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異世界機巧都市  作者: switch
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一章 第三話 「自分の武器」

さて、第三話です。

早くもここに書くネタが思いつきませぬ。

 俺が指差したこれは片手剣だった。

 ミソンが自分の作成したであろう武器を見て言う。


「そいつでいいのか? 武器は共に戦う相棒のようなもんだ。選択肢を間違えれば死に至ることもある」


「ああ、構わないさ」


 俺は大体のゲームでは剣系統の武器を使っていた。

 現実では振ったことは無いが、ゲームの中では何回振ったか。


「一応そいつはサンプルなんでな、こっちの階段を下りると練習場がある。そこでその剣を振って大きさとか細かいとこを調節するんだ」


「よし、分かった」


 俺は剣を持ち、ミソンの背中を追った。

 しばらく階段を下りていると部屋の明かりのようなぼんやりとした光が見えてきた。

 そこは、いかにも修練場と言った感じの部屋だった。


「あの藁人形に向かって好きなように剣を振ってみてくれ」


 手作り感満載の藁人形はボロボロで、雑に縫われたまま——かかしのように——そこに突っ立っていた。


「え、あいつ?」


「おう、あいつだ」


 何かすぐぶっ壊れそうだけど大丈夫なのか?

 そう思い躊躇していると、顔から考えを悟ったのかミソンが言った。


「心配いらないぞ。あいつは相当頑丈に出来てるからな。一流の冒険者ぐらいしか壊せない」


「それなら安心だけどよ...あれはお前が縫ったのか?」


 ずっと疑問に思っていたことを口に出す。


「そうだが、何か?」


「い、いや。何でもない」


 似合わねぇ、そう思ったのは内緒にしておこう。


「さて、いっちょやりますか」


 肩を回し、手首を揺らす。

 準備運動も終わっていよいよ藁人形と対峙した。


「これって自由に振っていいんだよな?」


「ああ、お前の思うように振って自己流の剣技を見せてくれ」


「了解!!」


 気合いもバッチリな俺は剣を構えた。

 まるでゲームのときのようにジリジリと間合いを狭めていく。


「たああぁっ!!」


 叫び、剣を下ろす。

 藁人形の頭部に当たり、がんっ、と鈍い音が鳴る。


「せいっ!! はああぁっ!!」


 昔やっていたゲームの技を思い出しながら自由に剣を振っていく。

 その度に鈍い音が部屋に響き渡る。


「これで......終わりだ!!」


 決め台詞のようなことを言いながら俺は最後に藁人形を斬り上げた。

 ずざざざっ、と表面を引き摺る音が俺の耳に届いた。

 俺が一通りの剣技を終えた後にはぴくりとも動いていない藁人形が根強く立っていた。


「こ、こいつ頑丈すぎだろ......」


「だから言っただろ? 一流でもなければ壊せないとな」


 ハッハッハ、と大きな笑い声と共にミソンはそう言った。


「それにしてもお前の剣技だが......」


「うっ......やっぱり駄目かな......」


 あんまり運動していなかったからな、思うように体が動かなかった。


「いや、そういうことを言っているんじゃなくてな......」


 ゆったりとだが確かに頷いて、彼は言った。


「剣の扱いはそこまで悪くない。少し無駄な動きあるが、それを無くせば良い腕だと俺は思うぞ。ただ、変わった剣技だなと思ってな」


「な、何だそんなことか......」


「そもそも剣技とは、剣から剣へと振りを繋げていくことで連続的に敵を攻撃でき、大ダメージを与えられるというものだ」


 ゲームでいうコンボ、だな。


「大体の人は、有名な人物の剣技を真似したり、幼少期の頃から誰かに習ったりするもんだが......」


「だが?」


「お前の剣技は今まで見たこともない剣技だった。しかし、どの剣技よりも美しかった。剣技の美しさは、強さに比例すると言われている。お前がそれを使いこなせれば強くなれると思うぞ」


 ミソンは神妙な顔をしながら喋り続けていた。

 少し褒められたのがこそばゆいな。


「やっぱりそれは自己流なんだよな?」


「うーん。まあ自己流かなぁ」


 そういうことにしといた方が良いだろう。

 説明するのはかなりの骨を折る作業だ。


「よし!! 決めたぞ!!」


「な、なんだ!?」


 いきなり大声を出すのでびっくりして仰け反る。


「今回の武器作成の代金は......」


「ゴクリ.....」


 思わず息を飲む。高くありませんように。


「要らねぇ」


「うわー、マジかぁ......ってええぇぇぇぇ!?」


「だが、その代わり条件がある」


「じょ、条件?」


「今後もうちをひいきにしてくれることと、武器は手入れを毎日怠らなければなかなか壊れはしないだろうから、大事に扱うことだな」


「そ、それだけでいいのか?」


「何だ? もっと条件を付けたいのか?」


「い、いや。いいです」


 これは思わぬラッキーイベントだな。

 

「ありがとな、ミソン」


「良いってことよ!! 今から急ピッチで作ってくるから上で待ってな!!」


「ああ、分かった」


 急いで階段を上るミソンの後を追って再び入り口に戻ってきた。


「じゃあ待っててな。危険だからこの部屋には入ってくんなよ?」


「分かってるよ」


 俺は苦笑いしながらそう言った。



————数時間後————



「いよーっし!! 出来たぞー!!」


 豪快な登場を果たしたミソンの手の上には、鞘に収められた片手剣が乗っかっていた。


「おお、これが.....」


「そいつは固有名 [フラッシュフェンリル] だ。閃光のごとく駆け回る狼の意味だ。お前のパートナーとして役に立つだろう」


「ありがとう。心からお礼を言うよ」


「しっかりとヴィネルの名前も彫っておいたからな」


「あ、本当だ」


 持ち手のところに、四代目ヴィネルと書いてある。

 結構代々続いているんだな。


「これから冒険者登録に行くんだろ? ここを出てから左に曲がってまっすぐ進むと、大きな建物がある。そこで出来るさ」


「親切にどうも......じゃあ、またなミソン!!」


「おう、またごひいきにな!!」


 そんな他愛もない会話をして、俺は店を飛び出した。

 急がなきゃ日が落ちちゃうからね!!


『......あなた、私のことすっかり忘れてたわよね』


「あっ」

いよいよ自分の武器をゲットです!!

さて、次回は冒険者登録を済ませるはずが......?


次回更新は火曜日か水曜日を予定しております。


妖精ちゃん......ごめんね。

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