月下の美男子事件
次のヒロイン(人間)の登場ですよ
男キャラ(人間)ばかりじゃつまんないからね。
夜の帰り道、女性が1人歩いている。今夜は晴れて月が明るい。
夜の道は怖いと感じるのが一般的だが月の光のおかげで辺りが明るい。夜の道でも明るければ怖くない。
「今夜は月が明るい」
満月でもないのに月の光が強い。満月ならばもっと明るいだろう。
女性がそんな事を考えていると前から誰かが近づいてくる。
その誰かは変わった和服を着ており、綺麗な顔立ちをしている。いわゆる美形である。
男性でも女性でも美形ならば目を向けてしまう。
彼は優しく微笑み、話しかけてきた。
「こんばんわ。今夜は明るいですね」
女性は見惚れてしまっていた。彼からは不思議な魅力に溢れている。
テレビや雑誌で見る美形よりも目を奪われる。
「あ・・・・・こ、こんばんわ」
彼は女性に何か話しかけているが女性自身には聞こえていない。
人は何かにのめり込んでしまうと周りの声が聞こえなくなる。
今、この女性はその状態である。この女性は彼しか見えていない。
彼は女性に近づき、手を差し出した。この動作は握手を求めたものだろう。
女性は顔を赤くし、おそるおそる握手した。
そこで女性は目の前が真っ暗になった。
「・・・ここは?」
気が付いたら、病院のベットで寝ていた。
身体がだるく、気持ちが安定しない。
なぜこんな状態なのか分からない。気持ちの整理がつかない。
それでも心にはあの美形の彼だけが残る。
月が光り輝く夜に絶世の美男子が現れる。その美しさは男性も女性も目を奪われてしまう。
その出会いは夢のようで本当に存在するかは分からない。実際に出会ったと言う人たちは気がついたら病院のベットで横になっているからだ。
出会うと必ず気絶してしまうと言われている。命には別状は無いが身体が酷く疲れが出る症状になってしまう。
貧血で倒れただけで、ただの夢ではないかと思ってしまう。それでもあの絶世の美男子は本当にいたと公言する人もいる。
これが月下の美男子事件。
「乙女ゲーかヨ」
「たぶん違うんじゃないか」
いつもの学園、いつものメンバー、いつもの日常。
猫柳たちは最近の噂について話している。
「でも絶世の美男子は見てみたいカモ」
「確かにね。男も女も認める美男子なんて、どんな人か見てみたいわ」
犬坂と兎姫の女子2人は盛り上がる。やはり女子は美男子には憧れがある。
「オレも気になるな」
「俺は気にならないけどな。むしろ美女だったら良かったのに」
「オレも本音はそっちが良いけど、男も見惚れる程っていうから、どれくらいイケメンか確かめたい」
「うーん。そう言われると・・・」
男が男に興味があるのは特殊な人だけとは限らない。ただ純粋に絶世の美男子を見てみたいという気持ちは普通の男だってあるだろう。
「でも、アンタたちじゃ会えないと思うよ」
「何でだ?」
噂とは尾ひれがつくもの。実は被害にあった人たちは皆女性なのだ。絶世の美男子に会った人だけが病院に直行する。それで女性しか被害あってないということは、男性も見惚れる云々に男性が絶世の美男子に会っていない事になる。
絶世の美男子と噂が流れ、そのうち男性も見惚れるという言葉もくっ付いてしまったというわけだ。
「今の段階で会う条件は女であることなの」
「マジか」
「じゃあいいかな」
猫柳と蛇津は一瞬で興味を無くす。
「やっぱ美男子よりも美女がいいな」
「同感で」
「美女もとい美少女ならここにいル!」
手を頭の後ろに組んで、クネっとしたポーズをする。
「んぅー」
「うん。ティアは美少女だね」
「さっすがユウユウ分かってルウ。ギンニャンも見習エ!」
兎姫が蛇津の背中にダイブし、猫柳に指差す。
「へいへい。ていうかギンニャンはヤメロ」
「いいじゃん。ネコとギンなんだかラ」
兎姫は気に入った人には自分好みのニックネームをつけるのがクセだ。
猫柳はギンニャン、蛇津はユウユウ、犬坂はランチャン。
人にニックネームをつけるのは相手を信頼している証だと思う。
相手が不快と感じなければニックネームをつけるのは良いことであり、つけられた方はうれしいだろう。
中には恥ずかしいネックネームもあるが、それはそれ。
「うーん」
ニックネームをつけられた猫柳はヤレヤレといった感じだ。
新しいネックネームを考えてほしい所だ。他愛の無い話で今日の1日を過ごしていく。
放課後の帰り道。
兎姫が最新作のライトノベルを買ってテンションがウキウキで帰宅している。
早く帰って最新作のライトノベルを読みたくて足を速める。
「フンフーン・・・うン?」
道端に何かが落ちている。いや、倒れているの間違いであった。
「何だろウ?」
その何かに近づいてみる。それは桃色の兎であった。
「ウサギ」
「ううん・・・油断しました」
「・・・しゃべっタ」
「ほえ?」
兎姫と桃色の兎の目と目が合う。
片方は目をすごくキラキラさせ、もう片方は汗をダラダラ。
「卯月は・・ただの兎・・ですよ」
普通の兎はしゃべらない。焦りすぎて墓穴を掘っている状態だ。
「あう・・あう」
「テヤッ!!」
「うわわわわ!!」
桃色の兎をいきなり掴み取る。
そして、最新作のライトノベルと共にバックの中に放り込み、自宅まで全速力で走り出した。
読んでくれてありがとう!!




