始まり
「…ああ、寒い」
ある雪山で、一人の少年が吹雪の中を歩いていた。周りには他に人影は見えず、何よりその少年の服はボロボロで、とてもこの寒さを凌げるとは思えない格好をしていた。靴も履いておらず、追剥にでもあったかのようなとてもひどい格好だった。
「…も、う…ダメ、だ……」ドサッ
そのような恰好でこの刺すような寒さに耐え切れる筈もなく、とうとう力尽き、積もった雪の中に頭から倒れ込んだ。
「…だれ、か…た、す、け……」
周囲に人の気配はなく、助けを求める声など届くはずは無かった。少年の声は吹雪の音に掻き消され、誰にも届かない…筈だった。
「こんなところに人間とはな…汝、生きておるか?」
先ほどまでは誰もいなかった筈だが、突然、最初からそこにいたかのように、一人の女性が少年の傍に佇んでいた。女性の恰好は少年程とはいかないが、かなりの薄着で肌も露出しており、このような雪山に来るような恰好ではないのだが、女性は特に寒がる様子も見せずに、少年を見つめていた。
「………ッッッヵハ…、ハァ…」
「ほう?まだ息があったか。すさまじい生命力よのう……成程、面白いモノを身に宿しているな。気に入ったぞ」
女性は少年の傍らにしゃがみ込むと、その耳元に顔を近づけ、囁きかける。息も出たはずだが、その息は、白くなっていなかった。
「汝に我の力を与えてやろう。まぁ、精々死なぬようにな」
そう言うが早いか、女性は溶けるように消えた。
あまり早く投稿出来ないのでお許しを。