一章 第十話 「魔法」
久しぶりの更新です。
間が空いてしまい、申し訳ありません。
字数もあまり多くはないですが、楽しんでいただければ幸いです。
「そういえば......フィリアは?」
クエスト完了待ちの俺はふと思った。
すっかり存在を忘れていた。
ポケットの中などを漁ると、一枚の紙が出てきた。
そこには。
『私の役目は果たした。だから故郷に帰る。もしまた会うことがあったら、そのときは戦力として仲間に加えてもらえると嬉しいわね』
丁寧な字でそう書かれていた。
「いつの間に......」
少し寂しいような感じがした。
うるさかったけどいいやつだったんだけどな。
しみじみとする俺だった。
「ふーむ」
クエストを終えた後、無事に宿に帰り部屋を二つ取れた。
そのお陰でベッドに広々と寝転がっている俺な訳だが。
今日の驚くべき威力である魔法について少し考えていた。
「確信出来るのは人並みじゃないってことだな」
あんな威力は普通は出ないだろう。
よっぽど魔法の才能があるか、努力をしたかだ。
「言ってもあの年でなぁ......」
努力といっても何十年かはきっとかかるだろう。
ミリアは才能を持って生まれてきた。それも恐ろしいほどの。
「全く、見かけで判断することの恐ろしさが身に染みたよ」
独り言のように呟きながら、俺は眠りの海に沈んでいった。
朝はミリアのモーニングコールによる強制的な目覚めから始まりを迎えた。
すぐに着替えて、部屋の外に出る。ミリアは律儀に待っていてくれたようだった。
「おはようございます、アキトさん。今日もクエスト頑張りましょう!」
「やけに張り切ってるな」
「私、昨日の自分の魔法を見て魔法使いっていう道もいいかなって」
「それだと俺の出番が無いんじゃないか?」
茶化すように問いかける。
「前衛がいないと後衛は成り立ちませんよ」
苦笑したミリアが言う。
「そう言ってくれるとありがたいね」
「もう、からかわないでくださいよ」
少しむくれたミリアが言う。その姿は子供らしく、とても可愛かった。
ギルドに着くと、またいつもの受付嬢さんがクエスト用紙を一通り出してくれる。
「アキトさん達は最近とても成果があがっているので、もしかしたらDランク昇格審査が来るかもしれないですね」
「クリアすればDランクのなれるんですか?」
「はい。デバイスの機能が増えたりなど特典も沢山つきますよ」
それは少し期待してしまうな。
そのためにも二人で頑張らなきゃなと改めて思う。
「じゃあ今日はこのクエストで」
俺は指差したのはガビィの親玉と言えばいいのだろうか。
名前はガビュラス。少しドラゴンのような見た目をしている。
「承りました。それではいってらっしゃいませ」
恒例の挨拶をすませて、ギルドを出る。
段々とこの町にも慣れてきた。
大通りをさっと抜けて、郊外を目指す。
結構遠そうだ。
道中で気になったことを聞いてみた。
「なあミリア。魔法って誰にでも使えるのか?」
「うーん......よほど素質がない限りは使えなくないと思いますが」
「どうやってやるんだ?」
「じゃあここで魔法の練習でもしてみますか」
広々とした草原の真ん中で立つ。
「感覚としては魔法は全てイメージから発せられます。イメージを魔力で具現化させたものが魔法です」
「なるほど。じゃあこうか......」
手を前に突きだして、火の塊をイメージする。
「魔力が集まってきてますね。いいと思います」
ゲームをやったおかげで、こういうイメージには慣れているのだ。
グッと力を込める。掌が少し熱くなるのを感じる。
「人によって言葉は違うんですけど......不思議と頭の中に呪文が浮かんでくるのでそれを読み上げてください」
「お、こうか......? ▲▲◼......」
「最後に魔法名を唱えて、発動完了です」
「◼▲ <<火球>>」
すると、少し小さい炎の球が飛んでいった。
だが、あっけなく空中で消えた。
「ぐぬぬ......」
「出来るまでやりますか?」
「このままじゃ引き下がれない。俺のプライドが許さないぞぉぉ!」
叫び声を上げて、ひたすら魔法を打ち続けていた俺だった。
フィリア、いなくなる。
そして魔法に興味が出てきたアキト。
これからどうなってしまうのでしょうか。
次回の更新は水曜日辺りを予定しております。




