イケメン妖怪
月の光が強く、辺りが明るい。
1人の男が立っており、足元には女性が倒れている。
「今夜も月がキレイだ」
その男は月明かりの如く身体が光り始める。
「おっと、光過ぎると目立ってしまう。抑えなければ」
光が消える。彼は倒れている女性を抱き上げ、道の端に置く。道の真ん中に倒れているのは危険だ。
「あなたはキレイで精気もおいしかったですよ」
彼はもう一度、月を見上げる。月は相変わらず強く光り輝いている。
「満月までもう少しかな」
彼はそう言葉を残した後に煙のように消えた。
月明かりに照らされたその場に残るのは女性だけだ。
彼が消えた後、その場にある電柱から1つ目が浮き出る。
ギョロリと辺りを見渡し、目を閉じた。
どこかレトロな感じのする喫茶店。客足は少ないが雰囲気が良く、落ち着きのある店だ。
常連客は好んで足を運ぶ。
店内で2人の青年がコーヒーとサンドイッチを食しながら居座る。
「ここはいつ来ても良いよな」
「そうだね。レトロの雰囲気が良い」
数多目がコーヒーを口に含む。逆に霧骨はサンドイッチを口に詰め込む。
このサンドイッチは照り焼きチキンが挟まれていて、チーズにレタスの単純なサンドイッチだ。
口に含むと照り焼きチキンのジューシーさは溢れる。
「んむぅ。うまい」
霧骨は両手にサンドイッチを持ちながら奇怪なバイトについて話し出す。
「ふぉをいへはほほはいはほはふは?」
「何言ってるか分からない」
口に含んでいるサンドイッチを噛み、ゴクリと飲み込む。
「奇怪なバイトの同業者については?」
「見つかったよ。信耀学園の生徒みたいだ。いつでも会おうと思えば会えるよ」
信耀学園。
猫柳たちが通う学園である。
進学校であり、部活、サークル、行事、様々な事を行うマンモス校である。
何かと注目のある学園だ。
「ひょひょう。ひゃあいふひふるは」
「口にあるもの全て飲み込んでから話してくれ」
ガシュリと口にあるものを噛み潰す。
「いつ会いに行こうか?」
霧骨はニンマリと悪い顔をする。
何を考えているか分からないが、良いことではないだろう。
最後のサンドイッチを口に放り込む。
数多目はコーヒーを飲みながら、ふとあることを思い出す。
「そういえば最近、月明かりの強い夜中に女性が倒れているって事件があるんだけど知ってる?」
「知ってる知ってる。夜道に倒れて、いつのまにか病院に直行パターンのやつだろ」
「その事件ってさ、実は妖怪の仕業みたいなんだよね」
「へぇ、貧血云々じゃぁねぇのか」
「何の妖怪かは調べないと分からないけど」
「特徴は?」
「イケメン」
イケメンとは日本語で美男子を指す。一般的に二枚目のことでイケてると面を掛け合わせた言葉である。
美形か、もしくは様々な要素でカッコイイと認定された男の称号である。
「イケメンの妖怪か・・・・・」
「うん」
イケメンの妖怪というだけでは、どんな妖怪か特定するのは難しい。
妖怪の世界のには「化ける」というものがある。化けてしまえばどんな姿にもなれるのだから。
妖怪の世界は何でもありだ。
「とりあえずスマホで調べてみよ」
スマホを手に取り、スイスイとイジる。
「分かるのか?」
「ある程度なら妖怪も神様も分かるもんだよ」
「有名なやつならな」
「・・・イケメン妖怪で検索したら、乙女ゲーに出てきそうなキャラがいっぱい出て来た」
「キャラじゃだめだろ」
「ん?それっぽいの発見」
発見した妖怪の絵を見せる。
見た目はゲームや漫画に登場してきそうなイケメンキャラだ。
「イケメンは気に入らねえんだよな」
「そんなんだからモテないんだよ」
「うるせぇぇぇぇ!!!」
レトロな雰囲気の喫茶店に似つかない大声が響き渡る。
喫茶店のマスターが霧骨たちの席を睨む。
「マスターがこっち睨んでるよ」
「スンマセンでした」
マスターに向かって謝る。
「出禁は嫌だよ」
コーヒーを飲み、落ち着かせる。
「じゃあ同業者に会う前にイケメン狩りだ。ていうか怪奇なバイトなら同業者に鉢合わせするかもな」
2人はコーヒーを一気に飲み干す。
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