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異世界機巧都市  作者: switch
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一章 第八話 「忌まわしき過去」

ミリアちゃん過去回です。

ちょっとだけだけどね。

「な......」


「すいません。ずっと黙っていて」


「それはいいんだけど......」


「本当は秘密にしているつもりだったんですけどね」


「ご、ごめん」


「いずれかは分かってしまうと思ったので別にいいですよ」


 ミリアは明るい笑顔をしている。

 しかし、その瞳には何か暗いものを浮かべていた。


「なぁ、ミリア」


「何でしょうか?」


「まだ俺に隠していることとか......あるんじゃないのか?」


「......」


 無意識に口に出していた。

 どうしても、目の前の少女を放って置けなかったのだ。


「......少し、長くなりますがいいでしょうか」


「ああ」


「私の過去を......全てお話しします」




 私は弓の名手であるアクアス家の末っ子として育った。

 しかし、ほんの稀な確率で人間族(ヒューマン)人間族(ヒューマン)の間に産み落とされると言われている魔人族(ガイナ)

 そんな偶然の巡り合わせが私に回ってきた。

 小さい頃は可愛がられていた。母の腕の温もりは今でも忘れることはない。

 徐々に大人に近づいていくに連れて自分の兄や姉の弓がとても上手くなっていくのに対し、自分は上達しない。

 何故なのだろう。魔人族(ガイナ)だからだろうか。

 自分が成長していくのに比例して、父が嫌味を言ってくる回数が段々と増えてきた。

 「何故お前だけが上手くならないのだ」と。

 こっちが聞きたかった。

 努力をしても報われない。

 そんな生活が長々と続いていった。



 きっかけは十六歳の誕生日だった。

 親族達に祝ってもらい、嬉しかったのは記憶に残っている。

 だが、それより印象深かったのは——父の言葉。

「これで全員十六歳を越えたな。これから弓のテストを行う」

 なっ、と驚愕したのは自分のみ。

 他の姉や兄達は、自信に満ちた表情で父を見ていた。

「一人十本。弓を的に向かって射てみろ。ただし七本以上当たらなかったら——」

 息を飲んだ。

「この家を出ろ」

 嫌だ。それだけは嫌だ。

 自分の中で必死に訴えかけた。

 やらねば、家から追い出される。

 楽しいはずの誕生日が一変した瞬間だった。



「よし、皆集まったな。では、長男から」

 自分は末っ子なので、最後だ。

 大丈夫、今まで必死に特訓してきたのだ。

 きっと、きっと——



 目の前は、地面。

 昼頃の太陽に照らされ、輝きを放つ大地。

 決して転んだわけではない。

 気がついたときには、自ら地に伏していたのだ。

「どうして......どうして......」

 結果は六本。

 自分にしては、奇跡だとも言えよう。

 だが、合格ではなかった。

「決まりだな」

 父が歩き出す。

 自分の前で影が止まる。

「不合格者はお前だけだ。荷物をまとめろ、明日までにはこの家から出ていけ」

 気がついたら、地面には雫が(したた)っていた。

 それは大地と同じ、太陽に照らされ、重い輝きを放っていた。



「今までお世話になりました」

 父に静かに礼をして、家の前を立ち去った。

 家の窓からは母が悲しみを堪えた顔でこちらを見ていた。



「なるほど......そんなことが」


「すいません。暗くなるような話を」


「な、なあミリア。一つ気になったのはさ......荷物ってどうしたんだ?」


「......それがさっきの音のヒントなんですが、私は魔人族(ガイナ)なので魔法が使えるんです」


「確か人間族(ヒューマン)以外は使えるって話だったよな」


「はい。その中の一つ。<<収納(ストレージ)>>を私は使っています」


「それって、荷物を出し入れ出来るとか?」


「そうです」


「へぇー......便利な機能だな。でも音と何の関連性が?」


「えっと、魔人族(ガイナ)の特徴を知っていますか?」


「確か......力が強い?」


「そうです。それは女性にも例外ではありません」


「じゃ、じゃあミリアも?」


「はい......私もです。なので、普段から制御する必要があるんですよ」


「ちょっと怖いな」


「さっきの音は制御用の重りの音ですよ」


「なるほどな」


「結構重くて......」


「どのくらい重いんだ?」


「そうですね......大体片腕で三十キロぐらいですかね」


「んなっ......」


 あまりの衝撃に少し後ずさりしてしまう。


「大丈夫ですよ」


 少し笑いながら、ミリアは答える。


「アキトさんに危害は加えない......と思いますから」


「ちょっと!? 何で不確定要素なの!?」


「あはは、冗談ですよ」


 ミリアはとても笑顔だ。

 数時間前まで暗い顔をしていたのが嘘みたいに。


「話が長くなっちゃいましたね。そろそろ寝ましょうか」


「そうだな。また明日もあるし」


「じゃあ、お休みなさい」


「おう、お休み」


「あっ、そうだ。アキトさん」


「ん?」


 ミリアは口に人差し指を当てて言う。


「この事は内緒でお願いしますね?」


 少しドキドキしたのは、男心というやつだろう。

まさかの怪力。

アキトは握りつぶされてしまうのか!

それにしても女の子に「二人だけの秘密だよ?」とか言われるとドキッとしますよね。


次回の更新は、水曜日の予定です。

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