番外編 「迫る闇」
番外編です。
はい、番外編です。
まだ話数も少ないのに気が早いと思いますが、許してください。
今回は敵サイドのお話となります。
ここは五種族が住む大陸から遠く離れた孤島。
その孤島の中央に寺院のような小さな建造物が建っている。
もう何年もの間使われていないような風貌だ。
孤島にはその建造物以外に目立った物は無い。
人々から忘れられ、荒廃してしまったこの島にある一つの影があった。
「.........」
その影は何も言わずに、ひっそりと闇に溶け込むように建物の中へと入っていく。
地下へと長く伸びる螺旋階段を下っていくと、うっすらと蝋燭が灯っている不気味な空間へと出た。
廃れてしまった教会のような見た目の部屋をゆったりとその影は進んでいく。
すると、そこには一つの棺桶のような形をした箱が置いてあった。
影はその箱に近づいて、箱を開けた。
「......!!」
影が箱を開けた瞬間に、圧迫感のようなものが部屋中に解き放たれた。
思わず目眩がしてしまいそうなくらいの気迫が箱の中から漂う。
影は倒れそうになりながらもしっかりと意識を保ち、箱の中を覗いた。
そこには若い、少年のような眠る人の姿があった。
影はそっと手を伸ばし、その人物に触れる。
「......様」
微かな声を出して、その人物の名を呼ぶ。
「魔王様」
「......何だ」
眠っていたであろう彼は影の隣に立っていた。
僅かな時間の出来事に影は少し戸惑った。
「大陸にある例の物のバランスが不安定になっております。もしかすると近年中には大陸を侵略出来るかもしれません」
「ほう。それは朗報だ」
「はい。現在、魔王様の力は眠りによって少し抑えられております。来たるときまで力を蓄えておいた方がよろしいかと」
「いいだろう。ふふふ、久しぶりの目覚めだ、少し楽しむとするか。」
「地上へ行かれるのですか」
「ああ、少し己の力を確かめてこようと思ってな」
「分かりました。お供しましょう」
魔王が動き出した。
そう影が認識した瞬間にはもうそこには誰も居なかった。
急いで螺旋階段を駆け上り、建物から出ると、そこにはあの魔王が居た。
「遅いぞ」
「申し訳ございません。私は魔王様のように早く走れませんので」
早いというレベルでは無い。
一瞬であの螺旋階段を上ってきたのだ。
相変わらず規格外なお方だ、そう影は思った。
「よし、少し体を動かそうか」
そう言い、魔王が足を振りかざした。
その瞬間、魔王の前の地面が勢いよく削られ、更地となった。
目の前の出来事に目を見張る。
「ふむ。やはり力が抑えられているせいか弱いな」
これで弱いのだ。全開の状態でやれば島ごと吹き飛んでいたかもしれない。
敵には絶対に回したくないタイプだと確信する。
「十分なお力だと思いますが......」
「この程度の力では選ばれし者には勝てないだろうな。数万年の歴史の中でいつでも私の予想を上回ってきたからな」
「存じ上げてございます。奴等は厄介な相手です。しかし、魔王様が万全な状態で戦えばひとたまりも無いでしょう。その時に備えて、魔王軍を揃えておきましょう」
「すまないな。お前にばっかり仕事を任せてしまって」
「いえいえ、滅相もございません」
「私はまたしばらく眠りに入ろう。準備は頼んだぞ、×××」
「承知いたしました、魔王様」
時を同じくして、ある一人の人間がこの世界へ連れてこられた。
闇が躍動を開始したのと同時に。
さて、魔王様登場です。つよい(確信。
これからもちょくちょく番外編は出すと思うのでよろしくお願いします。
次回の投稿は火曜か水曜予定です。




