人魚 ナミネ
人魚の登場です!!
人魚は有名ですよね~
ザザァン・・ザザァン。
海にて波の音が聞こえるのはあたりまえである。しかし、この波の音と共に違う音も聞こえる。否、音ではなく声だ。
「いひゃいひょー!!」
「大物が釣れたな銀一郎」
「そうだな・・・って言ってる場合じゃない!! 予想外過ぎるのが釣れたじゃねえか!!」
「いひゃいー!! ほのふりはりをひょってー!!」
「ほら、大人しくしてろ。今釣り針を取ってやるから」
人魚の口から丁寧に釣り針を外す。確認為に口の中を見る。釣り針を口の中に引っ掛けたのだから、切れているだろう。しかし、意外にも無傷であった。
「うん。大丈夫だな。てっきり口の中が血だらけかと思ったが別に異常は無いな」
「あ・・・・・」
「 ん?」
「・・・・・素敵」
「は?」
よく分からないが人魚から素敵と言われた。でも褒められるのは悪い気分にならない。だか、それよりも気になる事があった。それは猫柳を見つめる人魚の瞳がハートになっていたからだ。錯覚かと思うが人魚の次に放つ言葉でそんな事を忘れさせられる。
「わたしと恋に落ちませんか!!」
「何でだよっ!?」
いきなり過ぎる展開。ツッコミをせずにはいられなかった。
ここで一旦、冷静になる猫柳。まずどういう経緯でこんな急展開になったかを分析する。
猫柳は釣りをしていた。人魚が釣れた。人魚の口から釣り針を取ってあげた。恋に落ちませんかと告白される。
「駄目だ分からない!!」
経緯を分析した結果でも分からなかった。目の前の人魚は瞳をハートにしてキラキラさせて猫柳の返事を待っている。この状況でまずする事はと考え、猫柳が言った言葉は自己紹介であった。
「まずは自己紹介をしよう。俺は猫柳銀一郎だ。そして隣りで無関心のまま釣りをしているのは銀陽だ」
とりあえず告白の返事をうやむやにする作戦だ。正直、告白されるのは嬉しいがいきなり過ぎる。
「そうだね。わたしとした事が自己紹介もしないなんて失礼だよね。わたしは人魚のナミネ。銀一郎、不束ものだけど末長くよろしくお願いします!!」
軽い自己紹介が終わった瞬間、猫柳に抱き付いてくるナミネであった。
「待て待て!! 話の続きをしよう。って言うかさらにその前に胸を隠せ!!」
「え、胸?」
ナミネの姿は人魚の姿を想像すれば分かる。水色の髪の毛に青い瞳、耳にはヒレのような飾りが付いている。下半身はピンク色の鱗で覆われている魚の尻尾だ。どこから見ても人魚である。だが猫柳が気にする所は違う。ナミネの胸部分に何も隠す物が付いていないのだ。しかし、おもいっきりナミネの胸がはだけているわけではない。濡れた水色の髪の毛がギリギリの所で隠している。
「わたしったら・・はしたない。でも、銀一郎に抱き付いていれば大丈夫だよね?」
「何その積極性!?」
ふにゅんっと猫柳の胸に柔らかい物があたる。猫柳対して効果は抜群である。しかも猫柳の首にナミネは腕を回して抱き付いているのだ顔と顔の距離が近すぎる。
「待つんだナミネ。一旦落ち着こうな!!」
「銀一郎が名前を呼んでくれた。嬉しい!!」
「話を聞いてくれ!! 良いか、何で俺に告白を?」
「だって、痛がっているわたしの口から釣り針を取ってくれたんだよ!! その時の顔はわたしの事を大切に思っている顔だった・・・」
「大切って言うか心配は勿論したけど」
「銀一郎はカッコいいし」
「それはありがとう」
「それに広大な海で銀一郎という人間がわたしという人魚を釣ったんだよ。運命的な出会いだよね? これはもう恋が芽生えるでしょ!!」
「運命的かどうかは分からないが衝撃的な出会いではある」
「はぁ・・恋は運命的で情熱的なもの。心が温まり、絡み付くような幸福が溢れるの。そんな恋をしてみたい」
「分かった。ナミネは恋に恋してるんだな。ここは本当に冷静になる事を推奨する」
「早く恋をしようよ銀一郎!!」
「まず、する事は冷静になる事だ!!」
恋する乙女は周りが見えなくなると聞くが、まさにその通りであった。今は夜行ナミネのペースだ。早く猫柳は自分のペースにしないといろいろとマズイと思う。
「銀一郎って逞しい身体つきなんだね」
さらにギュッと抱き付いている。本当にいろいろと当たっていて猫柳は嬉しいんだか、なんだか状態だ。
そしてやっと無関心だった銀陽が話しかけてくる。ようやく助け船をくれたかと思う猫柳であったが、そうでもなかった。
「銀一郎はそこのナミネとか言う人魚と夫婦となるのか?」
「そんな夫婦だなんて、まだキスもしてないのに。・・・キャッ」
「キャッ・・・じゃない。ていうか銀陽は何を言い出すんだ!!」
「お、魚が釣れた。これはなかなか大きいぞ」
「話を聞きやがれ。人が大変な目にあっているのに」
無関心の銀陽。人魚よりも釣りの方が大事のようである。猫柳は『助けてくれ』の視線を何度も送るが無視して釣りをする銀陽であった。
「あむぅ」
「ナ、ナミネ。何してるんだ?」
「甘噛み。あむあむあむぅ」
耳を甘噛みしてくるナミネ。なんとも形容しがたい状況である。
「甘噛みをしている理由が聞きたいんだが」
「恋人同士って甘噛みをするんでしょ?」
「お前の恋人の定義を知りたい」
これ以上このままだと、無理矢理キスをしてきそうなので一旦ナミネを離そうとする。しかしナミネは離れない。むしろ、さらに強く抱きついてくるのだ。そんな状態でナミネを前に離そうと押したら猫柳は前のめりに倒れるのが当たり前。そうすればナミネを押し倒した猫柳の構図が完成する。
「銀一郎ったら気が早いんだね。良いよ・・わたしはいつでも大丈夫だよ」
頬を赤くして目をそっと瞑る。何かを待っている状態である。
「違うからな!!」
こんな状況を誰か知り合いにでも見られたら即誤解しかないだろう。しかしこんな時に限って都合が悪い事ばかり起こる。
「ギン~!! 大物は釣れた・・・の」
「何で爛がここに・・・」
冷や汗がタラリと垂れる。なぜここに犬坂がいるのかと言うと簡単だ。様子を見に来ただけなのだから。猫柳が釣りに行く前に犬坂は後で見に行くと言っていたのだから来るのは当たり前である。
犬坂はとても冷たい目をしている。それを見た瞬間に猫柳の視界に写ったのはとんでもない蹴りであった。
「何やってんのよぉぉぉぉぉぉあんたはぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「鋭い蹴りだなっいでえええええええええええ!?」
ドグシャッと蹴られ、吹き飛ぶしかなかった。ゴロゴロと転がり、そのまま倒れる。
「何で女の子を襲ってんのよ!!」
「誤解だ!! むしろこっちが襲われそうかもしれないんだからな!!」
「何を言ってんのよ?」
「銀一郎大丈夫!? ああ、顔は腫れてない? 切れてない? 舐めて消毒する?」
ピチピチと這い寄るナミネ。ここで犬坂は押し倒されていた女性が人魚だと気付く。
「え!? もしかしなくても人魚!?」
「どうしたの爛? ギンは見つけた・・あ、人魚」
実は蛇津もいた。そして人魚を見てもそこまで驚いていない。妖怪や神と出会っているのだから人魚が本当にいても不思議ではないだろう。
「何で人魚がこんな所にいるんだろう?」
「ちょっと何で私の王子様を攻撃してるのよ!!」
「「え? 王子様ぁ?」」
犬坂と蛇津はナミネの猫柳に対して王子様発言に口がポカンと開く。この人魚は何を言っているのだと思う。
「えっと、何を言ってんのかな? この人魚は」
「ギンに惚れてるって事でしょ。さすがギンだね。ライバルが増えたから頑張れ爛」
ゲシッと脛を蹴ってくる。地味に痛かったと後で話す蛇津であった。
「ああ、やっぱり少し切れてる。今舐めて消毒するからね・・・れろ」
れろれろ。
頬を赤くしながら猫柳の顔を舐めるナミネ。それを見た犬坂は顔を赤くしながら猫柳とナミネを引き剥がす。蛇津は見ていてニヤニヤ。
「ちょっと何やってんのよー!!」
「恋人を介抱するのは当たり前でしょ?」
「いや、そうじゃなくて何であなたとギンが恋人になんってんの!?」
「それは銀一郎がわたしを釣り上げたから・・・キャッ」
「はあ? ねえ優、この子が言っている事が本当に分からないんだけど」
「ん~。彼女はギンが釣りをしていたら釣り上げてしまって、それを運命的な出会いと思い込みギンにベタベタに恋をしてしまった。そしてもう恋人だと信じ込んでいるって事だと思う」
「それ正解!!」
見てもいないのに蛇津はまるでそこに居たかのように的確にナミネの状況を分析した。その的確すぎる分析に猫柳は起き上がり大声で正解だと伝える。
「ふーん。一応聞くけどそこの人魚に変な事してないよね?」
「してないから!!」
「これからするんだよね銀一郎」
ナミネがまたも猫柳に抱きつく。それを見たらまたも犬坂は猫柳を蹴る。これに関しては理不尽である。後で謝るのだが、それはまた今度である。
「ここは一旦落ち着かない?」
蛇津の言葉で一旦イザコザがリセットされる。これには猫柳も感謝である。
(ああやっぱ優は親友だ。俺のピンチを助けてくれる。ありがとう!!)
心の中で蛇津に強く感謝し、ガッツポーズをする。
ここからは蛇津が会話のペースを掴んでいく。まずは自己紹介から始める。犬坂と蛇津が来た事で最初から自己紹介しなくてはならない。ナミネも新しく来た蛇津たちの事が分からないからである。
「わたしは人魚のナミネ。そして銀一郎の妻です」
いつの間にか恋人から妻になっていた。
「そ、そう。あたしは犬坂爛。そこにいるギンの友達」
「蛇津優だよ。オレもギンの友達だ。あと爛はただの友達じゃなくてナミネのライバルで」
「はいストップ。何言ってんの優は」
ゲシっと脛を蹴られる。やはり地味に痛い。
「ま、まさか銀一朗の愛人!?」
「あんたは本当に何を言ってんの!?」
「銀一郎ダメだよ愛人なんて!! そんな・・ああでも1度恋人から離れても真実の愛の力によって最後にはわたしの元に帰って来るストーリーも良いかも」
「落ち着けナミネ」
「はーいここでストップ。ナミネは人魚だけど、ここら辺に住んでいるのかい?」
恋に関する話から遠ざける話をする。これ以上ナミネの暴走を見ているわけにはいかないからだ。蛇津としては見ていて面白いと思ったのは内緒である。
「うん。わたしはここら辺に住んでるよ。今はね」
「今って事は前は違うのか?」
「うん。わたしの住み家はこの広大に広がる海だからね。海の中ならどこでもだよ。そしてこんな広大な海でわたしは銀一郎と言う運命の人に出会えたの」
「どうしてもナミネは恋の話に繋げたいんだね」
いつの間にかナミネが猫柳に抱き付いている。先程から隙あらば抱き付いているのだ。それを何度も犬坂が引き剥がしているのが恒例のようになっている。
ここで忘れてはいけないのは時間である。猫柳たちがここに居られる時間は2時間でしか無い。ナミネを釣り上げてから大分時間が過ぎているのだ。そもそも犬坂と蛇津が様子を身に来たと言う事は帰りの船で来たという事でもあるからだ。
時間が来ればそろそろ帰ると伝えるとナミネは先程よりも強く抱き付いてくる。返さないつもりの行動だ。好きな人と離れたくないという気持ちの表れだ。
「やだー!! 離れたくないー!!」
「人間でも人魚でも帰る時は帰るんだナミネ。そこは分かってくれ」
「やだやだやだー!! キスもしてないのに!!」
「もうツッコムの疲れた」
「頑張れギン。さてと、早くしないと帰りの船が帰ってしまうよ」
「うん。そういうことだから、じゃあなナミネ」
そのままスッと帰ろうとするがナミネは強く抱きついてきて離そうとしてくれない。このまま引きずって帰ろうかとでも考えたが人魚であるナミネを帰りの船に乗ったら大騒ぎになる。歩く足が止まる。
これはどうにかしてナミネを説得するしかないのだろう。
(でも納得させる事が出来るだろうか・・・この恋愛脳のナミネを)
ここで1つ閃く猫柳。ナミネは恋愛脳ならばそれらしい話で逸らせば良いと考える。
「えーとナミネ。恋愛ってのはいつもベッタリだとイケナイ気がすると考える。確かにいつもベッタリも良いだろうが逆に少しでも離れる時間があれば本人同士の愛とかが再確認出来る。そんなんのも良いだろう?」
「・・・・・良い!! 良いよそれ!! 離れ離れになる愛し合う2人が思い人の事を思い続ける。そして再会した時の2人はさらなる愛を育くみを・・・」
もう既にナミネは自分の妄想世界に入り込んでいる。案外チョロかった。
「ああ銀一郎。しばしの別れだけどまた再会しよ。約束だよ」
「ああ勿論だ」
「次に再会したら結婚だね!!」
「・・・・・・け、結婚?」
ナミネに次に再会したら結婚をするようだ。
(約束は破りたくない。でも再会したら結婚って)
「じゃあまたね銀一郎」
ナミネが海に飛び込もうとするがピタッと止まる。どうしたかと思ったが、それは海を見ればすぐに理解出来た。海から無数の手が生えているのだ。その光景は異常である。イタズラだとしても海に無数の手を生やす為に人間が何十人も潜ってるとは考えられない。これは怪奇現象でしかないだろう。
「何あれキモッ!?」
「あれは舟幽霊だな」
舟幽霊。
日本全国各地に広く伝わる海上の幽霊が怨霊となったものである。有名な話だとひしゃくを所望し、そのひしゃくで水を船に汲みいれて船を沈没させてしまうのがある。その正体は水難事故で他界した人の成れの果てだと言われている。
「私あの海の中に飛び込みたくないんだけど・・・ハッ!? これはもう銀一郎と一緒に陸で暮せと言う事かも!!」
「それは違うと思う」
ここで今のをナミネの言葉を肯定してしまうよ本当に陸まで付いて来そうなので否定はしておいた。
舟幽霊の手が伸び、襲い掛かってくる。その対象はナミネであった。ワラワラと舟幽霊の何十という手がナミネに迫る。
「いやっ来ないで!?」
「ナミネ!!」
猫柳はナミネを抱きかかえて迫り来る舟幽霊の手から逃げる。逃げれば追いかけて来るのは常識なので猫柳は舟幽霊から避け続けるしかなかった。
「ったく何なんだ。ナミネばっかり狙いやがって!!」
舟幽霊はナミネしか襲ってこない。なぜなら、その場にいる蛇津や犬坂、釣りをしている銀陽に見向きもしないからである。どうやら最初から狙いはナミネだけのようだ。
「知り合いかこの舟幽霊達は!?」
「ううん知らないよ!? 今はじめて出会ったよ!!」
襲われている本人も知らない。これは相手の方が一方的に狙っているだけだ。
なぜナミネだけを襲っているのかは分からない。しかし、目の前で襲われているナミネを無視する事は出来ない。今日始めて出会ったとしてもだ。猫柳の頭にはナミネを助けるしか浮かばなかった。
「銀一郎・・・」
ぎゅっと抱き返してくる。身体が密着しているからこそ分かる。ナミネは恐怖で震えていた。誰だって知りもしない相手からいきなり襲われれば恐いものだ。
「ナミネを恐がらせてんじゃねえよ。この幽霊共!!」
襲い掛かる舟幽霊の手を蹴り返す。だが、相手の手の数は複数。ナミネを抱きかかえているので、こちらは手が使えない。はっきり言ってしまうと不利な状況である。ここは逃げるしかないと考える。
「逃げるぞ皆!!」
「分かってるよ。急ごう欄に銀陽さん」
一斉に逃げ出す。しかし逃げ出さない者が1人いた。
「おい、銀陽!!」
「先に行っていろ!! 今、大物が掛かったんだ!!」
銀陽の持つ釣り竿が凄くしなっていた。それを見れば大物の魚だと分かる。
「今それどころじゃないだろうが!! ていうか寧ろ助けろよ!!」
「もう少し待ってくれ!! 釣れそうなんだ!!」
銀陽の脳には大物の魚を釣るしかないようだ。それは後にして助けて欲しいものだ。
「うおおおおお釣れたぞ」
ここでブチッと何かが切れた音が聞こえた。これは舟幽霊の複数の手が進行する邪魔として判断し、釣り糸を千切ったからである。釣り糸1本くらい気にしないものだが、舟幽霊たちから見れば邪魔でしかないらしい。
「あ・・・・・」
すっとんきょな声が出た。誰の声かは分かるだろう。
銀陽の中でしばし時間が止まる。そして時が動いた後の第一声が咆哮される。
「何をするんだこの悪霊共ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
凄い勢いで跳躍し、猫柳たちと舟幽霊の間に入り込む。
「幽霊のくせに物理的に私の釣り竿に触るなぁ!!」
ボギボキポキポギボキポキボキポキポキボギボキ!!
一瞬で舟幽霊の骨関節が外されていった。骨の関節が外れた為、手が変な方向に曲がっている。よく一瞬であれだけの関節を外したものだと驚く。さすがに骨関節を外されればどうにも出来ないので、舟幽霊たちは海へと引っ込んでいく。
「もう2度と海から這い上がってくるな悪霊共」
猫柳たちは久しぶりに銀陽を頼もしく感じる。理由がどうあれ。
「助かった銀陽。さすがだな」
「あれくらい造作も無い。しかし大物を逃がしたのが痛い・・・」
「しかし何だったのかしらね。いきなり過ぎて分からないわ」
犬坂の言う通り、なぜ舟幽霊がナミネだけを襲ってきたかが分からない。
「本当に知らないのかナミネ? 少しの心当たりも無いか」
「うん。知らない」
「そうか。でも銀陽が追い払ってくれた事でもう平気だろうな」
安心したと思ったらナミネがもう離さないと言わんばかりにさらに強く抱きつく。
「ねえ銀一郎。わたし海に戻りたくない」
「ほお。人魚が海に戻らないとは槍でも降るか?」
銀陽が少しだけ呆れる。確かに人魚が海に戻らないのはおかしい。それは人魚が海の生物だからだ。
「何でだナミネ?」
「だってまた舟幽霊が襲ってきたら嫌だから・・・」
それはもっともだと思う。舟幽霊は猫柳たちの元から引いたが、もう二度とナミネを襲わないとは限らないからだ。舟幽霊はナミネと同じ海に出没する妖怪だ。襲ってきた海に入り込むのはさすがに勇気がいる。さすがに海が広いとはいえ。
「ナミネの言う通りだね。危険な海には入れないよ」
「じゃあどうするの?」
「わたしは銀一郎と一緒にいたい!!」
「うーん。正直それしかないな」
「やったー!!」
チュッと猫柳の頬にキスされる。
「え? 今のは」
「助けてくれたお礼だよ。ふふ」
「何やってんのよー!!」
「今のは俺は悪くないだろが!! って痛ったあああ」
話はまとまり、ナミネは猫柳たちと一緒にいる事が決定した。
帰りの船に乗る時はバレないようにするのは大変であった。下半身の尾びれとか、上半身の隠れていない胸とかを隠すのに。猫柳たちが来ていたアロハシャツとかで隠したりなどで工夫した。
でも思えば銀陽が変身して空を飛べは良かったと少し後悔。そして周りの人に怪しまれないように羊島たちの元に戻ってきた。
「っと言うわけでナミネが一緒にいる事となった」
「どう言う事だ」
「こんにちは。わたしはナミネ。よろしくね!!」
そして自己紹介が始まる。ナミネは犬坂たちと同じように猫柳の恋人、妻発言をしてしまい、やはり一悶着が起こるのであった。
「ライバルが増えましたねぇ~。姫音様ぁこれから大胆にならないとぉ~」
「うう・・・」
「羊島さん、お互い頑張ろう」
「はい、頑張ります」
猫柳たちは海で遊ぶのを一旦中止し、ナミネをどうするかを考える。ナミネは舟幽霊になぜか襲われた。これでは海に帰る事は出来ない。ならば猫柳たちがする事は1つ、『なぜ』の部分を解明しなければならないのだ。
「せっかく海を満喫していたのに、ここまで怪奇に遭遇するとは思わなかったわ」
「仕方ないね。人生何が起こるかわからない。目の前で起きた事は無かった事には出来ないよ。ここはその流れに乗るしかない」
「優君の言う通りよ。私達はもう変な怪奇に足を踏み出してしまったから解決するしかないわ。でもその前にナミネちゃんの尾びれをどうにかしないとね」
「ん、なあに?」
ピチピチ。
尾びれがピチピチしている。
「こらっ隠せ!!」
今にギリギリセーフで隠せた。猫柳たちがいる恋愛ヶ浜には観光客で賑わっている。そんな中で人魚なんていたら大騒ぎである。
一応クロが人払いの力で他の人の目を背けているが長時間は無理である。
「ただのコスプレだと思われていれば良いんだけどね」
「そうだな。もし見つかってもコスプレで言い包めるしかないな」
現在はタオルとかで尾びれを隠しているが移動する時が大変だろう。
「仕方ないから私が何とかするわ」
白羅が尾びれに触ると変化が起こる。タオルで隠れていてどうなっているかよく分からないが形状が少しずつ変わっている。
「あ、足が生えたー!!」
ナミネは自分の尾びれが人間の足に変わっている事に驚き、嬉しさに満ちている。
「あなたはまさか魔女!?」
「魔女じゃなくて神聖な神よ」
「でもありがとうございます!! わーい足だ!! 人魚の有名な夢が叶ったー!!」
ヒュバッとナミネは嬉しさのあまり立ち上がる。さて、ここで1つ問題が起きた。
まず白羅がしたのはナミネに足を与えたのだ。白羅も下半身を蛇の尾から人間の足にする事が出来るのだからそれくらい朝飯前なのだ。でも衣服ごと足を与える事は出来ない。この事から分かるのは生足という答えだ。そしてナミネは元々衣服を着けてもいないし、履いてもいない。尾ひれは人間の足になり、そして何も履いてない状態なのだ。
「え、ちょっと待って」
犬坂が最初に気付く。
ナミネが立ち上がった事でタオルがハラリと落ちる。するとナミネの純潔が見える。
「「「おお・・・」」」
「させるかあ!!」
ズキュン!!
男子全員の目が暗くなり、激痛が走る。
「「「痛ったああああああああ!?」」」
恋愛ヶ浜に男子の悲鳴が響く。
読んでくれてありがとうございました!!!
感想など待っています。もしよければ誤字脱字の報告もお願いします!!
人魚ナミネは恋に恋してる人魚でした。基本人魚は悲恋が多いですからね。ナミネの恋はどうなるか!?




