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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
8章:オルゴールの館
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2手に分かれたチームの動向

猫柳と馬城の特攻しようぜチーム。

オルゴールの音色が延々と流れる廊下を歩き続けている。そして目に映る扉を開け続ける。

扉を開けるとたまにハズレなんて張り紙がある時があり、イラつかされる事もある。それでも我慢しながら羊島を探し続けるしかない。



「ここが最後の扉だぞ。それ以外はハズレだったり、空室だったからな」



ガチャっと開けるとその部屋はキッチンであった。さすがお嬢様の家。様々な料理道具が揃っていた。

それを見た馬城は興奮する。



「うおぉぉぉぉ!! さすが羊島の家。何でも揃ってんな」


「目的を忘れてはいけませんよ馬城殿。先を急ぎましょう」


「分かってるって」



キッチン部屋の奥に新たな扉がある。開けようとするが開かない。



「開かないぞ。ふんぎぎぎぎぎぎ!!!!」



力任せで無理矢理に扉を開けようとするが無理だった。



「これ以上進めないのか? なら優たちの方向に戻るか」



来た道を返そうとした時に銀陽から引き止められる。



「おい。この張り紙を見ろ。面白い事が書いてあるぞ」



銀陽が見つけた張り紙を見せてくれる。そこに書いてあったのは、料理を作れ、さすれば開くと書いてあった。これは料理を作れば扉が開くという事かもしれない。


「飯を作れと。時間が惜しいって時に時間稼ぎのような事をさせられるとは・・・。」


「仕方ありません。猫柳殿、ここは先へ進むために指示通りにしましょう」


「よし。ここはおれに任せろ!! 弁当屋を腕を見せてやるぜ」



調理道具はあり、調味料もある。あとは食材だけだ。

冷蔵庫を開けようとしたが開かない。これは冷蔵庫の中の食材を使うなという事かもしれない。



「どこかに食材はないか?」


「ここにある。これを使うといいぞ」



銀陽が持ってきてくれた食材は見た事も無い食材であった。

見た目美味しそうな食材から、いかにも毒々しい食材まで揃っている。料理を作ろうと息巻いたが謎の食材で何を作れば分からなくなってしまう。



「これ食えるのか? 食えそうな物はあるが、これなんか毒々しいぞ」



猫柳が掴んだ食材は紫色の木の実だか野菜だかよく分からない物であった。

この食材を見て食べようとは思えない。しかし食材がこれ等しかなにので、これで作るしかない。



「とりあえず、洗うか」


「何作る? ていうか作れるか?」


「メニューは特に限定されてねえから、時間短縮のために簡単なやつにする。チャーハンでいいか」



炒飯に絶対必要なのは米。金色の米があるので炊き始める。

その内に他の食材の下準備を始める。未知の食材を切る時、最初どこから切ればいいか分からなくなるのは誰もが同じであり、猫柳たちそうであった。



「とりあえず、一口サイズに切ればいいか」


「おう。切ってくれ。おれは肉を切るからよ」


「うわ!? ネギっぽいのを切ったら中から青い液体が出てきたぞ!?」


「何だそれ!?」



猫柳たちが謎の食材と格闘している中、その姿を見ながら銀陽と穀菜は情報をまとめていた。



「今回の怪奇だがどう思う? 人様の家を妖怪空間にするとは目立ちやがりな奴だ」


「そうですね。ここはむしろ見つけてくれと言っているような空間でしょう。人間の家を妖怪空間にするとは何か目的があるかもしれません」


「もしくはこの家に怨みでもあるのか。あったとしても同情せずにぶっ飛ばすがな」


「それが正解ですよ。妖怪は何をしでかすか分かりませんから」



妖怪は人間の理解を超える怪奇で異常な現象を起こす存在である。

何をしでかすか分からない。分かるのは人の理解を超えるような斜め上の考えを持つ人物だけだ。



「とりあえず分かる事は・・・この妖怪空間の主は面倒くさい奴だろうな。こんな時間稼ぎだが何だか分からない事させるんだからな」


「誰かの入れ知恵、という事は考えられると思いますか?」


「この妖怪空間に他にも誰かがいるという事か?」


「はい。ですが考えすぎですかね」


「妖怪には面倒くさい奴もいるし、イタズラ好きの奴もいる。だが、何も1匹というわけでも無い。可能性はあるぞ」



今までの妖怪空間は1体の妖怪が支配していた。たまによく分からない妖怪などが集まり襲ってくるような事はあった。だが穀菜は複数で怪奇を起こしていると考えているのだ。銀陽の言う通り、可能性はある。猫柳たちは今まで1体の妖怪空間を支配している妖怪と出会っていた。これからは複数の妖怪がいるという事も考えねばならない。



「こっちで足止めをくらっているのだ。蛇津たちの方も足止めをくらっているだろうな」


「そうでしょう。足止めをくらい、歯がゆいです。早く馬城たちの学友を助けないといけないのに。・・・おや? 料理が完成したようですよ」


「何!? さっそく私が味見しよう!!」



料理を持った猫柳をに突っ込む銀陽。味見と言っているが全部食われそうなので猫柳と馬城が必死に守っている。


「うおー!! 食うな銀陽。せっかく渾身の出来のが食われるぅぅぅ!!」


「何を言う!! 料理は味見してこそだろう。それに何だその料理は? 金色に緑に紫にカラフルじゃないか。だから味見は必要だ!!」


「猫柳殿も大変ですね。・・・おや?」



ガチャッ。何かの鍵が開くような音が聞こえる。その音の発生源は開かない扉からであった。

料理が完成した時に扉が開く仕組みのようだ。


「これで次に進めますね。急ぎましょう。白羅殿たちも気になりますが、彼女たちなら大丈夫でしょう」



穀菜が心配する白羅たちも実は足止めをくらっていた。

蛇津、犬坂、兎姫のある意味ハーレムチーム。

彼等がいるのは書庫であった。広い部屋一面に並ぶ本を見ていると、さながら図書館にいる気分になる。



「マンガは無いかナー?」


「見た所無いです。そもそもこの本は妖怪空間によって創られたものです」



卯月が本を1冊手に取り、開くと中身はハズレと書かれていた。

中には本物もあるが、半分以上が偽物だ。



「これも偽物だ。えーと、バカって書かれている」


「こっちは、あれ? これクロ宛かな。やーい、妖怪犬って書いてある」


「何だと!? 見せろ犬坂」



見ると確かに書かれていた。個人宛に書かれている本が紛れているかもしれない。しかしここまでピンポイントだとは思わなかった。クロはその本を噛み千切っている。



「おのれ。こんな本など噛み千切ってやるぜ。そして俺様は妖怪ではなく神だ」


「落ち着いてくださいです。たかが本のイタズラです」


「ア、コノ本はウヅキ宛ダ」


「え? です。 何て書かれてるです?」


「ですです、うるさいっテ書かれてル」



本を見せると落ち込む卯月。

だって話し方は仕方ないです、と小さくつぶやいている。

そんな卯月の頭を撫でる兎姫であった。



「さて、残るは白羅達だけだぜ。お前等も読め。後これ犬坂宛だぜ」


「うえ。・・・何て?」


「好きならさっさと猫野郎に告白し」



スパーンッ!! と本を蹴り飛ばす。犬坂の顔は少し赤い気がする。



「いきなり蹴るな」


「ごめん。条件反射で身体が勝手に動いた」


「ほれ、次は兎姫だぜ。読め」


「ワタシ? エート、カタコトで話してるけとキャラ作りでしょ・・・って書かれてル」



一呼吸置いてから。



「うん。そうだよ」


「普通に話したです」



自分のキャラを肯定する。

そして、その本を静かに本棚に戻した。



「おら。次はさっきから黙々と本を読んでいる白羅だ。読みやがれ」


「私のもあるの?」



この書庫に入ってから、会話に参加せずに本を読んでいた白羅。

クロから本を渡され開く。本に書かれていた文字はというと。



「大人気ないので恋は諦めろ。・・・て書いてあるわ。何これ? 嫌に決まってるじゃない」



読み終わったら、普通に明後日の方向に投げる。



「白羅と兎姫には堪えないようだな。最後は蛇津だぜ。読め」


「クロさんはさっきから、ピンポイントで本を見つけられますね。そして誰宛か分かるんだ」


「内容を見ればすぐに分かる。で、何が書いてあるか読め」


「えーと、何々・・・白蛇と金髪のどっちが好き? って書いてある。何これ?」



読み終わった瞬間、蛇津は背後から熱い視線を感じる。振り向いたら何かが始まる気がすると直感が警戒しているのだ。後ろは振り向けない。

パタンと本を閉じ、本棚に戻す。そして早歩きで書庫の奥へと進む。



「早く行こう。こんな所に居ても時間が勿体ない。羊島さんを助けに行かないと!!」



さらに早歩きで進む。それでも背後からの熱い視線は消えない。



「ほぅ。蛇津のも面白いではないか。後で面白く手伝ってやろうか」


「クロさぁ。その内に痛い目に会うと思うよ」


「そんな事はないぜ」


「下世話の神犬め」



奥へと進むと大きな扉があった。貼り紙も一緒に貼ってあり、本の飛び出し注意!! と書かれていた。



「何これ? 本の飛び出し注意?」


「そのままの意味じゃないか?」



扉を開けると、貼り紙に書かれていた言葉の意味が理解出来た。確かにそのままの意味であったのだ。

次の部屋はまた書庫。左右に本棚があり、その本棚から本が飛び出している。しかも本はどれも分厚い本ばかりで、当たったら痛そうだ。



「本が右から左へ、左から右へと飛び出しているね。わりと高速で」


「ウン。本に当たったらイタイ」


「でも、これくらいなら避けながら進める」



犬坂が余裕そうに言うとクロと一緒に本が飛び交う中に走り出す。

飛び交う複数の本をアクション映画顔負けの動きで避けていった。そして奥にある扉まで到達する。


「ま、こんなものね」


「「オォー!!」」



パチパチと拍手が鳴り響く。

クロも頷きながら犬坂の身体能力の高さに高評価している。



「次はオレが行くよ」



今度は蛇津が白羅と共に飛び交う本の中に早歩きで進む。いつ本が左右を警戒しながら進めなければならない。だが、ここでも拍手がありそうな事が起きている。幸運と言うべきか、蛇津たちに本がかすりもしない。避けているわけではない。普通に飛び交う本の中を散歩しているようだ。結局、最後まで本にかすりもせずに奥の扉へと到達出来た。



「すごいの一言しかないんだけど。白羅さん何かした?」


「私は何もしてないわ。爛ちゃんの言う通り、優君はすごいのよ」


「オレは何もしてないけど。ただ警戒しながら早歩きで進んだだけだよ」


「それが凄いんだ。蛇津は幸運、いや豪運を持っているんだな。これだけの豪運を持つ人間はそうそういないぜ」



蛇津の幸運を見せつけた所で残るは兎姫と卯月だけだ。

解決案ならあると蛇津たちに叫んでいる。その解決案とは。



「頼むよウヅキ!!」



卯月をガッシリと抱え込み、ゆっくりと歩き出す



「月地重転です!!」



卯月を中心に重力が変化する。すると飛び交う本が上へと浮かんでいく。



「ほぅ、便利な能力だな。重力変化か、頼もしいぜ」



またもクロからの高評価。

これで全員が本の飛び交う部屋を突破した。この先もトラップのような部屋があるかもしれない。さらに警戒しながら進む。







                         ☆








(恐い・・・身体が動かない。身体には酷く疲労感が襲い掛かる。私は何も出来ない。助けて・・・お母様、お父様。うう、恐い・・・。あの時みたいに助けて・・・猫柳君)



大きな部屋の中心にあるベッドで横たわる少女。自分自身に起きている状況を理解出来ずに怯える。

ベッドの横にある机の上に置いてあるオルゴールは儚げな音色を流し続けている。

このオルゴールこそが原因だ。このオルゴールの音色を聴いていると身体が弱っていく感じがするのだ。少女は羊のヌイグルミを強く抱き締め、恐怖を払拭しようのする。



「眠り姫みたい。すやすやと寝てるのか、恐怖でビクビクと固まってるのかな?」



クスクスと笑いながら眠っている少女である羊島を見るフードを被った少女。手には大きなハサミを持っている。羊島は薄目で見るが、その少女には見覚えが無く、知らない人であった。

知らない少女が大きなハサミを持ち、自分を見つめてくる。このような状況ならば殺されてしまうと誰もが思うだろう。



「さて、バイトの連中がそろそろ来るかもしれない。相手は2手に分かれて眠り姫を探してるから片方が来るか。こっちの部屋は任せた」



大きなハサミを持った少女は部屋から出て行く。少女の言ったバイトの連中という言葉。

羊島は誰かが助けに来てくれたと、希望の言葉に聞こえる。

それと同時に気になる事も聞こえた。それは、こっとの部屋は任せたという言葉だ。任せたという言葉は自分以外の誰かに言う言葉である。この事から部屋には羊島以外に誰かいる事になる。

薄目で部屋を見るが誰もいない。不気味さだけが羊島に残るのであった。



(助けて・・・猫柳君)

読んでくれてありがとうございます!!


今回は2手に分かれたチームはこんな事をやっていたよ!!という話です。

猫柳たち・・・料理してる時間あるの?(指示だから仕方ないけど)

完成した料理は(炒飯のような物)は銀陽が食べました。

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