入学式ってなんだっけ…
入学式、誰しもが必ず経験したことのある行事の筈だ。席に座り、隣の人とそれとなく仲良くなったり、怠い校長や理事長の話を聞かされたり、まあすぐに終わるものがほとんどである。
だが、今目の前で行われている式は入学式って何?とかそう言うレベルの訳がわからないものだった。
「ほら、かかって来い新入生!!」
「行きます!覚悟して下さい!」
…ハイ、絶賛戦闘中です。なんか色々と飛び交ってます。
「…めんどくせえ、なんでこんなことに…」
新入生である俺、橘神樂は頭を抱えて少し前のことを思い出していた。
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国立神城ヶ原高等学校異能学科
この学校に入学した俺は、いやさせられたと言うべきか…小学校6年の時にこの力(国は異能と言っているらしい)を発現させた。
中学時代は何とか隠し通して来れたが、やはり限度というものがあり中3の冬に国の役人に気づかれてしまい半分強制的に連れて来られた。
だが、結果的には良かったと思う。
高校に進学してから何かの拍子に異能を使ってしまったら冗談では済まされなくなってしまう。それに世間では異能力者のことを尊敬や感謝はしているだろうが、一方で化物だと忌み嫌われたり恐れられたりしている。
「まあ、考えてもしょうがないか…」
まずは入学式を終わらせてかな。
そう思い、校門をくぐり入学式会場である体育館へと足を進めた。
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「新入生諸君、私はこの学校で理事長をやらせてもらっている羽山だ。まずは入学おめでとう。まあ早速だが君達の力がどれほどの物か、試させてもらう」
入学式が始まり滞りなく式が進められ、式の終盤となる理事長からの話に入りみんなだらけた雰囲気になりかけていたが羽山理事長が発した言葉で混乱した。
「何だって?」「私こんなの聞いてないよ」「試させてもらうって何を?」ザワザワザワ
騒ぎ始めた生徒を見て、羽山理事長は言葉を続けた。
「なに、そんなに大変なことはさせないし、第一君達の入学が取り消しになんてならないから安心したまえ」
羽山理事長の言葉を聞いて大体の生徒がざわつくのをやめた。
「静かになったところで、ちょっと場所を変えようか。それじゃあ、転移」
眩しい。強烈な光に包まれ、思わず目を瞑る。光が収まり目を開けるとコロッセオのような場所の真ん中にみんな固まっていた。そして、その周りを囲むように上級生と思われし生徒がぐるりと円となっていた。
「あー…上級生のみんなごめんね。ちょっと待たせちゃったかな」
羽山理事長が言うと一人の生徒が文句を言いだした。
「ちょっとどころじゃないですよ!小一時間ぐらい待ってましたよ!ずっと!!」
「ごめんごめん、集める時間ミスっちゃった!許してね〜」テヘペロ
「「「「「テヘペロじゃねーよ!!!鬼畜理事長っ!!!」」」」」
とても綺麗に上級生がハモり、それでかなり待っていたことが伺えた。
「アー、リジチョウセンセイソンナニオコラレタラナイチャウナア。ダレカナグサメテクレナイカナア」
片言&棒読みでそんな台詞言われたって同情出来ないしとてもウザイ。
「「「「「ウゼェ……………」」」」」
新入生一同としてもウザかったので、ハモらせていただきました。登校初日で凄い一体感…嗚呼、こいつらとは上手くやっていけそうだ。
「チッ、今年の新入生はキツいなぁ。そんなカリカリして君達カルシウム不足かい?」
「「「「「あんたのせいだバカ理事長!!」」」」」
今度は全校でハモった。この学校大丈夫か?特に理事長…
「さすがに傷つくなぁ…まあいいや、さっさと終わらせちゃお。じゃ、上級生相手してあげて」
羽山理事長が軽く言うと上級生が構えを取りだした。
「あぁ、言い忘れたけどこれから乱戦形式で上級生と模擬戦してもらうから。上級生は手加減してあげてね〜」
そう言うと、羽山理事長はどこかに転移してしまった。適当過ぎる、それでよく理事長が務まるなぁ…
「待ちくたびれたから手加減出来んかもしれないけど許せ…全ては理事長が悪いんだ」
上級生はどうやら相当ムカついているらしく、青筋を浮かべて顔だけニコニコしている。
「「「「「おのれぇぇ!理事長ぉぉぉ!!」」」」」
俺たちは魂の叫びをあげた。完全にとばっちりじゃねーか!フザケンナ!!!
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こうして理事長への怒りを込めて、模擬戦は開始された。
理事長ウゼェ