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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
11章:人魚伝説 -恋と不死の物語-
86/150

超撃甘料理

皆大好き? 料理回ですよ!!

楽しい時間はいつの間にか過ぎるものである。十分に遊んだならば腹が減る。もう昼食の時間だと自分たちの腹が訴えかけてくる。猫柳たちは荷物番をしているクロたちの元へと戻る。

今日の昼食も楽しみの1つである。それぞれが自慢の料理を作り、分け合う昼食だからだ。



「まずは俺と銀陽からだ。俺は作ってきたのはこれだ!!」



パカッと弁当箱を開けると詰まっていたのは白身魚のフライとコロッケであった。揚げ物である。



「私はこれだ。さっき沖の方で捕ってきた魚だ。刺身にするから少し待ってろ」



銀陽が待つ魚がピチピチしている。現地調達とは流石の一言である。でも新鮮な刺身が食えるのは嬉しい事だ。次は蛇津と白羅組の番である。蛇津が作ってきたのは弁当のスターの1つである卵焼きだ。弁当箱の中が黄色一色になるほど卵焼きが詰め込んである。これはこれで凄い。白羅は二段箱を出し、開けると中身は白一色であった。中身はゆで卵なのだ。



「予想はしていたがな」


「あら、銀猫は私が作る料理が分かっていたの?」


「何となくな。あともう1つも卵だろ」



もう1つの弁当箱を見るとまた白い卵がある。



「何だ同じか」


「違うわ。これは半熟卵よ」


「完熟か半熟の違いだけか。あんま変わらないな」


「何言ってんのよ。完熟と半熟は全くもって違うわよ」


「いいから次」


「じゃあ次はあたしね。あたしは自分の好きなハンバーグにした」



ボリュームのあるハンバーグを見ると涎が垂れてきそうだ。口に含んだら肉汁が溢れるだろう。

クロのは生姜焼きであった。美味しそうと思う前にクロも料理を作れた事に驚いた。犬坂も一緒に作っていた時は驚いた。



「俺様が料理を作るのは意外か?」


「うん意外。次どうぞ」


「ワタシはラタトゥイユ。それにスズキのパイ包みダヨ♪」


「へえ、凝った料理が出てきたね。美味しそうだよ」


「卯月はサラダです。みんなも野菜をちゃんと取らないとダメです」



人参が多めのサラダが皆の前に出される。バランスを考えるならここでサラダが出てきても良いだろう。

馬城と穀菜組の番。馬城は弁当のスターである鳥の唐揚げと生春巻きであった。さすが弁当屋の息子。これも美味しそうだ。穀菜はおむすびだ。様々な種類がある。おむすびの中身に何があるのか楽しみである。

最後に羊島と愛夢だ。



「私はサンドイッチを作ってきました。様々な種類がありますよ」


「わたくしはぁ~デザートとしてアップルパイをたくさん焼きましたぁ~」



猫柳たちの目の前にはたくさんの料理が並べられる。案外料理がカブらないものだと思う。1つくらいはと思っていた。



「じゃあ、いただきます!!」



さあ、美味しい昼食の始まりである。



「まずは爛のハンバーグからいただきだ」


「いいわよ。はいどうぞ」


「あぐむ。ん、美味い!! 口の中に肉汁が溢れるな!!」


「本当に美味いよ。これはいくらでも食べられるね。次はティアの料理をもらうよ」


「ウン。食べテ食べテ!! 食べてワタシはユウユウの胃袋をツカム!!」



ラタトゥイユを口に含む。これも美味く、大絶賛をする蛇津。大絶賛された兎姫はテレテレと頬赤くする。それを見た白羅は負けまいと蛇津の口にゆで卵を詰め込む。



「モガモガ・・・白羅さん。そんなにゆで卵を詰め込まないでくださいよ。モガモガ」


「穀菜のおむすびも美味いな。お、中身はシャケだ」


「おれは・・むぐむぐ。これはたらこだ」



おむすびの中身は様々だ。猫柳たちはどれに何が入っているかも楽しみにしている。



「私はこのアナゴが巻いてあるおむすびをもらう」


「あ、銀陽。それは俺が食べようと思ってたやつが」


「取ったもん勝ちだ」



バクリと一口で食べてしまう。そして次から次へと食べる。



「ちょっと銀猫、皆の分も残しなさいよ」


「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」


「まだありますから安心してください」



次は生姜焼き、サラダ、白身魚のフライと食べる。どれも美味いの一言である。皆が美味しく昼食を食べ続ける。これも楽しい一時だ。ここまでは。



「しっかし美味いな。特に爛が作ったハンバーグが美味い。爛は良いお嫁さんになるぜ!!」


「ありがと。そう言ってもらって嬉しい」



良いお嫁になると言われて照れる犬坂。ここでクロが茶化すのはいつもの光景であった。



「さて、今度は羊島のサンドイッチをもらうぜ。羊島の手料理も楽しみにしてたんだよな」


「はい、どうぞ猫柳君!!」



ニコニコとしながらサンドイッチを渡してくる。そして勢いよく口に含む猫柳。



「あぐ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



口の中に広がるは甘み。サンドイッチには甘くデザートのようなものがある。しかしこのサンドイッチはそのようなものではなかった。猫柳が食べたサンドイッチは超撃甘であったのだ。

超が付き、身体中に甘さによって攻撃される程の感覚である程なゆえに『超撃甘』なのだ。



「どうしたのギン。黙る程美味いのか? オレにもちょうだい羊島さん」


「おれもおれも!!」


「はい。どうぞたくさん食べてください!!」



パクリと食べる蛇津と馬城。



(・・・・・・・・・・・・・これは)


(ああああああああああああ甘い。何だこれは!?)



2人も超撃甘に直撃した。この甘さは脳にも伝わり、脳がおかしくなりそうだ。それ程の甘さなのだ。



(あ、甘いぃぃ!! 身体中の鉄分が糖分変わるくらい甘い!!)


(やばい。これは少しでも気を抜いたら意識を持っていかれそうだ・・・・・。意識を無くす方じゃなくて意識が異世界に飛びそう)


(何でだ? 前にクッキーを食べた時は美味しかったのに)



蛇津の疑問を答えるならば羊島の味覚が答えだろう。羊島は実の所、超甘党なのだ。甘いチョコケーキにチョコクリームと蜂蜜を足すくらい超甘党なのだ。彼女にかかればどんな料理も超撃甘料理になる。それを知らない猫柳たちは今まさに超撃甘が身体中に響いている。だが、元々甘いデザード系の料理ならば大丈夫なのだ。彼女は料理を甘くする傾向があるので作る料理が甘い物ならば美味しい物が出来る。だから前に猫柳たちが食べたクッキーは美味しかったのだ。



「どうですか猫柳君?」



笑顔で瞳をキラキラさせながら感想を聞いてくる羊島。この状況で猫柳は感想をどう言えば良いか凄く迷う。正直な感想は超撃甘の一言である。



(これはどうしよう。味は不味くは無い。そもそも美味いと不味いとかじゃないんだ)


(ギンどうするの? ハッキリ言うのも優しさの1つだよ)


(でも羊島の笑顔を崩したくないぞ!!)


(だけどここで美味しいなんて言えば次の未来は超撃甘サンドイッチのおかわりだよ!!)


(・・・・・耐えられるだろうか)


(まさか食べるの!?)



猫柳と蛇津はアイコンタクトで話す。ここまで深く話せるアイコンタクトが出来るのは凄い。



(馬城は大丈夫かい?)


(甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘)


(あ、ヤバイ)



馬城は甘みに感染しつつあった。



「・・・うん。美味いぞ。身体が震え、このサンドイッチの味を二度と忘れないくらいの美味さ」



身体が超撃甘の影響でとても震えている。

そして美味いなんて言葉を聞けば作った本人はさらに勧めて来るのは当たり前の事であった。猫柳たちの目の前に超撃甘サンドイッチが出される。



「おう。おかわりするぜ」



ぷるぷると震えながら笑顔で返す猫柳。そして道連れとなる蛇津と馬城であった。



(さあ。食べるぞ優、馬城!!)


(待って、オレはもう限界で・・・)


(俺達は親友だろ?)


(その言葉は今ここでズルイ)


(馬城も食べようぜ!!)


(待ってくれ。おれはもう限界なんだが)


(親友だろ?)


(その言葉が万能だと思うな)



何とか道連れにしたい猫柳と回避した蛇津と馬城。そんな時に犬坂と卯月が食べると言い出した。



「卯月も食べるです」


「ワタシも食べようカナ」



次々と手を伸ばそうとする女子たち。



(ヤバイ。さすがに爛達には食べさせるわけにはいかない)



猫柳が取った行動は超撃甘サンドイッチを全部奪う事であった。そうすれば勿論、文句を出るわけで。



「ちょっとギン。あたしたちにも食べさせなさいよ」


「駄目だ。これは俺が食う。だって美味いから!!」


「だから、あたしも食べたいんだけど」


「爛。ここは俺の顔を立ててくれ」


「意味分かんないんだけど」



よく分からないまま猫柳に全ての超撃甘サンドイッチを取られた。これで犬坂たちを救ったのだと実感する。当の本人である犬坂たちはよく分かっていない。

羊島は自分の手料理を独占しようとする猫柳に嬉しく思っているのは内緒である。



「いただきます!!」



バクリと食べる猫柳。そしてまず甘みが響くのは脳である。口の中じゃなくて瞬時に脳に甘さが伝わるとは何かおかしい。蛇津も馬城も道連れにより口に超撃甘サンドイッチが強制的に放り込まれる。



「「え?」」



パクリ。身体中の鉄分が糖分になる感覚が襲う。



(((甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘)))



蛇津はここで思う。よくマンガやライトノベルで激マズ料理や殺人料理を作るヒロインがいる。羊島もその1人であり、まさか本当にいるとは思わなかっただろう。だが羊島は超撃甘料理人だ。

さて、ここで蛇津はある意味激マズ料理や殺人料理の方がマシだと思う。なぜなら激マズ料理や殺人料理は身体が受け付けないからで食べるという選択肢が出ないからだ。しかし超撃甘料理は違う。不味くも無いし死ぬ程のものでは無い。超撃甘料理は食べられるのだからタチが悪いのだ。激マズ料理や殺人料理をもしも食べたならばその場で終了だが、超撃甘料理は食べたらすぐに終了はしない。身体全体に甘みが長時間持続するのだ。もし、一瞬の痛みと持続する痛みを選ぶならどちら良いかと聞かれれば前者を選ぶだろう。そして超撃甘料理は痛みでは無いが後者の方を意味する。

蛇津が意味激マズ料理や殺人料理の方がマシだと思う理由である。意味激マズ料理は兎も角、本当に殺人料理の方がマシかどうかは分からないが。



(甘さって毒にもなるのか・・・・・)



身体中に糖分が染み渡る。身体にある脳も血も肉も骨も全ての成分が糖分に変わっていく気がする。このままでは糖分のみで構成されている人間になりそうである。

不味いとか痛いとか、死んでしまうとかの問題では無い。甘さが辛いと感じたのはこれが始めての経験であった。



「飲み物が欲しい・・・。ジュースじゃなくて冷たいお茶が欲しい」



男子組である猫柳たちは羊島の超撃甘料理で絶賛ダウン中である。身体中の鉄分が糖分になるくらいの甘さだ。とりあえず身体中に走る甘さを中和させる為に渋いお茶が欲しい。

なぜ猫柳たちが横に倒れているかが分かっていない犬坂たちは単純に食い過ぎたのだと思ってない。仕方ないから買って来ると言って女子たち3人が海の家に行く。



「ありがとう爛。出来ればかなり渋いお茶だとありがたい」


「渋いお茶ね。でもあるかな海の家なんかに?」



意外にもあった。



「案外あるものね」


「それにして猫柳君も蛇津君も馬城君もたくさん食べてましたね。やっぱり男の子ですね」


「本当よ。あたしも羊島さんの料理を食べたかったのに、全く男子どもは」


「また今度作りますよ」


「やった!! ありがと!!」



まだこの時の犬坂は超撃甘料理を知るはずも無かった。それはその後の話になるのでここでは話さないでおこう。

男子が待っているので早く戻ろうとする犬坂たちに声が掛けられる。何かと振り向くと男性3人組がいた。

何か尋ねられるかと思ったが違った。まさか自分たちが本当にこんな体験をするとは思わなかった。そう、ナンパである。ナンパ男3人組みから鬱陶しいくらい話し掛けられる。「一緒に遊ばない」とか「美味しい物奢るよ?」とか言ってくる。



「遠慮します」



キッパリと断っても諦めずに交渉してくる。それがどんどんと鬱陶しさからイラつきへと変わる犬坂であった。



「キッパリと断ってるんダカラ諦メテ他のトコロに行っテ」


「そんな事を言わずにさ~」


「君ってさハーフ? 可愛いね!! 小柄の君も可愛いよ!!」



チャラチャラしたナンパ野朗が犬坂たちの進む道を邪魔する。正直うんざりだと思う。



(はあ、どうしようか。おもいっきり蹴ってやりたいけど問題は起こしたくないんだよね。ギンたちが来てくれれば助かるんだけど)


「あ、あの。友達が待ってるんですみません」



羊島がオブラートに包みながら断るがそれでもナンパ野朗共は諦めない。だがその時、犬坂たちに助け舟が来た。



「こらこら君達。女性を困らせるなんてダメだろう?」



現れたのは少しおでこを出し、髪型は三つ編みのポニーテールした男性である。姿をよく見ると海の監視員だろう。これは助かったと思う犬坂たち。これならナンパ野朗共を撃退できるからだ。



「海の監視員としてこれ以上は見過ごせない。女性が嫌がっているんだから素直に諦めるべきだ」


「な、何だと。俺らの勝手じゃねえか!!」


「嫌なら相応な処置をする必要になるんだが?」



監視員の目がギラリと光る。そして最後の言葉がトドメとなったようだ。ナンパ野朗共は一目散に去っていった。

犬坂たちはホッとする。



「ありがとうございます。助かりました監視員さん」


「これも監視員の仕事だからね。それにしても君達可愛いね」



ここで不穏な何かを感じる。さっき変わらないような事態がくるのだと



「お世辞じゃなくて本当に可愛いよ。どうだい? これも何かの縁だし俺とお茶しない? おいしい店知ってるんだ」


(こいつもナンパ野朗だった・・・!!)



感謝したのが馬鹿だったと後悔する犬坂たち。まさかの面倒くさい事態がまだ続いた。



「俺は潮御海人しおみかいと。よろしく。君達の名前は?」



助けてくれたのは本当に感謝していたのに彼もナンパ野朗でさらにイラつきが再度発生。そして困ってしまう。そんな時に、ここでトントンと潮御の肩を叩く者が現れる。せっかくの良い所を邪魔されて『何だ?』の一言。



「「よお」」



そこにいたのは猫柳と蛇津であった。なぜか顔が青く身体が震えているが。


「え? 誰だい君達?」


「「そこにいる可愛い女性の連れだ」」



犬坂たちは潮御よりも猫柳たちに可愛いと言われると嬉しいようだ。少し照れている。



「爛達をナンパ野朗からを助けてくれたのはありがとう。でもこっからは俺らをエスコートしてもらおうか。イケメンにエスコートしてもらうのは始めの経験だな」


「えっと、俺は男には興味が無いんだが」


「安心してよ。オレ等も興味は無いから」



蛇津が潮御を背後から羽交い絞めで動きを止める。そして猫柳はある物を潮御の口にねじ込んだ。それは猫柳たちを苦しめた超激甘サンドイッチである。



「可愛い女子の手料理だ。嬉しいだろ?」


「甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘甘」



静かに倒れる潮御。

身体がビクンビクンと震えている。これを見た猫柳と蛇津は超激甘サンドイッチの威力を再確認して、さらに顔を青くしてしまう。よく食べる事が出来たと自分自身を褒める。



「助かったわギン。ありがと。それと彼に何を食べさせたの?」


「気にするな」


「デモ、本当に助かったヨ。ユウユウタチのおかげだネ」


「飲み物を買いに行った割に帰りが遅かったからね。何かあったんじゃないかと心配したんだよ」



まさにそれは的中していた。最初は3人組のナンパ野朗に絡まれていた犬坂たちを助けようと駆け寄ろうとしたが潮御が助けたので猫柳たちも感謝していた。しかし、潮御もナンパ野朗であったので超激甘サンドイッチで撃退したのだ。海の監視員であるのに注意した奴と同じ事をする潮御に罰があたったようなものである。猫柳たちは倒れている潮御を無視して戻るのであった。



「渋いお茶あった?」


「ありましたよ。どうぞ猫柳君。でも何で渋いお茶なんですか? しかもかなり渋いものなんて」


(羊島が作った超撃甘サンドイッチの中和したいとは言えない)










                    ☆











「よし、腹ごなしは終わった。銀一郎よ。魚を釣りに行くぞ!!」


「釣り? ここは海水浴場だが釣り出来るのか? 釣りが出来るなら釣りをしたいもんだが」


「ここは出来るらしいぞ。ならば釣りに行くしかないだろう」


「うーん。そこまで言われると釣りに行きたいが、この後はさらに海で泳ぐつもりだったんだけどな。それにビーチバレーの続きもやりたいし・・・」



猫柳が釣りに行くか行かないかを迷っていると助け舟を出す蛇津。



「大丈夫だよギン。弁当も食べたばかりだし、急には動けないよ。・・・・・本当に動けないよ」


「皆さんたくさん食べましたもんね」



羊島が笑顔で今日の弁当での昼食の感想を言う。

女子たちは何も分からず、美味しい昼食だと思っているが男子3人は違う。まさか羊島があんな超撃甘料理を作ってくるとは誰もが思わなかっただろう。

羊島を悪く言うつもりは無いが、超撃甘料理のせいで身体は痺れている。表現は難しいが超撃甘が身体全体に染み渡り、痺れが現れているのだ。そのおかげで泳ぐのも難しく、ビーチバレーも出来ないから彼等には休憩が必要なのだ。



「昼食の休憩がてら釣りに行ってくれば?」


「そうだな。じゃあ釣りに行ってくるぜ。大きい魚を釣って来るから楽しみにしてろよ!!」


「あたしも少し休憩したら見に行くわ」



猫柳は銀陽と共に釣り道具を持ち、海水浴場でありながら釣りが出来るポイントへと移動する。

普通は海水浴場では釣りは出来ないと思っていたが恋愛ヶ浜は違った。なぜなら釣りが出来るポイントとは船で数十分で着く小さな無人島だからだ。その無人島ではよく魚が釣れると好評な場所である。そのためよく釣り人が訪れる。



「ありがとうございます。帰りもよろしくお願いします」



船の運転手に礼を言う。帰りは2時間後のようだ。たった2時間しか無いが、どんな魚が釣れるか楽しみである。

自分の勘を頼りに釣りが出来るスポットを探し当てる。



「どこで釣るか。もう少しあっちに行ってみるか。それにしても好評の釣りスポットのくせに人が居ないな」



猫柳の言う通り好評な釣りスポットなのに釣り人は居ない。これはやはり恋愛ヶ浜が海水浴場のシーズンだからであろう。海に遊びに来たのだから釣りに来るのは珍しいだろう。



「人が居ないのは仕方ないな。釣りに来るのは珍しい方なんだろ。今は釣りよりも海で泳ぐのが合ってるからな」


「だけど俺たちは釣りに来てるけどな」


「私が釣りしたいだけだし、魚を食いたい」



釣りがしたい理由なんて単純なものである。

歩いていると前から誰かが歩いてくる。男性である。見た目は若く、猫柳より少し年上なだけであろう。

服装は夏に場違いな長袖ぼ服を着ている。布生地は薄そうだがやはり夏に長袖は場違いだ。その布生地の薄い灰色の服で長ズボンのスタイルだ。髪型はボサボサで髪の毛の色も灰色である。



「こんにちは。釣れました?」



友好的に挨拶をする。正直どんな魚が釣れたか気になる所である。これは釣り人なら誰もがする挨拶だと思う。そして相手も釣れた魚を自慢したく見せてくれる筈である。



「こんにちは。けっこう釣れたよ。ほら」



釣った魚を見せてくれる。どれも大きな魚である。銀陽なんか「美味そう」とか言っている。これは銀陽を彼から離さないと魚を食ってしまいそうだ。



「ここは本当よく釣れる。君も楽しむと良いよ」


「はい。いっぱい釣ってやりますよ!!」


「ははは、頑張りな。俺は釣りたい魚は釣れなかったけど、君はたくさん釣れば良い」


「では、さよなら。良い夏を~」



灰色の青年と別れ、猫柳は己の勘で釣りが出来るスポットに到達する。



「ここだ!! ここで何か大きな獲物が釣れると俺の勘がギンギン来るぜ!!」


「ほう、ならここで釣り糸を垂らしてみるか。釣り餌をくれ」


「何が良い? いくつかあるぞ」



釣りの餌はいくつか種類があるのだ。

オキアミにゴカイ、小さなカニやだんごエサ、イクラ、疑似餌にイモ羊羹などがある。どの餌を使うかは釣り人の好みである。もしくは釣りたい魚狙いで選ぶのもある。



「そうだな。ゴカイとイモ羊羹をくれ」


「2つもか?」


「イモ羊羹は私が食べる用だ」


「魚に食わせろよ。ったく、俺は定番のオキアミにするか」



釣り針に自分の選んだ餌を縫い付け、海にへと気合を込めて投げ垂らした。

魚を釣るには気合と運、そして粘り強い根気が必要である。猫柳と銀陽は静かに魚が掛かるのを待つ。



「あんぐ、もぐもぐ。このイモ羊羹はなかなかイケるな。魚を釣ったらやっぱり食うが、何にする?」


「やっぱ刺身だな。焼き魚も捨てがたいが、やっぱり新鮮なままで食いたいしな。釣ったら旅館の人に頼んでみるか」



クイクイ。

釣った魚はどう調理するかの話をしていると猫柳の竿から魚が掛かった反応がした。



「来た来た!! 魚が掛かったぜー!!」


「絶対釣り上げろ銀一郎!!」


「言われるまでもねえ!! おお、大きいぞ。これは大物の予感だぜ!!」



釣り糸がどんどんと引っ張られる。こちらも踏ん張らないと海に引っ張られそうだ。それ程の大物だというのが分かる。これは絶対に逃がすわけにはいかないと猫柳は心の底から強く思う。



「絶対に逃がすかあああああ!!」



竿をグイっと強く引っ張る。竿が折れそうだが、そんなのは気にしてはいられない。力を弱めた瞬間に大物を逃がしそうだからだ。



「負けるかあああああああああああ!!」


「釣り上げるんだ銀一郎!!」


「どりゃああああああああああああああ!! 釣ったぜええええええええ!!」



ドッポーン!!

大きな魚が釣り上げた音が響く。猫柳は釣り上げた大きな魚を見る。

その大きな魚は水色の髪の毛を見せつけ、綺麗な瞳が輝く。海水に濡れた肌、そしてピンク色の鱗のある魚の下半身。



「いふぁいいふぁいいふぁい!?(痛い痛い痛い!?)」


「・・・・・うえ?」



人魚が釣れた。

読んでくれてありがとうございます!!

感想など待っています!!


超撃甘料理。それは身体に「撃撃撃」と甘さが伝わる料理である。

そこらの激マズ料理や殺人料理よりもとんでもない料理だ。

まあ、一瞬で気を失う料理と延々と身体に異常を起こす超撃甘料理を食べ続けるのはどっちが良いですかの選択ですよ。

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