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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
4章:月下の美男子事件
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桂男

満月の時に月が1番光り輝く。それは月が欠けていないからだ。

当たり前のことだが欠けていない月が1番美しい。十五夜と言い、満月を眺めて楽しむ行事もあるほどだ。



「そして月の妖怪である僕も何1つ欠けていない満月の時が1番光輝き、美しい」


「ナルシスト?」


「ナルトシストだ」


「ナルシストのようだな」


「ナルシストです」


「ナルシストではないよ。月と美の体現者さ」


「それをナルシストって言うんだよ」



自覚をしていない者にツッコミをする。しかしナルシストに何を言っても無駄な気がするが。



「だから僕は美と月の体現者だよ」



ビシッ!!と決めポーズをする。



「何言っても無駄だぜ。疲れるだけだぞ犬坂」


「うん。そうみたい・・・」



自覚しない者に何言っても無駄だと犬坂は理解した。

目の前にいるのは月の妖怪である桂男。クロの自慢の嗅覚で逃げていた桂男まで追いついた。



「ココ最近女性ばかり襲っているのはアナタカ!!」


「襲っているなんて人聞きの悪い。彼女達は美しい僕に魅入られてしまっただけだよ」


「犯人決定」



やはり月下の美男子事件の犯人は桂男であった。

桂男は聞いても無いのに目的を話し始めた。



「ぼくはある時、天の声を聞いたんだ」


「天の声?」



目の前にいる桂男は永遠に美を追い求めるのが目的。

そして天の声とやらにその方法を教えてもらったらしい。

全ての人間の女性が美しくあるために努力し、美を手に入れている。

さらに美しくなるためにはその人間の女性の精気を吸うのが確実だという事。

そのため女性ばかり狙っているのだ。



「なんてはた迷惑な・・・」


(天の声か、調べないとな)


「クロ、神憑き!!」


「ん・・・おう」


「卯月もいくヨ!!」


「はいです!!」



2人の少女が変身する。

1人はなめらかな黒髪に犬耳、黒い尻尾の犬坂。

もう1人は煌く金髪に長い兎耳、腕や足にはモフモフした輪、兎の尻尾。



「「参上ウ!!」」



決めポーズをする。

兎姫はノリノリで自慢の決めポーズをするが、犬坂はつられて決めポーズをしてしまったので恥ずかしがっている。



『決まったですね』


『・・・何してんだ犬坂』


「ゴメン。何かつられちゃって」



パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。

拍手の音が聞こえる。それは桂男が拍手をしているからだ。

ニコリ。と微笑み、歩み寄ってくる。



「フフフ。綺麗な女性が3人も・・・1匹は男だけど」


『ケッ、悪かったな』


「さてと、ぼくと月を見ながら踊りましょうか」



桂男の身体が淡く光り始める。



『来ますです』


「左右同時に行くよティア」


「うン。allerいくぜ!!」



2人が同時に走り出し、桂男目掛けて跳び蹴りを繰り出す。

桂男はその跳び蹴りをいちいち、キザなポーズをしながらかわす。

犬坂と兎姫は桂男に攻撃しようと繰り出すが、当たらない。



「動きが身軽ね」


「当たらないヨ」


『重力の抵抗を軽減してるんです』



月に住んでいる者は地球に住んでいる者と違い、重力を受ける差がある。

月の重力は地球の重力のおよそ6分の1。

月の妖怪である桂男や卯月は地球に来た時に身体が重いと感じる。

重力問題を解消するために地球にいる時も月と同じ重力にするための方法がある。



『それは月地重転げっちじゅうてんと言います』



月から地球に行く者は必ず習得しているらしい。

その影響でキザなポーズをとりながらかわせる余裕があったのだ。



「ウヅキも出来ル?」


『もちろんです』


「ヨシ。月地重転!!」



身体か急速に軽くなるのが実感できる。

1歩踏み出しただけで一気に間合いを詰める。



「てイ!!」



両手で掌打をあごの下から突き上げる。



「ん!?」



あごを打たれたら脳を揺らされる可能性があると察知され、素早く防御された。

だが、兎費姫の背後から犬坂が飛び込んでくる。



「ランチャン!!」


「任せて!!」



空中で瞬時に片足頭上まで上げ、そのまま相手の脳天に目掛けて打ち下ろした。

誰もが知る、かかと落としである。



「顔付近は嫌だ!!」



打ち下ろされるかかと落としが顔付近を狙われていると気付き、首を横に傾ける。

ドコォと肩にかかと落としが打ち込まれた。



「ぐうう。・・・フフフ、美しい顔を守れて良かった」



美男子、それは二枚目顔持つ者。

美男子にとって顔は美男子であるための重要な役割を持っている。

その顔を守るためなら他の身体の部分を犠牲にしても構わないようだ。



『顔を重点的に狙え』


「ええ」


「了解しタ」


「ああ、なんて容赦のない・・・」



顔を抑えながらふるふると首を振る。

若干、青ざめている。顔だけはどうしても守りたいようだ。



『嫌なら大人しくしてくださいです』


「それは出来ない。美しさを求めるために」


『仕方ないです。顔を狙いますです』


「顔だけは・・」


『同じ月の住人とはいえ、容赦しませんです』


「ただ彼女たちと踊りながら精気をもらうつもりが・・」


「あたしたちは嫌なんだけど」


「イヤ」


「女性を傷つける事はしたくないが、美しさを守るため致し方ない」



腰に挿していた小刀を抜く。

小刀の刀身に月の光が射し、美しく煌く。



桂木小太刀かつらぎこだち



小刀を振ったと同時に三日月の刃が飛び出す。



「危ないランチャン!!」



三日月の刃を避けるため腕を掴み、急いで跳躍する。



「逃がしませんよ」



三日月の刃を何度も出してくる。

小刀のため斬撃自体は小さいが、刀身が短いため斬撃を出すための斬る動きが早い。



『小刀を奪うかヘし折らねば・・・。犬坂、脚の強化だ』


「うん。黒靴くろぐつ



黒い布のようなものが出現し、犬坂の足に巻きつく。黒い布のようなものはブーツに変形した。

足が引き締まり、もっと速く走れると確信できる。



「おや、美しい脚だ」


「ありがと・・ねっ!!」



足に力を込め、一気に駆け抜ける。

相手は一直線に突っ込んでくる犬坂を格好の餌食だと思いながら小刀を振るう。



『蹴り払え!!』


「たああああああ!!」



向かってくる三日月の刃を全て蹴り払い、消した。



「何!?」



再度、懐に入り込み顔を蹴る。

桂男は顔だけは嫌だと、反射で顔の前に腕を交差させる。だが、それこそ犬坂の狙いだった。

まずは犬坂たちの脅威となるものから片付ける。それが三日月の刃を出す小刀だ。

相手は顔を守るために腕を前に出してる。おかげで小刀を握っている手が無防備だった。

そこをつかさず、おもいっきり蹴る。



「しまった!?」


『脇腹ががら空きだ!!』


「了解!!」



脇腹に渾身の蹴りを放つ。

蹴りは的確に命中した。



「うぐぅあ!?」



蹴られ、横に飛ばされる。そして地面に転がり落ちたが、顔だけは地面に着かないよう受身をとった。



『顔だけは絶対に守るのか。敵ながらいい根性だぜ』


「顔は美男子の命ですから」



脇腹を抑え、ふるふると立ち上がる。



『いくぞ犬坂。仕留めるぜ・・・・ん?』



クロが犬坂の異変に気付く。

息が乱れ、身体が少しフラフラしているのだ。

神憑きの状態だからこそクロは犬坂の異変にすぐさま気付いたのだ。



『どうした、まさか斬撃をくらったか!?』


「いや、どこも斬られてないわ。急に疲れが・・・はぁはぁ」



犬坂は陸上部に所属しているため、多少の激しい動きには慣れている。

さらに神憑きのおかげで身体はさらに強化されている。相手からの攻撃もくらっていない。

それにも関わらず、息切れがし、身体がだるくなる程の疲れが出る。



『そうか!離れるんだ。精気を吸われているぞ!!』


「・・・うん」



離れただけで分かった。桂男の近くにいるかいないかで身体の負担が全く違う。



「ランチャンの身体から白い靄のようなものが出でル!!」


「え?」



自分の手や足を見ると確かに白い靄のようなものが出ている。犬坂だけでなく兎姫もだ。

そしてその白い靄は桂男の元に吸い込まれるように向かっている。



『それが精気です。ティアも吸われてますよ!』


「ワタシもカ!?」


「フフフ。精気をいただいてますよ」



精気が桂男の身体に吸収されていく。

その影響なのかフラフラしていた身体が治っていく。

ついでに肌が綺麗になっていく。



「とても美味ですよ」


『これ以上吸うなです』



桂男に近づくと精気を吸われてしまうのでこれ以上の長期戦はマズイ。

ジワリジワリと消耗してしまう。どうやら桂男は最初から少しずつ精気を吸っていたのだ。

犬坂と兎姫の疲れの違いは桂男の近くにいたか、どうかだ。



「ランチャンもっとアイツから離れテ」



さらに桂男から離れる2人。しかし身体から精気は抜けていく。



「本当に美味しいですよ。本当ならこの口でいただきたいのですが、近づいたらボコボコされそうで難しいですね」


「口?」


「精気を効率よく摂取するには口からが一番なんですよ。栄養ある食べ物だって口から摂取するでしょう?」


「確かにそうだネ」


「だから、口からなんですよ。そう接吻がね」



微笑みながら彼女達の唇を見る桂男。



「「え・・・」」



接吻という言葉を聞いて、素早く口を塞ぐ2人。

そしてさらに桂男から離れる。急に桂男が恐怖の対象になってしまった。

彼女たちはファーストキスを守らながら戦うはめになったのだ。



『そんな事はさせないです!!』


『穢れを持っている奴に接吻などしたくないだろ』


「何だって?」


『お前は穢れているという自覚がないようだな』


『やはりですか』



桂男は自分自身が穢れている事に気付いていない。

穢れている場合、凶暴化など理性を失う。

しかし桂男のように図太い精神を持つものは理性を失わずに自分の本能に忠実になる可能性がある。



『身体に穢れを持っているくせに美しいとは理解出来ないぜ』


「ぼくの身体に穢れなどシミの1つもない!!」



自分自身が穢れている。桂男は自分が美しくない、汚いと受け取っている。

しかしクロが言う穢れているというのは、清浄でなく悪しき状態のことである。



「こうなったら、黒犬にはぼくの美しさを隅々まで教えてあげるよ」


『いらん』


穢れという言葉を聞き、自分が美しくない、衛生的に汚いと誤解し、怒る。

桂男の身体が発光し始める。



美月射閃光みづきしゃせんこう



桂男はキザらしいポーズを決めると眩い閃光が発せられる。



「んくっ!」


「マブシ!!」


『おい!大丈夫か!』


『眩しいです!』



光がどんどんと強くなる。



「これは僕が目も開けられない程に美しくなった状態だ。効力は相手から精気を奪いつつ、ぼくに完璧に魅入られてしまうのさ。恋をしたように魅入られ、彼女たちはもう1歩も動けない」



光の中で体から精気が抜けていく。



「んくぅ」


「グヌヌ」



2人とも膝をついてしまう。眩しすぎて目も開けられないが桂男がキメ顔なのが分かってしまうのが妙にムカツク。



「あはははは。なんて美しいんだ僕は!!」



ウットリィと顔をする。



「これでぼくは穢れなどはない事が証明!!」


『早くこの場から離れろ!』


「無駄だよ黒犬さん。僕から発せられる光は広範囲に広がっているんだよ。逃げ場は無いよ。」


『ヤバイです』


「あははは。さらに僕の魅力で釘付けさ。」


『眩しすぎて何も見えないだろうが』


「本当に美しいものは見るんじゃない。全身で感じ取るものさ」


『よく分からないぜ』


「美しさが分からない者は皆そう言うんだ」



ヤレヤレと首を振る。

しかし美しさの価値観は人それぞれである。

例えば、有名な画家が世界にも認められる美しい絵を描いたとしよう。

100人中ほとんど人がその絵を美しいと思うかもしれないが、もしかしたら数人は思わない可能性もある。



「フフフ、あははははははははははははははははは」



口を大きく開き高笑いをした。

桂男は自分の勝利に確信している。最初からこうすれば良かったんだと思っている。

彼女たちから精気を吸った後は仲間の男たちから遠くに逃げねばならない。

女性の相手をするのは好ましいが男性を相手をする趣味はないからだ。



「あははははははははははははははははははははははは!!」



高笑いが響き渡る。


「あははははははははははははははははははははははははははははは!!」



まだ続く。

本当に気持ちよさそうに笑っている。



「あははははははははははははははははははははははははははははははははは・・・っグゥガァァ!?」



自分に酔いしれて、気持ちいい高笑いしていたら謎の衝撃、痛みが自慢の美しい顔に走った。



「お・・・おごぅ・・・」


「眩しいからやめて!!」


「おごぅ・・・?この声は黒髪の娘・・・」



犬坂が桂男の顔に跳び蹴りをくらわしていた。



「な・・・なぜ・・・動けるんだ?」


「精気を吸われてて、しんどかったけど動けるわよ」



そのまま脇腹に鋭い蹴りを繰り出す。

ドコォッと吹き飛ばされ、桂男は顔から地面に落下した。身体から発せられる光が弱まっていく。



「ぐぉぉぉ・・・何で僕の魅力が効かないんだ」


「スキありィ!!!」



兎姫も桂男の顔に向けて跳び蹴りを繰り出す。



「嫌だっ!!」



大事な顔をこれ以上蹴られるのが嫌なのか必死で避ける。



「逃げるナ」


「顔は嫌なんだ!!」


「それ以外はいいの?」



流れれるように足払いからの回し蹴り、そして踵落しが続く。



黒犬流脚こっけんりゅうきゃく


「ぐああ!?」



そして後ろに回り込み、頭をサッカーボールのように蹴り飛ばした。蹴られた勢いでまた顔から地面に叩き付けられ、倒れた所を追撃で兎姫の方へ蹴り飛ばした。



「ティア、パス!」


「まかせテ!!」



両手から光が発せられると光が三日月の形に変形する。



月光ゲッコウ!!」



右と左の月の刃でクロスにぶった切る。



「ぐぅああああああああああああ!!!」


「追加ァ!!」



月光を投げ飛ばし、ガッチリと桂男に追撃した。



月封縛ゲップウバク!」


「う・・動けない・・」


『それは相手の動きを封じる技です。もうあなたの負けです!!』



2つの三日月が桂男を捕縛する。

身体が動かなく、力も出ない。膝をガクンと着き、頭も垂れる。

そして何かブツブツ言っている。



「なぜ僕の魅力が効かないんだ」



どうやら自分の魅力が効かないのが相当ショックらしい。



「確かににあんたは美男子だけど、恋をする程見惚れはしなかったわよ」


「ワタシもワタシも」


「なぜ・・あ・・・」



桂男が何かに気づいた。



「そうか、分かったぞ。君たちの心の中にもう誰かがいるからだな」


「ふぇ?」


「アゥ?」


『『フーン』』



一瞬ポカンとしてしまう。

そして犬坂は顔を赤らめ、兎姫は両手を頬に合わせる。



「なっな・・何言ってんのよ」



照れ隠しをするように顔を蹴る。



「うごぉっ・・顔はやめて!!」



桂男は捕縛されており、文字通り手も足も出ない。

なので避ける事も出来ないのだ。



『ククク、犬坂。もしかしてあの野郎か?」


「クロ。後でおしおきだからね」


『え・・・』


『ティアもいるのですか?』


「ウン。いるヨ」



兎姫はハッキリと好きな人がいると肯定した。



『わああです』



桂男がさらに説明する。自分の魅力が効かなかったわけを。



「既に自分の心に誰かが住んでしまっていては僕の魅力は完全には通じない・・・」



アイドルと彼氏彼女は別者という考えみたいなものだ。



「しかも想いがとても強いようだ。ぼくの魅力が完全に効かないなんて、結婚レベルまで考えてる人だけ・・・」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



トドメの一撃で桂男を蹴り飛ばし、意識を断つ。



「勝利のヴイ!」



兎姫がさっさと場を収めるため勝利のVサインで決める。

これで月下の美男子事件は幕を閉じたのである。


読んでくれてありがとうございます。

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