オルゴール
今回の章で新たな女性ヒロインの追加です。
どんな女性かは読んで妄想してください(笑)
オルゴール。キレイな音色を出す小さな音箱である。
聞くだけで心が温かくなる不思議な機械仕掛けの楽器箱。
「良い音色だな。何か心が落ち着く感じがする。たまにはオルゴールを聴くの悪くないな」
「本当ね。しかも凝ったオルゴールだし、高いんじゃないの?」
「羊島はお嬢様で金持ちだから羨ましいぜ。おれん家の売上にも貢献してくれ!!」
「フフ。今度買いに行かせてもらいます」
オルゴールの持ち主であり、馬城の頼みを笑顔で返事をする小柄な少女の名前は羊島姫音。桃色の頭髪に大きなリボンがトレードマーク。
とても丁寧で礼儀正しく、ほんわりした性格のためクラスの皆からは癒し姫なんて呼ばれている。家は資産家のため、お嬢様。
「今度と言わず、今買ってくれ!! 弁当の種類あるぞ」
オルゴールの隣に弁当をいくつか出す。肉、魚、野菜をふんだんに使った弁当からヘルシー弁当、ガッツりと食べたい向けの弁当まである。
「ちょっと馬城。せっかくオルゴールの音色を聴いてるのに」
「オルゴールで心は温かくなっても腹は膨れない。そんな時に馬城屋の特製弁当をどうぞ!!」
「ワタシは買ウ買ウ。キャラベンあルー?」
「俺も買う。ガッツり肉弁当がいい」
「毎度あり!! あと、キャラベンは無い。羊島もどうだ?」
「私はお弁当を持ってますから、また今度にお願いします。そうですね、少食なので小さな弁当はありますか?」
「もちろんあるぜ。小腹が空いた用や少食人向けの弁当があるからな」
弁当を袋にしまい、他のクラスの生徒に売りに行く。どれも美味しそうなのですぐに売れるだろう。
オルゴールの方は流れる曲が静かに終わる。聴き終わるとしんみりとした気持ちになった。
「オルゴールの曲が止まると儚い感じっていうか、しんみりするよ」
「 それ分かるなー。オルゴールは曲が流れると心が温まって、終わるとしんみりするって感じ」
「じゃあ、もう一度曲を流しますか?」
オルゴールのゼンマイを巻き直す。巻き直す時にキリキリと音が出るのもオルゴールの醍醐味の1つだ。そのゼンマイを巻き直す小さな手を持つ羊島の姿は癒される。
「はい。巻き直しました」
何事にも率先して、1つ1つに一生懸命な彼女は周りに癒しを伝える。見ていても可愛く、守ってあげたくなる。
「癒されるな。ナデナデ」
羊島の頭を撫でる。最近、猫柳は撫で癖がついた。さらに彼女は身長的に撫でやすいので、尚更だった。
「あ、あの。猫柳さん」
「こら。羊島さんが可愛いからって撫でるのはダメでしょ。ナデナデ」
「爛だって撫でるじゃないか。ナデナデ」
「あうう」
両方から頭を撫でられて恥ずかしがる羊島。それを見てある意味癒される猫柳たちであった。
「ギンに爛も撫で過ぎだよ。そろそろ止めないと恥ずかしすぎて羊島さんが倒れちゃうんじゃないか」
「ユウユウ」
兎姫に脇腹をツンツンとつつかれる。案外くすぐったい。
「何?」
「ヒメをよく見て見テ」
「羊島さんを? ただ2人に撫でられて恥ずかしがって・・・なるほど」
蛇津が羊島をよく見ると、ただ恥ずかしがっているわけではなかった。上目遣いで猫柳を見つめている。その赤く染めている顔は何か想っている顔だ。犬坂も本来なら気付くはずだが、羊島の後ろから頭を撫でているため気付かない。
「ギンってばいつの間に・・・。面白くなりそうだけど。ティア、今度羊島さんにそれとなく聞いてみて」
「イイヨ。ワタシも気になるシ。ナンカおもしろくなってきましター♪」
「にしても、本当にいつの間に・・・。流石としか言えないな」
オルゴールの音色が止まると同時にチャイムの鐘が鳴る。次の授業を受け終われば昼休みに入る。馬城から買った弁当を楽しみに待ちながら勉強する猫柳であった。
弁当はすぐに売り切れた。やはり昼飯前という事で学園の生徒たちが集まってくれて選び、買ってくれる。ただ売るだけでは駄目だ。時間帯や価格などを決めてを売り込まなければならない。
弁当が売り切れ、満足しながら馬城は教室に帰っていく。そろそろチャイムの鐘が鳴る時間だ。
しかし、電話のコール音が鳴る。相手は穀菜であった。
「もしもし。何だ? おれの通っている学園に明頼にあったハサミみたい物があったかの報告か?」
『はい。他にもあるのですが。どうでしたか?』
「探してみたが無かったぞ。猫柳たちに手伝ってもらって学園の隅から隅まで探したからな」
『そうですか、分かりました。それを聞いて安心しました』
「おう。それで他の件ってのは何だ?」
『前のもらった弁当が美味しかったので、また欲しいのですがよろしいですか?』
神が自分の弁当屋の弁当を美味しいと言ってくれた。これはまさに神にも認められた弁当と言えるだろう。これは正直に嬉しい。拳をグッと握り、嬉しさを噛み締める。もっと美味しい弁当を作ろうと意欲が湧いて来た。
「任せろ!! 何が良い? どんな弁当もあるぜ」
『そうですね。馬城殿のオススメでお願いします』
「よっしゃあ任せろ!! 美味しい弁当を持っていくぜ。舌を洗って待ってろよ」
『舌をあ、洗って? まあ、楽しみしてます』
電話を切ると同時にチャイムの鐘がなる。授業が始まるの急いで自分のクラスへと戻る馬城であった。
☆
何気ない日常を過ごしても必ず夜はやってくる。夜は何の時間と聞けば、寝る時間、遊ぶ時間、酒を飲む時間などと人によって様々な回答が返ってくるだろう。その中には変わった回答がある。その内の1つが何処かの高いビルの屋上にいる事だ。そこには二人の人物が夜の町の景色を見ていた。
1人は刀を持った女性であり、もう1人はフードで顔を隠し、1.6mのある大きなハサミを持つ人物であった。
「夜の町は綺麗だが汚い所もある。仲間の悲鳴が聞こえる。・・・そうだ、アレは渡してきたか? 神馬と髪切りの件で彼らは我々の計画の邪魔になりそうだ。今のうちに始末しておきたいな。」
大きなハサミを持つフードを被った人物が首を縦に振る。チャキ・・・と大きなハサミを閉じる音でも肯定の返事をする。片手にはクレープをもってモグモグと食べていた。
「渡したなら大丈夫だ。でも最悪の場合は君にも出てもらう。バイトの連中はあれでも厄介だからな」
「モグモグ・・・分かった。その時はこのハサミで断ち切る。じゃあもう行くよ」
声からフードを被った人物は女性だというのが分かる。彼女は当たり前のようにビルから飛び降りた。
よく見ると他のビル上を次から次へと跳んでいた。
「彼女は役に立ちますね。あの2つを渡したかいがあります」
「君か。確かに彼女は役に立つよ。良い働きをしてくれる。そうだ。そっちの仕事は終わったのか鏡子?」
大人の人間が写る程の大きな鏡が背後にいた。鏡に写るは刀を持った女性ではなく、和服を着た少女であった。ビルの屋上には刀を持った女性しかいなく、鏡に写る和服の少女は何処にもいない。鏡のみに写っているのだ。その鏡に写る少女は鏡子と呼ばれているので、それが名前だろう。
「仕事は終わりました。計画に必要な仲間を確保しました。計画を話したら仲間は快く快諾してくれましたよ」
鏡に様々な機材が写し出される。スピーカー、スクリーン、プロジェクターなどだ。これだけ見ると映画でも作るのかと思ってしまう。
「では、富士の山まで持って行ってくれ。王が待っているのでな。彼らも王がに出会えるのだ。幸栄だろう」
「ええ。彼らは王様に会えるのを楽しみしています。私自身も王様に会えたのは感動しました。彼らにも私と同じ感動を味わってもらうために急ぎますか」
誰にも気付かれぬまま新たな怪奇事件が起ころうとしている。
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