敗者の街
転移したから3日目に俺たちは街に着いた。
"敗者の街"
街の入口の門にはそう記されていた。
これが街の名前だろうか?
にしても、門に対して名前の部分だけやけに
汚れていない、いや、その部分だけ新しい気がする。
「敗者の街ってなんか不吉な名前だなぁー」
フミさん、そういうことは思っても口に出さないものだよ。口は災いの元だからね!
まぁ、俺は魔神復活とかいう天災を引き起こしたけどね…
「この街の名はそんな名じゃねぇ!」
年の頃40歳程度の男がフミの発言に怒りを示す
「これは、友人が失礼な発言をしました。
我々はこの土地に疎い為、悪気はありません。
気分を害してしまったようで、失礼しました。」
さずが、王族だ!
状況への対応力が凄い!
「なんだ、お前ら観光客か?」
「そんなところです。アラムス王国から来ましたが、片道の路銀しかもって来なかった為、修行がてら自力で帰らねばなりません。」
ゼクスは嘘はついていない。
転移魔法は片道チケットいわば路銀だし
俺たちだけで大陸を横断すれば修行にもなる。
言い回しが上手いな!
「なんで子供だけでガリアになんか来たんだ…
ここがどういう国かいや、大陸かは知っているだろうに…」
「ええ、実力主義の国とは聞いております。
力なき者には権利すら与えられないと。」
「その通りだ…負けたら最後、死んだも同然だ」
男がうつ向いて言う。恐らく彼も敗者なのだろう
「この街は5年前までは敗者の街なんて名前じゃなかったんだ。」
男が説明を始めた。
要約すると内容はこうだ。
この街の本当の名前はリズベットの街
5年前までは国柄に反して平等主義の街だったが
帝王が代わり、逆賊扱いされ、帝国軍に侵略されたそうだ。
自分の国を侵略するなんて馬鹿げている…
その後は敗者の街という名前に変えられ、
俗にいう力なき者の収容所になっているのだそうだ。
しかし、日々の暮らしは以前と変わらない。
だが、彼らには何かを主張する権利もない。
帝国の行うことに意見すら述べてはいけない。
ガリア帝国、大陸全土が帝王の独裁国家なんだ
もっとも力のある者に全ての者が従う。
まるで魔族のようだな。
「この国がいかにおかしいかわかったら
お前さんたちも早くアラムスに帰りな。」
もちろんだ。
「我々を心配して頂きありがとうございます。
この街に私たちでも宿泊できる宿はありますか?」
「金がないんじゃないのか?」
「貨幣はありませんが、装飾品を売って凌ごうと考えております。」
そう言ってゼクスは自分の持っている貴重品を
男に見せる。
「こんな上等な物をガリアで売ってもいいように巻き上げられて終いだ、お前らさえ良ければ俺の家に泊まっていけ」
会ったばかりのこの男を信用して良いのだろうか
皆が警戒している。
男は察したのか「警戒しなくて大丈夫だ。家には妻も子供もいる。俺はただ、自分の子供と同い年くらいのお前たちをほかっとけないだけだよ。
そんなだから敗者と言われるんだけどな…」
ガリア大陸は俺たちの思っている程に血に飢えた場所じゃないのかもしれない。
権力という力にとりつかれた一部の人間が
自らの保身のために、力なき者から選択権を
取り上げ地位を守っている。
そんな風に感じた。後にゼクス、ミリアルドも
同意見だと言っていた。
そうなれば、俺たちの選択は決まっている。
「是非、泊めて下さい。」
ゼクスが代表して答える。
こうして俺たちはリズベットでの寝床を確保した。
この行為がガリア帝国にとって大きな変化の
きっかけになるとは知らずに…




