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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
8章:オルゴールの館
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オルゴールの館

羊島の家。

いかにも、お金持ちの家と言わんばかりに大きく、綺麗な家だった。広い庭まである。テレビでお金持ちの家特集なんて番組に出ていそうだと思ってしまう。



「お嬢様だって知ってたけど、この家を見ると再度確認出来るよね。あたしもこんな家に住んでみたいな」


「おれも同じく。まあ、それは置いといて。早く見舞いしに行こうぜ」



インターホンのボタンを押す。



「羊島ー。あーそびーましょー」


「違うでしょ!!」



スパーンッと馬城の頭が叩かれる。何とも良い音が鳴った。馬城は頭を抑えながらうずくまる。そして羊島の家は無反応。



「呆れられて無視されちゃったじゃない。普通にイタズラだと思われてんじゃないの?」


「悪い悪い。ちょっとふざけちった。元気な友達アピールしようと思ってさ」


「でもおかしくないか? 普通に無視すっかな。遊ぼうって言われたら、まず相手は羊島の友達だって分かってくれると思うんだが」



猫柳の言う通りだろう。家のインターホンを鳴らされて、遊ぼうと言われたら相手はその家の誰かの友達だと思うはずだ。良識のある家族なら無視なんてせずに返事がある。羊島の家族なら良識があるだろう。ドラマみたいにお嬢様にはお嬢様らしい友人としか付き合わないなんて事は無いはずだ。もし、そうならば羊島はお嬢様学校に行っている。



「もう1回インターホンを押してみるか。・・・こんにちは、羊島さんのお見舞いに来ました。友人の猫柳です」



今度は礼儀正しく、訪問に来た理由を簡潔に答える。しかし、それでも返事は返ってこない。



「あれ? 返事ない。ギンはちゃんとしてるのに。おかしいわ、確か羊島さんのお母さんは基本的に居るって聞いたし、家政婦さんも雇ってるって言ってたから誰かしら居るはずなんだけど」



全く返事が無いのが気になり、失礼だか勝手に敷地内に猫柳が入り込む。

すると、猫柳が消えた。



「あれ?ギンが消えた?」



そして猫柳が急に出現する。それが繰り返し続き、戻ってくる。

顔には驚きが現れている。



「この感覚、間違いない。妖怪空間だ」


「ちょっと待って。羊島さんの家が妖怪空間になってるって事!?」



羊島の家を見返すが、立派な大きな家しか目に映らない。敷地内に入れば分かると言われ、その言葉を信じて入り込むと、空間が変わり羊島の家が機械仕掛けの家になっていた。家からは音色が流れてきており、まるで巨大なオルゴールのようだった。



「うそでしょ!? 何で・・・」


「分からない。でも、何かに巻き込まれたのかもしれない」


「助けに行かないと!!」


「ああ!! 行くぞ」



羊島を助けに突入しようとした時、後ろから引っ張られ、妖怪空間から戻される。



「落ち着いて2人共。羊島さんを救出したい気持ちは分かるけど、このまま行っても危険だよ」



今、銀陽たちはいない。さらに力も無いのだ。今までの怪奇事件を解決してきたとはいえ、それは銀陽たちの力があってこそだ。



「まずは連絡する事からだよ」


「よし任せろ!! おれは穀菜の電話番号を・・・」


「デモ確か神サマに電話って繋げられタ?神サマの方からしかの一方通行だったようナ」


「そうだった・・・」



膝と手を地面につき、落ち込むポーズをする。



「そういえば白羅は? 確かいつも優の服の中にいなかったっけ?」


「ゴメン。今日に限っていないんだ」


「何とも間の悪い。どうするか・・・。俺の中に銀陽の力が残っていれば、どうにかなったんだけどな」



銀陽たちの力が残っていれば、すぐさまに羊島を助けに行きたい所だが力は無い。友達が危険な目にあっているかもしれないという時に助ける力が無いとは歯痒い気持ちになってしまう。



(どうする? このまま妖怪空間に入り込むべきか。今までの経験から多少は慣れてきたが、それでも無謀すぎる。何か方法は無いのか。妖怪・・・いや、神なら俺らの声が届いて欲しい。ん? 声?)



猫柳が何かを思いついた顔する。その顔はそのまま蛇津に向けられた。



「何だい?」


「なぁ、優なら白羅を呼べるんじゃないか? 白羅だって神だ。何で優にベタ惚れしてるかは知らないが、優の声が届くんじゃないか?」


「まさか、と言いたい所だけど神様だからね。不可能では無いと思う。でも届くかな?」


「白羅さん好きですって言ってみてくれ。声が届くために大きな声で」


「ええ!? 恥ずかしいよ!!」


「羊島のためだ。恥ずかしいとか言ってらんねえぞ」



馬城まで催促する。

彼の言葉は正しい。人命が掛かっているのだ。恥ずかしいとか言っている場合ではない。

救出のためにとはいえ、告白まがいの事をするとは思わなかったと口にする蛇津であった。

その様子をジト目で見る兎姫に気付いているのは犬坂だけであった。もちろん、兎姫がジト目の理由もだ。



(目の前で自分の好きな人が他の人に告白する姿なんてみたくないわよね)



ジト目で見られながら蛇津は真剣に告白の言葉を口にした。



「オレは、白羅さんの事が好きです。ここに来てください・・・」



蛇津の告白から数十秒。辺りは静かになる。



「・・・やっぱり届かな」


「優君。今の告白もう一度聞きたいわ」


「うわわ、白羅さん!? い、いつの間に!?」



白羅が蛇津の背後から強く抱き着いていた。一瞬の言葉だったので、いつ抱き着かれたのかが分からない。驚いている彼等に気にせずに白羅は蛇津の耳元に息を吹き掛け、舌で嘗め始める。

その光景は扇情的でアタフタしている蛇津以外が見いってしまったが、すぐさま我に反ったのは兎姫であった。



「ダメェェェ!! そこでArrêtヤメテェ!!」



蛇津を押し飛ばし、扇情的な雰囲気をぶち壊した。あのままだと、いろいろと蛇津の貞操が危険だと判断したのだ。



「ああん。せっかく良いところだっのに。ティアちゃんったら」


「良いトコロってドコまでイクつもりだったんダ!!」



そんな光景を見つめ、さすが大人の女性だと思う犬坂であった。白羅は神だが雰囲気は余裕のある大人の女性な感じがするのだ。すごいのを見たと呟いてしまう。



「ところで、男2人は何で体育座りしてるの?」


「何でも無い。少し座らさせてくれ」


「少し経てば直るから」



蛇津に絡んでいる白羅の扇情的で艶やかさに反応する思春期男子に理由を話すのは酷であろう。同じ理由で蛇津も何かを隠すようにうずくまるのであった。


一悶着があったが今までの内容を白羅に話す。



「なるほどね。確かにこの家は妖怪空間になっているわ。妖怪のイタズラか、もしくは作為的なものか」



人差し指を自分の額に当て、目を瞑り始めた。そしてその動作はすぐに終わった。

今のはクロや穀菜に念話で今起きている怪奇について話したのだ。クロたちはすぐに駆けつけると言う。



「来たぜ」


「来ましたよ」



もう既に来ていた。さすが神。念話が終わってから数秒も経っていないというのに、さすがの一言だ。



「すごい。やっぱり神様ね」


「まあな。後は卯月と銀陽だけか」


「卯月ならここにいるです」



穀菜の背中からヒョイと顔を出す。元々、穀菜と一緒にいたのだ。

これで今いないのは銀陽のみ。



「銀陽はどうした?」


「今飯食ってるって。まったく、早く来なさいよ」



なんとも銀陽らしいと思う猫柳。しかし今回は急いで欲しいのである作戦を実行する。

馬城から羊島にあげる弁当を1つもらい、大きな声で空に向かって叫ぶ。



「銀陽ぉぉぉ!! 上手い弁当があるから食いに来ぉぉぉい!!」


「食いに来たぞ!!」


「ほらな!!」



一瞬で猫柳の頭の上に現れる銀陽。近くで見ていたのではないかと疑う程の速さで来てくれた。

そして馬城に向かって、親指を立てた握り拳を突き出す。



「何がだ。まあ、おれの弁当ですぐに駆けつけてくれるのは嬉しいが」



全員が揃い、今度こそ羊島を救出しに妖怪空間に入り込む。


オルゴールの館。

羊島の家に入り込むとオルゴールの音色が聞こえてくる。家の中は妖怪空間であって異様な館の中だというのが正直な感想だ。

部屋に入る扉は歪な形をしており、廊下は迷路のように曲がりくねっている。あちらこちらには小さなオルゴールから大きなオルゴールが乱雑して置いてある。その全てのオルゴールから音色が出ている。よく見るとオルゴールの音色が止まると、自動でゼンマイが巻き直っている。

ここの妖怪空間はオルゴールの音色が延々と流れるようだ。様々な音色が流れるが不協和音には感じない。むしろ1つの音色のようになっている。時折ゼンマイを巻き直す音も良いアクセントとなっている。



「家の中は異様に広いし、オルゴールの音色が全方位から流れてくる。何か不気味」


「今までの妖怪空間も中々不気味だったけどな」



1番妖怪空間に入った猫柳。どの妖怪空間も人を恐れさせるための空間であった。もちろん例外もあるが、どれも不気味だったため慣れている。

しかし今回はこの妖怪空間に羊島が閉じ込められている。既に気持ちのどこかに焦りが滲み出ている。



「まずは羊島さんを見つけないといけない。部屋が多すぎて、どれが羊島の部屋か分からないから片っ端から開けて行くしかないかな」


「ヒメはゼッタイに奥の部屋にいるはずだヨ。ゲームとかだト、基本的に囚われのヒメは1番奥にいるモン」


「それはゲームの話です」



卯月は兎の言葉にツッコミを入れる。確かにゲームだとお姫様がダンジョンに囚われているとしたら、最奥地にいるのが定番だ。実際の所それでも可能性はあるが、できれば近くの部屋にいるのが1番だ。



「さてと、こんなに広いんですもの。手分けして探しましょう。善は急げとも言うわよ」



白羅が両手を合わせながらもっともな提案を出す。こんなにも広いのだ。手分けをするのが1番有効だろう。手分けして探すためにに組み合わせを決める。5人が静かに手を出し、掛け声と共に5人の手が表面と裏面に分かれる。そして組み合わせが決まった。

猫柳と馬城組の特攻しようぜチーム。蛇津、犬坂、兎姫組のある意味ハーレムチーム。



「蛇津が羨ましいぜ。ハーレムじゃないか、おれがそっちのチームに入りたかった」


「ここでも優の幸運が発動したか」


「クロがいるからハーレムではないよ。それに爛はこっちじゃなくてギンの方に・・・」


「ほ、ほら。さっさと羊島さん探しに行くよ」



蛇津が犬坂に引っ張られながら進んでいった。猫柳たちも逆の廊下へと進む。

読んでくれてありがとうございます。

何かあれば、感想とか待っています。


キャラが多いとセリフの構成とか難しいですね。

私としては猫柳たちにまだ仲間を増やそうと思ってます。

ではまた!!

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