ランスロット・アルスタイン
アラムス王国と魔族の戦闘開始より数時間が経過した。
戦闘開始直後こそ両者拮抗していたが、次第に物量に勝る魔族側に戦局は傾きつつあった。
アラムス王国側の最大戦力である3人の英雄は
魔王4体の動きを見つつの行動となるため戦闘範囲が狭まり本来の戦いができずにいた。
しかし、流石は大国アラムスとでもいおうか
6年の魔族に対する訓練の成果が遺憾なく発揮されていた。
特に転移魔法より逃れた唯一の奇跡の世代である
ランスロットの活躍は凄まじく、まさに一騎当千の勢いであった。
それでも魔族と人族の根本的な力関係が覆ることはなく次第に押され始めていた。
ハイネの魔法も敵味方入り交じる状況ではむやみに使えずにいた。
「ランスロット、このままではまずいぞっ!」
「ですねライン様!しかしこの状況ではハイネ様の魔法を頼るしか…」
「私も高威力魔法での殲滅をしたいが、味方も巻き込んでしまう…」
「ええい、なにか手はないのか!」
「父さん、こんな時こそ冷静にものを見極めましょう!」
「わかっておるが、活路を見いださねば…」
アラムス王国は一度傾き始めた戦局を立て直せないまま魔族の猛攻に防戦一方になり、防衛線も次第に後退していた。
しかしこの後退が兵士と魔族の境を作り、ハイネの広範囲魔法が使える状況となった。
「いまだっ!」
ハイネの繰り出した魔法が魔族を包む
「なにっ!?」
しかし、ハイネの魔法は魔族に届かなかった
いや、魔王の魔法によって打ち消されたのだ。
「ハイネの一撃が防がれただと…」
「本格的にマズイですね…」
「もはやここまでか…」
「せめて最後にもう一度ユーリに会いたかったな」
カイルもラインも心が折れかけていた
アラムス最近の2大騎士の二人がだ。
最強ではあるが彼らはあくまで"騎士"なのだ
一騎討ちないしは少数相手に戦うのが騎士だ
数千の魔族相手では最強といえどできることは
限られてしまう。
対多数相手を得意とするハイネの魔法が防がれた
これはアラムスにとってもはや敗北を意味するに近い事実であったのだ。
魔族に敗北した先に待つのは根絶やしだ…
アラムス兵から気力が失われかけている
「私たちはまだ生きているではないですか!」
ランスロットが叫ぶ
「生きているならば死ぬまで戦えば良い、どうせ死ぬのなら戦って後悔しない死を選びましょう」
ランスロット・アルスタイン
彼はアルスタイン分家の生まれだ
本家の人間を立て、本家の為ならば死すら恐れない。
今でこそアラムス屈指の実力を持つが彼は幼少より平凡であった。
何をやらせても並だったのだ。
しかし彼はアルスタインの名前に泥をつけまいと
努力を重ねて平凡な才能ながらもそれなりにできるように周囲に魅せていた。
平凡な才能しか持たないランスロットはユリウスに憧れていた。
アルスタイン本家に生まれ何をやらせても天才的な才能をいかんなく発揮してきたユリウスを。
しかしある日見てしまったのだ。
自分がどれだけ努力しても及ばない天才である
ユリウスが血の滲むような努力をしているのを
ランスロットにはその姿が衝撃だった。
いや、さらに憧れを抱かせたのだ。
平凡だろうが天才であろうが関係ない
スタート地点は確かに違うかもしれないが
その後の努力によってどちらもゴール地点が変わる。
目の前にユリウスという目標があるのならば
そこを目指し進むだけだと。
ユリウスが更に高みを目指すのなら自分もそれを追えば良いのだと。
6年前の転移魔法の際に離れ離れになっても
ランスロットは高みを目指し続けた。
ユリウスが生きていれば同じことをすると思ったからだ。
気がつけばアラムスでも最強の騎士二人に次ぐ
力を得るに至った。
そんな彼の言葉がアラムス最強の騎士二人の
折れかけていた心を立て直した
覚悟を決めたアラムス全軍が最後の突撃を仕掛けようとした瞬間、天が神々しく光り大半の魔族を包み刹那に消滅させた。




