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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
1章:古い民家の怪奇現象
3/150

友達と白蛇 e

3話目です。まだまだ頑張ります。


友達がしゃべる白蛇と一緒にいたのは驚いたが、一旦落ち着く必要がある。

昼時だったので昼飯は近くの公園でハンバーガーを食べた。おいしかった。



「まさか優もこのバイトをしていたとは・・・ちょっとびっくり」


「俺もだよ。意外だ」



こういう時、世間は狭いんだなと感じるものだろう。



「あの白蛇について詳しく説明がほしいんだが」


「奇遇だね。俺もあの猫について説明がほしいよ」



その説明対象の猫と白蛇はというと。



「あの時とあの時とあの時・・・たくさんあるわ。さっさと私のお供え物を返しなさい!」 


「食っちまったもんはもう戻せねえ。それは真理だ」 


「じゃあせめて金払いなさい」 


「お前に渡すくらいなら自分で使う」 



ハンバーガー食いながら言い争いをしている。



「白羅さん少し落ち着いて」



白蛇をヒョイと持ち上げる。



「だって優君。この銀猫はいつも優君が私にくれるお供え物を奪った張本人なのよ。せめて絞め落とさないと」                       


「どっからでもかかってこい」


「銀陽も火に油を注ぐな」



どうやら2人は知り合いらしい。

話をまとめると優がいつも祈っている祠にお供え物をしているが、そのお供え物をいつも勝手に奪っているのが銀陽らしい。

食べ物の恨みは恐ろしいというやつだ。銀陽は気にも留めていないようだが。



「落ち着いたら話をしよう」



銀猫と白蛇は1時間弱程言い争っていたがようやく終わったようだ。

銀猫と白蛇の言い合いはなんとも珍しかったと猫柳と蛇津は思っている。確かに銀猫と白蛇が対峙する場面はそうそうないのだから。

現在銀猫は猫柳の頭にちょこんと、白蛇は蛇津の首へ巻きついている。



「ふぅ、少しは落ち着いたわ。私と優君の経緯について話しましょうか」


「はよ話せ」




話は先週に遡る。ちょうど猫柳が銀陽とバイトの説明をしている時と同じ日にちだ。

蛇津は学校の登校と下校の時に近くの祠に祈るのが毎日の日課である。家族のこと思いながら。

蛇津は皆から良い奴と認められている。宗教関係者というわけでもないのに信仰深く、神様はいると信じてる青年だ。

蛇津はいつも通りの祈りを終えて目を開くといつもと違った光景が広がった。目の前に大きな白蛇がいたのだ。声を出さなかったとはいえ、蛇津の内心は非常に驚いていた。目の前にいきなり大きな白蛇がいれば誰でも驚く。



「オオゥ・・・」 



少しずつ後ずさりをしながらその場を離れようとする。

しかし、目の前の白蛇が急に蛇津の首へと飛びつく。そんなことになればどんな人間だろうともパニックに陥る。



「?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」



パニックになりつつも急いで白蛇を取り外そうとした時に声が聞こえた。



「ごめんなさい。驚かしてしまって、でも安心して。何もしないわ」



その声の発信源はなんと蛇津の首に巻きついた白蛇だった。

蛇津は白蛇がしゃべったこと自体信じられないが、実際にしゃべっているので信じるしかない。

白蛇が首に巻きついたというパニックよりもしゃべったという事実によりある意味落ち着くことができた。



「あなたは一体?」


「私は白羅はくら。あなたと話がしたいのだけどいいかしら?」


「・・・・・・分かりました。ここじゃなんなので俺の家でいいですか?」


「いいわ。」



そのまま誰かに見つかる前にそそくさと蛇津の家にと急ぐ。

家に着くと苺をおやつとして用意しながら白羅という白蛇から妖怪、神様、バイトの話を聞いた。



「神様と妖怪退治・・・。 神様まで退治して大丈夫なんですか白羅さん?」



目の前の白蛇は白蛇神と言い、神様らしい。



「ええ大丈夫。神様といっても堕ちた神様のことよ」


「堕ちた神様?」


「堕ちた神とは妖怪や人間のせいで堕ちた神様。比較的に力の弱い神様が多いかしら。他には人間が信仰を蔑にしたり、罰あたりなことしたりとかかしら」


「・・・」


「例えば、祠や神を祀る石像などを理由もなく壊したりとか。いろいろあるわ」


「耳が痛い話です」


「あ、ゴメン。 別に攻めているわけじゃないわ」


「大丈夫です。実際のところそれは本当のところですから」



神様を信仰している人間はたくさんいる。

しかし、逆に神様を信仰などしていない人間も多くいるのである。それから罰当たりをする人間が増えるのである。



「詳しく説明すると優君。あなたはこの辺りで何か怪奇現象やそれらしい事件があったら調べて報告するというのが仕事よ」


「フムフム」


「さすがにイキナリ退治しろというわけでわないわ」


「もしそうだったらムリなんですけど」


「だからムリせず情報の提供をお願いするわ」


「ああ。それくらいならできるよ」



人間と神、妖怪は全く住む世界が違う。

そんな中で人間はどこまでできるのか。



「もしバイトが成功したら願いも叶うわよ」


「願いが叶うんですか?」


「と言っても、なんでも叶うってわけじゃないけどね。例えば、死んだ人間を蘇させたりとか、世界征服とか無理。そんなこと出来たら今頃どうなってることやら」


「うんうん」


 

壮大な願い事は無理らしい。確かにそんなことが出来たら世界中混乱である。良くも悪くも。



「基本的にこの神紙に願い事を書いてくれればOK。 そしたら神妖界に提出してくるわ」


「提出・・・」


「そ。提出」



提出



「私も神様だから叶えられるものがあればその場でチョイチョイと出来るけど。まあ、家内安全や魔除けなどね。白蛇は縁起物だから金運upなどの願事も大丈夫」


「それ良いですね」


「その代わり願い事を叶えたら、給料は無しになるけどね」


「給料か願い事か・・・」


「そうね」


「やる気が出てきた」



願い事がある程度叶うかもしれない。蛇津のやる気が上がる。

目の前に神様が現れて、仕事をこなせば願いを叶えてくれると言うのだ。

誰だって願いが叶うなら挑戦してみたいものだ。



「しかも神様である白羅様がオレを選んでくれたんだから、それに応えないと!」


「様付けなんてしなくていいわ」


「そうですか?じゃあせめて・・・さん付けで」


「それでいいわ」


「それにしても、何でオレを選んでくれたんですか?」



神様が選び抜いて自分に決まったことに嬉しさはあるが、なぜ自分なのかと疑問に思う。

蛇津は自分なんかより優れている人がいると考えたからだ。それに自分がただの学生だ。



「私はあなたの信仰深さと人間性から選んだわ」


「オレの信仰と人間性から?」


「優君は私に信仰深いでしょ。毎日私の所に来てくれて嬉しいの」


「いやぁ、どういたしまして」


「私たち神様は人間の信仰心によって存在できるといってもいいわ。私の住処はもうこんな小さな社しかないけど、優君が私を信仰してくれるおかげで私はいるのだから感謝はあたり前だわ」


「感謝だなんて」


「感謝するのに神様だろうが人間だろうが関係ないわ。人間の大人が子供に感謝したっておかしくないでしょ」


「・・・そうですね」


「そうでしょ。それに優君が私を信仰してくれれば、その分私の神力は上がるの」


「・・・・・」



手と手を合わせて信仰中



「フフッ ありがと」

(それに優君はあるものを持っている。どんなに頑張ったて得られないものが)



そこまで言われたら頑張るしかないと考える。給料もすばらしい。  

でも気になることがあり、それとなく聞いてみる。



「白羅さんちょっといいですか?」


「何かしら?」


「バイトするのは良いんですか。それで白羅さんに対するメリットはなんですか?」


「最もな話ね。仕事を1つ完了するとその仕事の難易度によってポイントがたまるの」


「ポイント?」


「そ。ポイント」


(・・・・ポイントってなんだ)


「そのポイントが溜まると私の神格が上がるの」


「上がると?」


「神通力の幅が広がるし、領地も増えるわ。願い事の種類も増えるわ」


「オオ~」


「あと、いろいろ大きくなる」 



なぜかポッと赤くなる。

他に話を聞くと神様以外にも妖怪がこのポイントやらを貯めているらしい。妖怪も神格化すれば神様になれるようだ。実際、妖怪や霊が神格化され神社とかで祭り上げられているところがあったなと納得する。



「このバイトが自分のためにも、白羅さんのためにもなるんなら頑張ります!」


「ふふ。ありがとう」

(前々から思ったけど優君は可愛い)



ということがあったと猫柳と銀陽に説明した。

猫柳は目の前の白蛇が神様なのかと驚いている。妖怪の存在は銀陽で確認済みだが神様まで見ることになるとは予想外だ。その神様のお供え物を奪っている銀陽の代わりに謝罪をする。



「悪いな白羅様。あとで銀陽のかわりに供えもん返しとくからさ」


「そんなことしなくてもいいぞ銀一郎」


「あなたは黙ってなさい。あと様付けはしなくていいわ。好きなように呼んでいいわ」


「ギン。お供え物は卵が良いと思う」


「了解」


「さて、バイトの話に戻るか。複数の場合の時だな」



銀陽が今の猫柳と蛇津のように同じ事件に関わった場合の説明をした。

バイトについてだが違う組が同じ事件に係わった場合、どちらか片方になるという訳ではない。共闘という形みたいになる。なので報酬も一緒になるのだ。同じ事件を違う組が解決した場合にどちらが解決したかで、もめるだろうという案があったのでいっそ両方に報酬を渡してしまおうという形になったらしい。

しかしそれでは10組のチームがあったとして、1組が解決したら報酬がその1組に行くのではなく残りの9組にも報酬が楽に入るという考え方もある。それはそれで不満が出てくるのではないのだろうか。でも上手くいっているらしいから大丈夫のこと。



「共闘か・・いいんじゃないか?」


「オレも良いと思う。仲間は多い方が良いでしょ。」



猫柳と蛇津はこの案については納得である。

自分を守ってくれる存在がいても全く知らない場所に足を踏み込むのは怖いものである。

そんな時に昔からの友達が一緒だと少しは安心できるだろう。

例えば、これから受験する学校に1人で学校見学に行くよりは友達と行く方が気持ちが楽であるというものである。しかし今回は危険を伴うこともある。2人ともそれは理解している。



「その方が得策ね。文句はないわよね。食い逃げ猫」


「わかっている。まったく仕方ないな」



やれやれといった感じだ。

話し合いが終わり、再度噂の民家に戻ってみると青年が家の前で立っていた。



「誰かいるぞ」


「白羅さん。バックの中へ」


「もう入っているわ」



初めて会う人にいきなり蛇は見せられない。はっきり言ってしまうと引かれてしまうだろう。

そのことに関して蛇津はガックリきている。



(白羅さんはいい人?蛇?なのになあ)


「あのーあなたはもしかしてここに住んでいた人ですか? それとも噂を聞いて来た人ですか?」


「ん? ああ、実は僕はここに住んでいたんだ。いや、遊びに来ていたのほうが正しいな」



この民家の関係者のようだ。ここ最近の怪奇現象について何かヒントを得られるかもしれない。

この民家の怪奇現象についてはまだ謎ばかりである。猫柳は青年にさりげなく聞いてみた。



「あの、えっと・・・」


「ああ、僕は鈴村すずむらというんだ」


「鈴村さんはどうしてここに?さっきも聞いたかもしれませんが噂についてですか?」


「噂か・・・。そうだね、この民家に黒い物体が現れると聞いてね。それが気になったんだ。・・・質問を聞き返しちゃうけどこの辺りで薄黒い猫を見なかったかい?」


「うーん、見てません。猫は友達の頭の上に乗っている意外は」



蛇津が猫柳の頭上を見た。そこには図々しく銀猫が乗っている。



(薄黒い猫か・・・気になるな)



猫同士気になるのか、それとも違う何かか。銀陽は考え事してる顔である。



(黒い物体に薄黒い猫ねえ・・・。まさかだとは思うけどね)



白羅も何か思うところがあるようだ。



「そうかありがとう。実の所、昔その薄黒い猫を飼っていてね。名前はチョウって言うんだ。でもいつのまにかどこかに消えてしまったんだ。10数年くらい前だけどね。もしかしたらと思ったんだが、さすがにないかな」



猫の寿命は10~16年と言われている。最近では15歳を超える猫もめずらしくはない。

ペットとして暮らしている猫には元気に長生きしている猫が増え20年以上生きる長寿猫もいる程だ。



「話につきあってくれてありがとう。じゃあ私はこれで」


「はい。さようなら」



鈴村は立ち去った。



「鈴村さんはチョウっていう猫を本当に大事にしていたんだね」


「銀一郎。猫は大事にしろよ。そして敬うがよい」


「銀陽。調子に乗るんじゃない」



そんな話をしていると白羅が何かを見つけた。



「何か落ちているわよ」



それは小さな鈴であった。鈴村が言っていたチョウという猫のものであろうか。

古い鈴であるがきれいな鈴である。鈴村が置いて行ったのであろう。

なので拾っておこう。



「どう見てもそれはさぁ。」


「わかってるって。でも何か使えるかもしれないだろう」


「そうね。猫柳君の言う通りだわ。何かに使えるかもね」


「ホラな」


「さっさと行くぞ。黒い物体とやらが現れるらしいから気をつけろよ」



銀陽が家の前で答える。

ついにバイトという名の妖怪退治が始まる。いっそう気を引き締めないといけない。

猫柳も蛇津もこれから非日常の世界へと足を踏み込むこととなる。


挿絵(By みてみん)

白蛇が跳んで首に巻きついた



ありがとうございました。

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