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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
9章:塵山一揆
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塵山晴れる

ゴロゴロと富士山頂から転げ落ちていく。小さい岩から大きい岩が身体に衝突して青痣出来るくらい痛い。

塵義も猫柳と同じように岩に当たりながら転げ落ちている。だが徐々に転がる勢いが弱まっていく。



(そろそろどっかで手ごろな岩にでしがみ付かないとノンストップで鋭利な岩に衝突しそうだ)



猫柳が何とか転がり落ちるのを止めようとした時、柔らかいフサフサの感触が身体全体を包んだ。

よく見ると銀色の毛並みが揃っており、そして温かい。



「もう少し早く助けてくれても良かったんじゃないか銀陽?」


「何事もタイミングが重要だ」



転げ落ちるのを止めるのにタイミングがあるのか? と疑問を出たが助けてもらったのだから言い返すのは無粋な真似である。



「とりあえず助かった。ありがとう銀陽」



銀陽の背中に身体を預け、安心した猫柳は目を閉じて意識を遠くへと飛ばそうとしたが、すぐに意識を引き戻す



「そうだ、塵義は!?」


「あそこの岩に叩き付けられて寝ている。名前に王の付く妖怪だ。大丈夫だろう」



大きな岩に大の字で倒れている塵義がいた。猫柳とは違い、岩に衝突して転がり落ちるのが止まったようだ。



「・・・・・妖怪でも痛いもの痛いのだぞ銀猫妖怪」


「何だ、意識があったのか。このまま穢れを完全に祓うために池にぶち込みに行こうと思ったのだが」


「自分で行く」


「その状態でか?」



黙る塵義。銀陽の言葉を言い返せない状態であるようだ。



「塵義、まだ塵山一揆を起こす気はあるのか?」


「ワシはお前達に負けた。それにこの状態で塵山一揆はもう起こすなんて馬鹿は言えない」



荒々しい言葉使いから落ち着いた言葉使いに戻っている塵義。穢れを纏う量も少なくなっている。



「小僧、聞きたい事ある」


「小僧じゃなくて銀一郎だ。何だ?」


「古金雨銭をどうやって防いだ?はっきり言ってあんな空気の壁など突き破れる」


「それな、空気の壁を何重にも纏っただけだ。1つ目の空気の層で初撃の古銭を防ぎ、2層3層も同じく防ぐ。そうすると空気の壁に古銭が溜まり、勝手に古銭の壁が出来るからな」


「一転集中で攻めるべきであったか。・・・最後にワシの顔面をぶち抜いた拳は何だ?」


「ただ全力で殴っただけ」


「そうか」


「ん?」


(ただ殴っただけでワシの穢れが吹き飛ぶのか? うむむ、連れの銀猫が何かしたか)



塵義は猫柳に殴られて穢れを祓われていた。ただの人間が殴っただけで穢れを祓う事に疑問を抱いている。しかし、銀陽が何かしたのだと勝手に解釈した。



(不思議な小僧・・だ)



晴天の青空を見上げる。



「すまぬ仲間達よ。ワシはお前達を救う事が出来なかった」


「でも終わりじゃないでしょ」



猫柳でもなく、銀陽でもない声が聞こえる。



「チドリ、なぜここに!?」


「なぜここにって。兄さんが心配だから来たんでしょ」



チドリが塵義の額をベシッと叩き、そして猫柳の方を向く。



「ありがと猫柳君、うちの兄貴ジジイを止めてくれて」


「おう。約束は果したぞチドリ」



チドリに向けて猫柳は笑顔でグッと親指を立てた。



「フフ。笑顔だけど額から少し血が垂れてるよ」



銀陽の毛で血を拭う。やはり毛触りが良い。



「こら銀一郎!! 私の自慢の銀毛で血を拭うな」



銀陽のフサフサの尻尾で叩かれる。痛くも痒くもないが、鼻にかすりクシャミが出る。



「チドリが心配になってここまで来るとはな。それに終わりじゃないとは何だ?」


「塵山一揆が潰れたから仲間をもう救えないって訳じゃないって事だろ」


「何を言って・・・」


「1度の失敗で全てが終わりじゃないだろ。世の中、成功と失敗どちらが多いと思う? 失敗に決まってんだろ。何度も失敗して成功に繋がるんだ。生きてんなら何度でもやり直せる」


「ワシの塵山一揆を止めといて言う台詞セリフではないな」


「・・・まあ、確かにな」



チドリが塵義を支え、立たせる。



「塵山一揆なんて無茶はもうさせさないよ。また私と兄さんで少しずつごみや物達を助けていこうさ」


「また無茶したらそこにいる小僧。銀一郎に止められそうだ」


「その時はまた顔面をぶん殴ってやるよ」


「それは願い下げだな。カッカッカッカ!!」




塵義たちと共に下山する途中、猫柳は蛇津たちと合流する。蛇津たちは猫柳たちの姿を見て確信した。塵山一揆を止めたのだと。全員が猫柳の周りに駆け寄りワイノヤイノ。

しかし、チドリの横に支えられている塵義を見て警戒したが、もう大丈夫と言う猫柳に警戒を緩める。

そもそも敵対していた猫柳と塵義。既に仲が良い感じになっているのに、あれ?と思う蛇津たち。

それはそうだろう。ガキの喧嘩ではないのだ。喧嘩した後は仲直りという構図になるのに疑問を抱いているのだ。



「塵義の穢れが祓われたら話の分かる王だった」



この言葉に妙に納得してしまう。元々、塵義は穢れによって暴走していた。穢れが祓われたら案外優しい性格であり、気の良い静かなオッサンという感じである。

神である白羅たちも塵義を見て大丈夫だと言葉で完全に警戒が消える。

穢れとは恐ろしい物である。自分である自覚していても自分でない存在になってしまうのだ。



「今、思うとワシは別人だったのかしれんな」



今回の戦いは遺恨が残る事は無かった。塵義が話の分かる相手で本当に良かったのだ。しかし今後、話の分かる相手がいるかは分からないが。

だが、もう終わったのだ。いちいちぶり返すのも無粋なものだろう。

明日からまた学園に登校しないといけない。ゆっくりしたいが帰らないといけない。


神耀学園にて。

猫柳は自分のスマホをクイクイと操作する。メールが来ているのだ。

相手は何と塵義からである。実は塵山一揆のその後にアドレス交換をしていたのだ。妖怪とアドレス交換なんて猫柳は初なので何ともいえない感覚である。そして妖怪からメールが届くのもだ。

内容はくだらない世間話や美味しい食べ物の話だ。その中でも基本的に多い話はごみ問題が多い。

以外にも哲学的な話になってくるので猫柳は返信するのに頭を抱える。そんな時に蛇津に助けてもらっているが。



「難しい話だよな。ごみ問題って」



塵義にメール返信をする。

塵山一揆を止める事が出来た猫柳たち。これにて神馬のバラバラ事件から続いた怪奇事件が解決したのであった。









                        ☆








スラスラとペンが進む。

化け猫の怪奇事件から塵山一揆まで彼等は面白い行動をしてくれる。見ていて飽きない。

でもこれで彼等の物語は第1部が終わったようなものだ。次は第2部にへと進んで欲しい。

様々な人間、妖怪、神様の物語を見たけど彼等の物語が上位に入る。

バイトにより人間が妖怪や神様と組むなんて今までありえない事だったけど、それが今起こっている。今の時代が1番面白い。

さて、もうすぐ夏になる。また新しい物語が始まりそうだ。今でさえとてもワクワクしている。

今回の日記はここまで。次回の活躍に期待しよう。

スラスラと進むペンを止め、パタンと日記を閉じた。

読んでくれてありがとうございます!!

感想待っています。



これにて塵山一揆編は終了です。

私としてはある意味第1部が終わった感じですね。

次は第2部へ向けて執筆中!!

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