悲報、ワイ絡まれる
「食らえ上級生!突槍!」
「突き方が甘いな!お返しだ、焔槍!」
早速模擬戦が始まった。みんな自身に宿った異能で槍を作り出して突きを繰り出して見たり、生み出した焔を操って作った槍で攻撃したりと様々なことをやっている。
一方、俺はというと、
(正直なところあまり手の内を見せたくないんだけどなあ…めんどくさいし)
異能を発動させることを躊躇していた。
「おい、そこの新入生!何やってんだ?もしかしてビビってんのか⁉︎」
アリーナの端っこの方でジッと戦闘を見ていたら、髪を金色に染めたいかにもヤンキーっぽい先輩に絡まれた。あらぬ方向に勘違いされたけど、まあこの際何でもいいや…利用させて貰おう。
「いやー、そうなんですよ。俺まだ上手く使いこなせないので、みんなの戦闘を見て参考にしようかなって思いまして」
いかにも弱そうな雰囲気を出し、下手に出るように苦笑いする。我ながら完璧な演技だと思う。さて、後は相手が退いてくれるかだが、
「ほう、なるほどな。だがな…」
苛立ちを帯びた敵意が俺の方に向けられた。
「あの理事長に散々待たされて苛ついてんだよぉ…だからよぉ、おまえ、サンドバッグになってもらうわ」
すんごい個人的な理由でボコしにくんなよ!つかほんとに迷惑だな理事長ぉぉぉ!!あんたの所為でとばっちり食らってんだけど!もういいや…逃げよう。
「そ、それはご苦労様です…それじゃあさよなr」
「おい待て、なんでこの流れで逃げられると思ってんの?」
「ダメですかね…」
「ダメに決まってんだろ、殴るぞおまえ」
いや、元から殴る気満々だったじゃねーか!!
「痛いかもしれんが許せ、これが運命と言う奴だ」
「そんな運命認めねー!!」
俺の叫びも虚しく、先輩は構えを取り異能を発動させた。
「『雷電の拳』!」
バチィ、と何かが弾けるような音と激しい閃光が辺りを包み、先輩の両腕には黄色と白を基調とした籠手が装着されていた。電気のようなオーラが奔り、金色に輝いている。
「ほら、おまえも出せよ。それくらいは出来るだろう?」
はあ、やるしかないか…仕方ない。
「…『鎖』」
右手にオーラを集中させて2メートルぐらいの鎖を実体化させる。力の一端に過ぎないが、今はこの鎖で充分だろう。
「ほう、お前も具現型か。まあ俺の足元にも及ばないな、その貧弱そうな鎖で攻撃にどこまで耐えられるか試してやるぜ」
先輩が言っているように俺たちに宿っている異能には型と言う物が存在する。
先輩のように自分の魂の形を武器として具現化させる具現。
炎風光のように自然界に存在する現象を起こしたり、操ったり出来るのが属性。
身体の一部を違う生物や無機物へと変化させる変身。
世界の法則そのものを一時的に書き換えたり、それとは全く逆の事象を引き起こすことが出来るようになる事象。
そして自らの身体や身近な物などに魔獣や武器などを封印することが出来る封印。
合計で五つが確認されている。
まあ見ただけじゃわかんないか、ぶっちゃけ見た目はどこにでもありそうなただの鎖だしね。
「はぁ、じゃあ始めましょうか。お手柔らかにお願いしますね」
正直、学生同士の対人戦なんて朝飯前なのだが、流石に新入生が上級生より強いのは可笑しいので適当に手を抜いておこう。
「すまんな、さっきも言ったが手加減なんてしないからな!恨み言なら理事長に言えよ…それじゃ行くぜっ雷纏!!」
そう叫ぶと、籠手から発生した電気が先輩の身体を這い、包み込み始めた。
大方、雷を纏って身体強化してるんだろう。更に普通に身体に触れるだけでも感電するとかその辺りかなと思う。
「精々逃げてくれよな、なんせ帯電している上に身体のスピードやパワーも上がってるんだからなぁ!!」
うわ、ドンピシャだよどうしよ…まあ戦えばいいか。
そう思い、俺は腰を落とし、右手に持った鎖を頭の上でビュンビュンと回転させ始めたのだった。
ごめんなさい!!投稿がまたいつになるかわかりません!!どうかそれまで待っていてください。