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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
7章:髪切り事件
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2つの似たような事件

シャキン・・・・・。

何かを切る音が聞こえ、さらに女性の悲鳴も聞こえた。女性は悲鳴を上げながら走り出す。

シャカ・・・。

ハサミを閉じ、切った物を見る。それは女性の髪の毛であった。

ハサミを持った人物は女性の髪の毛をウットリと見つめる。



「んふふふ。きれいな髪の毛・・・」



れろぉ・・・と女性の髪の毛を口に含む。

正直これだけでは変質者である。



「もっと欲しい・・・」


「・・・髪の毛など美味いか?」


「んん!?」



変質者は背後から聞こえた声に向かって、持っていたハサミを投げつける。

ガキッ!!

硬い何かに当たったような音が響く。変質者が見たのはハサミを歯で噛み止めていた銀猫の銀陽であった。



「ハサミなんて食えない物を投げるな。・・・さて、妖怪であるお前に聞きたい事があるんだが」



銀陽は変質者を妖怪と言った。どうやら変質者は人間ではない。

それを聞いた瞬間、変質者の右手が大きなハサミへと変形した。



「その大きなハサミ関係について聞きたい」



銀陽の言葉など無視し、右手の大きなハサミを振り回し、切断しようとしてくる。



「危ないではないか・・・!?」



目の前が黒く染まる。

これは変質者が切っていたであろう人間の髪の毛がばら撒かれたのだ。



「鬱陶しい」



猫の手で空気を掴み、目の前にばら撒かれた髪の毛に向かって投げ、吹き飛ばした。

そして大きなハサミが襲い掛かってくるのに身構える。



「ん? ・・・来ないな」



大きなハサミが襲い掛かってくるに身構えていたが、襲ってこない。

そもそも変質者が消えていた。



「さっきの髪の毛はただの囮みたいなもんか」



逃げるために髪の毛をばら撒いた。銀陽は舌打ちをする。逃がしたからだ。



「何か食ってから帰るか」



そう呟くと夜の町に消える。








                         ☆








休み時間。授業で習った問題を復習するのも良し、仮眠を取るのも良し、友達と話すのも良しも時間帯である。そんな休み時間はある事件の噂で持ちきりであった。



「また変質者が出たってよ。物騒だな」


「あーやだやだ。早く捕まんないかな」




長髪の男女を狙う変質者が起こす事件に名前が付いた。

髪切り事件。そのまま名前がついた事件である。



「本当にあたし自ら捕まえに行こうかしら。クロもいれば完璧だし」


「手伝うヨ」



犬坂の肩に手を置く兎姫。

同じ自慢の髪の毛を持つ女性として犬坂の意見に同意している。

前に髪切り事件の話を聞いてから妙な気合が入っている。背後に何か見える気がする。



「すごい気合だ。髪切り事件の犯人が捕まらないと本当に自ら捕まえに行きそうだ・・・」


「アハハ・・・こういう時に女性は恐いって言うよね」


「ムグムグ・・・麦饅頭食うか?」



馬城が麦饅頭を差し出す。これは穀菜からもらった饅頭だと言っている。

小腹が空いている時には丁度良いお菓子である。2人は声をそろえて答える。



「「いただきます」」



麦饅頭をモグリと一口で食べる。

それを区切りに馬城が話し出す。



「神馬をバラバラした犯人なんだが・・妖気を感じたつー事で妖怪と思っていたんだが。可能性として人間もあるって話も出てきたんだ」


「あの時のハサミか。でもあのハサミを持っていた腕は人間の腕には見えなかったがな」



怪馬の怪奇で見たハサミを持った腕は人間の腕ではなかった。それなのに人間である可能性があると言う。しかし可能性が無いと言うわけではない。それは猫柳たちと同じ妖怪や神と手を組んだ人間であるという事だ。



「もしオレ等と同じならおかしいね。バイトは怪奇を解決するのに、逆に怪奇を起こすなんて」



バイトは怪奇を解決するためには人間が妖怪、神と手を組む事で行われる。だが解決するのでは無く、怪奇起こすとは逆になっている。馬城の話をまとめると神馬をバラバラをしたのは妖怪だけでなく人間も関わっていると言う事だ。可能性が無いわけではない、人間も妖怪の力を借りれば超常的な力を使える。



「実際、オレ等だけでなく数多目たちのように同業者がいるから、バイトをしている人は日本中にいるかもね。そもそもこの町にもオレ等以外にいる可能性だってある。」


「あまため?」


「そういえば馬城は知らなかったな。実は前にガチンコバトルした事があったんだ」


「おもしろそうじゃねえか」


「痛いだけだよ・・・・・」



猫柳と蛇津はその時を思い出しながら遠い目をする。痛いという発言をする蛇津は身体を擦っていた。

馬城はそれでもガチンコバトルという言葉に反応してか、羨ましそうに思っている。



「霧骨たちみたいのがいれば、戦う事があるかもな」



前のバイト同業者との戦いを細かく説明した。説明すれば説明する程、馬城の食い付きが良くなってくる。猫柳たちの戦いの経験から人間と妖怪が手を組むと手強い相手となる。もし神馬をバラバラにした犯人が妖怪と手を組んだ人間ならば厄介である。



「もしそうならば、目的は分からないけど注意しないとな」


「目的云々の前に手詰まりなんだけどね。手掛かりが大きなハサミと黒い腕だけじゃ特定も難しいよ。確かな情報が欲しい」


「優の言う通りだな。ただ探すだけじゃ途方も無いぞ」



唸る猫柳たち。情報が少なすぎるため行動にも移せない。聞き込みをしたい所だが普通に町行く人に大きなハサミを持った人物を知っている等と言えるはずもないのだ。



「銀陽たちが他の妖怪仲間に聞き込みをしているらしいから、それを待つしかないな」


「本来ならそういう仕事はおれらの仕事らしいけどな。でもおれらはおれらで、出来る事をやるしかない。それを考えないとな」



麦饅頭を口に含む。もぐもぐと噛み、飲み込む。

最後の麦饅頭が机に残り、3人は無言で拳を構えだす。



「「「じゃんけん・・・ポン!!!!」」」



あいこ。

決着が引き延ばされ、次の拳を構える。麦饅頭1つだけで謎の真剣さをかもし出す男子3人。

こんなくだらない真剣さもたまには良いかもしれない。息抜き程度に良いかもしれないが、周りの反応は分からない。



「「「じゃんけん・・」」」


「いただくわ」



じゃんけんをする男子3人の真横から腕が伸び、麦饅頭を掠め取られる。そして麦饅頭は犬坂の口に放り込まれる。



「「「あ・・・」」」


「ワタシの分ハ? ・・・・・ナイネ」


「最後の麦饅頭が・・・まあいいか。で、何だ? 何か情報でもあるのか?」


「手伝って欲しいの」


「手伝って欲しいって・・・まさか変質者捕獲って言うんじゃないだろうな」


「そのマサカだヨ!!」




髪切り事件に対する熱がさらにヒートアップしている女子2人。熱を冷まさせるために宥める蛇津だが、全く冷める様子が無い。本当に髪切り事件の犯人を捕獲しに行くまでになるとはと、猫柳が思う。



「犬坂、止めとけ。変質者に関して警察に任せとけよ。おれらの出る幕じゃねえぞ」


「それは安心して、そっちは警察に任せるから。あたしたちがやるのは退治よ」


「まさか・・・」



犬坂の話を聞くと髪切り事件とは別に、似たような事件が起きているらしい。

長髪の男女が狙われるのまでは同じなのだが、そこ以外は違う。髪切り事件はハサミで髪を切られるが、新しい方の事件は黒い物体に噛み千切られる。最初は同一犯かと思われたが、黒い物体で大きな口を見たと言う被害者がいる。その情報だけで人間で無い事が推測出来るのだ。



「ただの変装した新手の変質者じゃねえのか?」


「その可能性はあるネ。でも調べる価値はあるヨ。神馬との怪奇とは関係ないカモだけど怪奇事件なら解決しなキャ」



兎姫の言う通りである。新しい怪奇事件があるならばバイトとして出向かなければならない。

神馬のバラバラ事件の事も気になるが目の前に怪奇事件が発生したならば、最優先に解決しに行く。



「それなら聞き込みもできそうだな。よし!! さっそく皆で聞き込み開始だ!!」



まずは学園内を手分けして聞き込みをする。以外にも様々な噂が流れる学園なのだ。良くも悪くも。

廊下に出て、とりあえず他の知り合いから聞き込みを始めようとする。すると。

キーーンコーーンカーーンコーーン。チャイムが響き渡る。



「休み時間が終わりだね」


「まだ聞き込みしてないぞ・・・」



彼等はまだ学生だという事を忘れてはいけない、授業が始まる。次は数学である。



「怪奇解決の前に学生の本分である勉強か・・・」



猫柳たちが学生の本分である勉学を励んでいる時に町ではある異変が起こっていた。

町には誰も近づかないような裏路地があるものだが、それでもやはり誰かがいる時がある。その誰かは長髪の男性で、なぜ路地裏にいたのかは分からない。何となく裏路地に入ったとか、近道のために通ったとかの理由くらいは推測できる。しかし男性は今日その路地裏を通ったのに酷く後悔したのだ。



「ひいいっ・・・・・」



ジャギリ・・・・・。

何かを千切る音が聞こえてくる。それに男性の悲鳴も聞こえた。

アグアグアグアグアグアグアグ。ジャクジャクジャクジャクジャク。

何かを咀嚼する音まで聞こえてくる。悲鳴を上げた男性は襲われたのだ。抜かした腰を元に戻し、顔を恐怖に歪ませながら一目散にこの場から走り出す。その場に残ったのは男性を襲った奴だけだ。しかしその奴とは人間ではない。姿は黒く大きな物体、大きな口からスルリと数本の黒い糸が落ちる。それは髪の毛であった。



「・・・ンマイ」



落ちた髪の毛も拾い上げ、大きな口に戻して咀嚼し直す。

アグアグアグアグアグアグアグアグアグ。ジャグジャグジャグジャグジャグジャグ。

咀嚼する音が聞こえる。咀嚼が終わると男性が逃げた逆方向である路地裏へと歩いていく。



「昼前から何なんです?」



卯月が今の現場を見る。大きな口のある黒い物体は既に消えていた。

あのまま男性が襲われていたら跳んで助けるつもりであったが、襲われた男性は安全な場所へと逃げているので安心する卯月。



「また変な怪奇が起きましたかです」



卯月はその場から逃げる男性が安全確認出来るまで動かなかった。

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