしちまった。そのこともショックなのだが、問題はそんなことではなく、もっと別のことである。


二年生の中で上位だった先輩を新入生である俺が倒してしまったことが、一体どれほどの騒ぎになるかわからない。


現に今、

「あの子が雷堂を…」「マジか、あいつが…」ヒソヒソ


噂が広がる速さは異常で、今さっきまでアリーナに居たのにもう校舎に残って居た生徒に伝わっていた。


正直言って滅茶苦茶居心地が悪い。かと言ってアリーナに戻る勇気も無い…こんなヘタレを許せ神よ。


「…教室を探そう。確かB組だったはずだ」


一年生の教室は生徒棟の3階で、現在アリーナを出て教員棟の一階にいるので一旦生徒棟に行かなければならないのだが、


「ヤベェ、学校が広過ぎてわけわかんね」


そう、俺は俗に言う迷子になっていた。適当にうろうろしたのが間違いだったと今更になって思う。とりあえず案内してくれそうな人を探そう。


「誰か親切そうな人いないかなあ?」


キョロキョロと見渡してみるが、周りの生徒は目が合った途端に明後日の方向を向いてサッと離れていってしまう。


噂って凄いな…何?ヤバイ奴だって思われてるの?


「はぁ……」


仕方ない、強行突破だ。と思った瞬間にはもう行動に移している。近くにいた二年生ぽい女子の肩を掴み、逃さないように正面に回り込む。


「ひゃっ⁉︎な、なんでもするから食べないでぇぇ!」


は………?


何、やっぱり恐ろしいとか凶暴とかっていう噂が広まってんの⁉︎何食べるって!主食人間だと思われてんの!スゲェ風評被害なんだけど!!


「ま、まず落ち着け…深呼吸しよう。スー、ハー、スー、ハー…」


「スー、ハー、スー、ハー…」


なんで俺は初対面の女生徒を落ち着かせようとしているのだろうか?一体どこで間違えたのか?


「ふー、落ち着いたか?」


「…うん、大分」


取り敢えずは落ち着いてくれたようだな。


「話を聞いてくれますか?」


「…いいけどその前に、手を離してくれるかな…」


「ん?……あっ、ご、ごめん!」


そうだった。まだ俺の手は彼女の肩をがっしり掴んだ状態のまま離していない。見様によっては押し倒そうとしているようにも見えなくない。


「見て、襲われてるわ!やっぱりケダモノよ!!!」


「凶暴な奴だ、何をされるかわからないぞ!」


「いや、何もしねーよ⁉︎どんな勘違いだ!!」


ああ…俺のイメージがどんどん悪い方向に…、とりあえず…手離そう……ハァ…。


「話進めていいっすか…?」


「あ、うん」


「一年の教室ってどう行けばいいんだろうか?」


そう聞くと納得したような顔をして二年生(?)の女子は頷いた。


「あーそうだよね、新入生は迷っちゃうよね。先生も迷うぐらい広いからね」


まじか、やっぱり一人で歩くのには無理があるみたいだった。


「昔は神城ヶ原しか異能科が無かったからこんなに広いんだけど、今は他に六校できたからガラガラになっちゃったんだ」


「無駄に広い理由はそれか。道理で教室ばかりあるとおもった」


「ちなみに階毎に教室が二十クラスあるよ」


「多過ぎ…廊下が長い気がしたけどそれなら納得できる」


確かこの学校生徒棟は四階まであるんだよな、どんだけだよ。


「まあ覚えればいいだけだからね、慣れればどうってことないよ。ほぼ空き教室だしね」


「はあ、そうか。ところでまだ名前も知らないから教えて貰えないかな?俺は橘神樂。そっちは?」


「ああ、そういえば自己紹介がまだだったね。私は二年生の春川巴(はるかわともえ)。付け加えると一応学年十位だよ、よろしく橘君」


「よろしく、って学年十位!」


驚いたな、少なくともさっきの俺の相手よりは強いのかな?俺のリアクションを見て春川先輩はドヤ顔して不敵に笑った。


「ふっふっふっ、言っちゃ悪いけどあなたがさっき相手した雷堂君とは正直言って話にならないからね。私にも勝てる、なんて思わない方が身のためよ」


正直言ってどうでもいい…


「それよりも早く教室まで案内しやがれ下さい」


「…そうだよね〜、じゃ付いてきてね」


若干しょんぼりしてるけどまあいいや。話興味ないし。


「確か一年の教室は三階だったよね、くれぐれも四階に行っちゃダメだよ」


先輩は階段を上りながらそう言って話を振ってきた。


「へぇ、なんでですか?」


「死ぬから」


「………!」


そう口にした瞬間ゾワリと悪寒が走り、全身の毛が逆立った。さっきまでの軽い調子とは違い、かなり本気で話しているのがわかった。


「…死ぬ、とは?」


「そのままの意味。迷った生徒は命からがら逃げてきたり、翌日に死体で見つかったりするわ。…体が一部齧られた様に無くなって」


「……何故、そんな事に」


「今から二十年前、ある封印型(レストレインタイプ)の異能者が今の生徒棟の四階にある教室に魔獣(ビースト)を強力に封印したの。その魔獣があまりにも強過ぎて倒せなかったから。教師が監視できるという理由であまり使って無かった四階に封印されたけど、その十年後、その異能者が戦いで死んで徐々に封印が脆くなっていたの」


そんな魔獣(ビースト)がこの学校に…。大変な事を聞いてしまった様だ。まぁ本来であればアリーナで教師に説明されるのを聞いていた方がいいのだろうが、出てきてしまったのだからしょうがない。


「それで今から五年前、一人の生徒が行方不明になって校舎中を探し回ったんだけど見つからなくて、次の日、四階まで探したら見つかったんだけど…体が半分無くなっていてもう死んでたんだって。それから四階は立ち入り禁止になったけど、腕試しに行った三年生や何も知らない一年生なんかが何人もいて…、結局今までに十八人が犠牲になってるの」


「なるほど、じゃあくれぐれも近づかないように努力はします」


「ふふっ。わかればよろしい…っと、着いたね」


話している間に三階の俺の教室まで着いたようだ。


「じゃ、またわからないことがあったらなんでも聞いてね。できる限り答えるから」


「案内ご苦労様です、また会えれば会いましょう」


俺は先輩を見送って、自分の教室に入って行った。

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