迫る戦火
アラムス王国と魔人軍の戦いは激戦であった。
実際には魔人側が有利な状況である。
アラムスの兵士は皆、優秀だが、全員が魔人と対峙できるだけの力を持っている訳ではない。
魔人一体に対してアラムス兵3~4人が丁度釣り合うくらいであろうか。
現在、前線で戦うアラムス兵団は総数7千人程度であるが、これらすべてが戦闘員ではない。
治癒術士や連絡員、補給部隊を含めた数である。
これに対して魔人側は3千体程度である。
数の利はアラムスにあるように思えるが、魔人一体に割く兵力を考えれば、実際には魔人側に利がある。
しかし、アラムスには一騎当千の戦力がある。
カイル・アルスタイン
ハイネ・ラインハルト
ライン・アルスタイン
彼らによって戦線は拮抗状態を保たれている。
王都には最低限の兵力しか残されていない。
前線が突破されれば王都は陥落するだろう。
そんな不安が兵士たちに徐々に焦りを生み出す
拮抗状態ではある戦線が徐々に、本当に少しずつ押し下げられていた。
~王都正門~
この場所には現在、残された兵力が集結している。
前線が突破された場合に敵を足止めし、国民の避難の時間を稼ぐためだ。
そんな場所に彼れらも居た。
"奇跡の世代"が
「皆、聞いてくれ、ここには現在の王都の全戦力が集まっている。」
国王ジークハルトが兵士たちに語りかける
「考えたくないが、前線が突破されれば君たちだけで魔人の相手をしなければならない。」
ジークハルトの口どりは重かった
「気づいている者もいるだろうが、この場においての最高戦力はアラムス学園Sクラス奇跡の世代の6人だ。兵士としての誇りは捨てて彼らを中心に連携をとり戦ってほしい。」
そう、この場に置ける最高戦力は間違いなく奇跡の世代の6人だ。
国王ジークハルトは兵士達に気遣い言葉を掛けたがそれは杞憂だった。
アラムス兵団は模擬戦において何度も奇跡の世代の実力を実際に確認している。
認めざるを得ない実力をもっているのは分かっている。この状況でそれが学生だからといって気にする者はいなかった。
ジークハルトの言葉は終わりではなかった。
「そして、ユリウス・アルスタインは光魔法の使い手である。もしもの時は、彼を守れ!私や王子であるゼクスより先にだ!」
ユリウスは勇者アラムス以来二人目の光魔法の使い手だ。
ジークハルトは先を観ていた。
魔人の動きは明らかに何かに統率されており、今後、ユリウスの光魔法は必ず人属を救うために必要になると。
兵士たちもその事には薄々気づいていた。
ユリウスを守ることが自分の家族を守ること繋がると。
そんな時、連絡が入る
「前線が一部、突破されました!」
最悪の事態が訪れてしまった、だが、救いもある
前線が全滅したのではないからだ。
戦力の薄い場所を魔人たちが集中突破したのだ
突破した魔人は約600体。
正門前の戦力も600人といったところだ。
しばらく持ちこたえられれば前線からの援軍が来る。
まだ希望はある。
各自戦闘体勢に入る。
朝日が昇ろうかという時間だ。
「いよいよだね!」フミは何時でもこい、といった感じだ。
「クロスロード、模擬戦じゃないんだ気を抜くなよ、死ぬぞ」いつもはフミに対して喧嘩腰のミリアルドも冷静にフミに言葉を掛ける。
ミリアルドの本来の姿だ。
「わかってる。」フミも真面目に答える。
すでに二人とも武人の顔だ。
「ユーリ、父上の言葉の意味はわかるな?」
ゼクスに問われる
「あぁ、わかってはいるよ。でも皆で乗り切ろう、俺たちは奇跡の世代だぜ?この戦闘でも奇跡を起こそう!」
俺はそう言った。皆で乗り切って家族のもとに帰るんだ…
ランスロットは我らの力をみせてやりましょう!といったリアクションだ。
「はぁ、まったくお前は、そうだな私達は奇跡の世代だ。この名に恥じぬ活躍を見せてやろう!」
皆、不安だろう。しかし、それよりも守るべき存在の為に闘うのだ。
不安に押し潰されはしない。
「ゆ、ユーリ君!」珍しくルナが叫んだ。
「ど、どうしたんだルナ?」おとなしい子の大声はびびるのだ。
「好きです」
ルナからの言葉の意味を処理するのに少しの時間が掛かった。
俺はいま告白されたのだ。
この状況に思考が追い付いた瞬間、俺は
「ありがとう、ルナ、俺も好きだよ」
考えるより先に答えていた。
「ユーリ君が危ない時は、私が守ります。
私はルナ騎士ですからね!」
俺の返事に嬉し涙を流しながら冗談を言うルナを照らす朝日。
朝日に包まれたルナは神々しく見えた。




