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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
9章:塵山一揆
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病院にて

新しい章へと入りました。

今度はどんな妖怪が出てくるか・・・!!

畳部屋。その部屋には男女が朝食をとっている。周りには骨董品が並べられている。実は骨董品の店なのだ。男女は静かに朝食を食べている。空気はどこか重い感じがある。



「兄さん。本当に計画を実行するの?もっと考え直して。仲間の事は確かに悲しいけれど、それでも・・・」


「悪いが計画は止めらない。時代が進むにつれ、仲間たちの悲鳴が聴こえてくるのだ。ワシはその悲鳴に堪えられない」



カチャ。箸を置き、食事を終わらせる。すると足の生えた湯飲みときゅうすが男性の下へ歩いてくる。

コポコポとお茶を注いでくれる。ありがとう、とお礼を言い、お茶を口に含む。



「・・・いつ実行するの?」


「ズズズ。・・・3日後だ。3日後に仲間たちが解放される。関東にいる仲間たちはワシの声と共に一斉に一揆を開始する」


「・・・やっぱり、私は反対よ。そんな事をしたら取り返しのつかない事になるわ」



「さっきも言ったが計画は止めない。もう準備は出来ている。・・・では、もう行くぞ」



男性が立ち上がると、いつの間にか背後に刀を持った女性、大きな鏡に写る少女、藁で出来た大きな人形が現れていた。



「あんたら、土足厳禁よ」


「これは失礼しました。お詫びは後々に」



刀を持った女性が謝る。



刀華とうか、鏡子、ワラワラよ。計画の最終調整だ。行くぞ」


「了解しました」


「分かりました」


「・・・・・・ハイ」



骨董品店から出ていく異形の者たち。



「じゃあな、チドリ」



スゥッと消える彼等。その消えた姿を見続けるチドリと呼ばれた女性は思う。



(どうにかして兄さんを止めないと。でも、どうすれば・・・。そうだ、バイトをする人間と妖怪たちに頼めば)








                       ☆








神耀病院。

神耀町が誇る大病院である。様々な治療を施してくれる日本屈指の病院でもある。

その病院の入院室の305号室。部屋の扉には断切の名札がついていた。



「よう断切。容態は平気か? 後これ見舞いのフルーツ盛り」


「ありがとう。容態は大丈夫だよ。明後日には退院出来るって」



フードの付喪神に取り憑いていた彼女は戦いの後に意識を失った。その後すぐさま病院に搬送したのだ。

酷く疲労が見られたが身体に問題無く、後遺症も無いと診断され、順調に回復している。



「順調に回復してるなら良かったよ。ほら、リンゴを剥いてやる」



ショリショリとリンゴを剥く。



「じゃあ、ウサギカットにしてね。それが一番好きだから」


「リンゴ剥きの注文出来るなら元気だな」



馬城が笑う。断切もつられて笑う。元気の溢れる笑顔である。

操られていた時の彼女の印象は冷酷で大きなハサミで人間を切断するのもいとわない残酷さもあった。

今と比べると真逆な印象だ。



(操られていた時と全く違うな。こっちが本当の彼女なんだな)



リンゴをウサギカットに剥き、断切に渡す。

断切は美味しそう食べる。食欲もあるようだ。美味しそうに食べる元気があるなら、いよいよ退院出来るだろう。猫柳はジィっと見る。操られている時と美味しそうに食べる姿はやはり全く違う。



「何? そうやって見つめられると食べづらいんだけど」


「ん? ああ、悪いな。操られていた時と今じゃ全然違うなって思ってさ」


「そりゃそうだよ。あのフードのせいで、したくもない事を強制的に命令させられて嫌だったんだから。・・・でも神馬をバラバラにしたのは事実。ごめんなさい」



断切は馬城の隣りにいる穀菜に顔を向け、誠心誠意で謝罪をする。神馬を殺した罪は消えない。今彼女が出来るのは謝罪しかないのだ。



「断切殿が実は優しい人間で良かった。断切殿は操られていたとはいえ、神馬を殺したのは事実です。しかしあなたは自分の罪を認めて、謝罪をしてくれた。責める事なんて出来ません。今度神馬の供養に来てください。」


「はい。必ず行きます」



穀菜の優しい笑顔の返しで安心する。断切には恨みの1つも無いようだ。



「そうだ。これ返しとく。お前のだからな」



ハサミを断切に渡す。これは、あの大きなハサミであるチョキだ。

渡した瞬間カタカタと震え、嬉しさを現している。



「あ、チョキ!! 良かった、処分されたかと思ったよ」


「そいつは穢れてはいなかったからな。処分も何もしない。それに、そいつは今までお前の心配ばっかだったぞ。おかげで聞きたい事も聞けん」



銀陽がお見舞いのバナナをモサモサと食べながら、断切の寝ているベッドに座り込む。



「私のバナナが。何勝手に食べてんの」


「良いじゃないか。減るもんじゃないし」


「現在進行形で減ってるつーの」



馬城が的確なツッコミをする。

そんなの気にせずに2本目のバナナを食べる銀陽であった。



「さて、今日はお前の見舞いが目的だが、もうひとつ目的がある」


「分かってる。私の後ろにいる奴らの事でしょ」


「話が早くてなによりだ。では詳しく話してもらいたい」


「うん。まず、チョキとフードの付喪神と出会った所からだね」



彼女がチョキたちと出会ったのは、ある骨董品店。友達と興味本意で覗いた所、骨董品以外に様々な物が売っており、その中でチョキを選んで買った。



「今時の女子がハサミを買うなんて珍しいな。そもそも、骨董品店に入るのもな」


「言ったでしょ。興味本意。そんでもって私はこれでも美容院の娘で、ハサミ集めが趣味なの」


「これまた珍しい趣味で」


「馬城殿、人の趣味は人それぞれですよ」


「まあな」


「続きは?」


「えーと、チョキを買った後、外で刀を持った女性がいた。最初は銃刀法違反!? て驚いたけど、レプリカって言われたっけ」


(刀を持った女性か・・・)



刀を持った女性にオマケと言われ、フードをタダで貰った。これがフードの付喪神であった。

その日の夜。さっそく、買った者が付喪神だという事に気付き心底驚いた。この時は操られるとは思っていなかった。彼等とは友達になったのだ。

それからバイトの事を聞かされ、参加した。順調にバイトをこなしていた時に刀を持った女性に久しぶりに出会った。



「彼女は合格と言ってた。合格って言った意味は、たぶん私が使えるって事でしょうね。計画準備の」


「その部分を詳しく聞きたい」


「分かってるって。・・・刀を持った女性に会った時かな。私がフードの付喪神に操られたのは。こっから先は操られていたせいで記憶が若干途切れ途切れだけど・・・」



刀を持った女性はフードの付喪神に刀華(とうか)と呼ばれているらしい。彼女からまず命令を受けたのは神耀町でバイトの連中を引き付ける怪奇事件を起こせという内容だった。



「それが神馬バラバラ事件ってやつか」


「そう。何でも神耀町のある場所にある物を設置するためのカモフラージュだって」


「その場所と物ってのは何だ?」


「ごみ処理場。物はスピーカーに画面の大きいパソコンだったかな?」


「おいおい。ただのごみ捨てじゃないだろうな。ごみ処理場に物を設置しに行くなんて捨てるのと一緒だと思うんだが」


(さっそく調査に行ってみるか)



さらに詳しく聞くと設置したのは神耀町だけでなく、他の町や市にも設置したの事。その範囲は関東地方だという事だ。



「 広いな!?」


「操られていたとはいえ、旅行した気分だったよ。そしてあんた達を狙ったのは計画の邪魔者にリストアップになったから。神馬のバラバラ事件をまだ調査していると報告を受け、どうにかしようとしたんだ。計画に気付かれないようにまた怪奇事件を起こす事でね」


「それが髪切り事件と未遂で終わった明頼高校のハサミですか」


「そう。髪切り事件は刀華が起こさせ、私は明頼高校の方を担当していた。元々、私は明頼高校の学生だし」



猫柳たちは髪切りは事件を解決し、明頼高校での怪奇事件を未遂に防いだ。

その事でさらに邪魔者として目をつけられた彼等を本気で始末しようと考え、次に起こした怪奇事件がオルゴールであったのだ。



「オルゴールの付喪神はお前が羊島に渡したのか?」


「そうよ。あんた達の関係者に渡すのが1番だからね」


「計画に支障を来たす者は排除ってか」


「うん。そして私も出向いた。あんた逹に対してオルゴールの付喪神だけじゃ足りないと思ってね。結局は負けて良かったけどね」


「で、今はここに至ると。では今度は質問をする。計画についてだ」


「 あー。それなんだけど、詳しくは知らないんだよね・・・」



バツが悪そうな顔で答える。

彼女は計画の準備をさせられていたが、詳細は知らされていなかった。もしかしたらフード付喪神は知っていたかも知れないが、銀陽が切り裂いてしまったため話す事は出来ない。



「切り裂くの失敗だったか。とりあえず次の質問だ。そいつらの親玉である王と呼ばれている奴は知っているか?」


「ゴメン。それも分からない。命令の伝達はずっと刀華だったから王様と呼ばれる人には会っていないんだ」


「人前には姿を現さないって事か。他に仲間はいるか?」


「私が出会ったのは刀華以外に鏡子って呼ばれた少女かな」


「鏡子? 人間か妖怪か?」


「妖怪かな。姿が大きな鏡に映った着物の少女だったし」



さらに詳しくすると、ただ鏡に映っている少女ではない。最初から鏡に映っているらしい。

鏡に人や物が映るなら、鏡の前に対象がなければならない。断切が言うには、その映った少女は大きな鏡の前にいなかった。分かりやすい例えなら、鏡の中に少女がいるという表現が1番だ。



「鏡の妖怪ですか。特定がしやすいですね」



穀菜は鏡の妖怪が何か分かるようだ。そのまま思案顔になる。



(鏡の妖怪と言えば、彼らくらいですね。鋏にフード、鏡。もしかしたら刀の彼女もそうかもしれません。そして彼らの王と言えば・・・)


「ふむ。最後の質問だ。このハサミを買った場所はどこだ? 付喪神が売っている骨董品店なんて怪しいからな」



銀陽がチョキを手に取り、クルクル回す。



「チョキはゴールデンウィークの旅行先で買ったんだ。場所は静岡」


「富士山が有名だよな。他にも特産品がたくさんあるし」



猫柳からメモを受け取り、骨董品店の詳細を記していく。

静岡のどこにあるか、店の特徴など。



「はい。書いたよ。あとりんご、おかわり」


「サンキュー。またウサギカットか?」


「もちろん」



要望を応えようとりんごを剥こうとしたが、りんごが無かった。おかしい。りんごをいくつも買ったはずなのだがと思う猫柳だが、すぐに犯人が分かる。



「ごちそうさま。私もおかわりが欲しいな」


「こ、この銀猫、私のお見舞いのフルーツが全部食われた・・・」


(質問しながら果物を食ってたからな)



口には出さない馬城。

あの猫サイズの胃袋によく入ったと感心しながら見ていたのだ。良い食いっぷりには目を奪われる。



「猫柳殿。これを」



穀菜がりんごを1個を渡してくれる。

実は銀陽に全部食われないように隠し持っていたのだ。



「りんごのおかわりが来たな」


「私のだから」



銀陽に食われないように注意しながらウサギカットに剥く。



「話は変わるが、そのハサミは大丈夫なのか?」



黙って聞いていた馬城が質問する。

穢れが無いとはいえ、チョキも計画に携わっている。計画は成功させたいのではないのだろうか。



「大丈夫だよ。元々チョキは私と同じで計画とか知らないし。それに計画準備も私が操られた事で強制的だったしね」


「そうだな。最初も言ったがそいつは穢れは無い。フードの付喪神に断切が取り込まれた時は命令よりも私たちに助けを求めたくらいだしな。そいつ自身、計画に興味が無いかもな」


「りんごが剥けたぞ」


「うむ。いただく」


「銀陽、お前のじゃないから」



銀陽の首根っこを掴み、りんごを食わせないようにする。

そのうちにりんごを断切に渡す。



「ありがとう。それにしても銀猫はすごい食意地だね」


「もういつもの事だ」



シャクッ。美味しそうにりんごを食べる。

その姿をまたもジッと見つめる猫柳。



「ん? また見つめて今度は何? シャクシャク」


「操られていた時よりも、今の明るい断切の方が可愛いなって思っただけだ」


「うにゃ!? え、ちょっ・・・」


りんごを食べるのを止め、顔が赤くなる。まるでりんごのようだ。



「そ、そう。・・・シャクシャク」


(え? 何々? 今のでフラグ建ったのか? 猫柳何やったんだ?)


「どうした断切? 顔が少し赤いぞ」


「 だ、大丈夫だから。・・・シャクシャク」


(すごいですね猫柳殿。さっきの言葉は彼女の胸に響いているようです。・・・しかし、可愛いと言われただけでとは、彼女は惚れやすいのですかね?)


(うう。いきなり面と向かって、可愛いなんて言われたのは初めてだよ・・・。ていうか何で今のドキドキしてんのよ私は)


(おいおい。犬坂に羊島と続いて断切もかよ・・・)



恋とはいつ生まれるか分からないものである。

読んでくれてありがとうございました。

感想など待っています!!


断切は実は明るい女の子でした。

入院中ですけどね

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