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銀色神妖記  作者: ヒカリショウ
15章:異形の目
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怪人現る

金曜日の放課後。蛇津優は怪人を探すために町に繰り出した。まず向う場所は怪人が今まで現れたポイントだ。情報を聞いているが、まず自分の目でも見てみたい。近くに何があるかもしれない。各地点をくまなく調査する。

美艶と共に。



「まさか途中で優君と遭遇するなんて運命ね」


「まるで計画してたかのような遭遇は運命ですかね?」



曲がり角を曲がった時に美艶ぶつかった。まるでマンガにある運命的なぶつかりだ。しかしタイミングといい、倒れたポーズといい、狙ったかのようなである。

チラリと周りを見渡すと百狐乱華らしき狐が遠くから見ていた。



「狙いましたね」


「さあ・・何のことかしら?」



とぼける美艶。そして気にしない蛇津。出遭ったならそれを受け入れる。だから行動を一緒にしているのだ。



「何か分かったかしら?」


「まさか・・・と思うことはありました」


「そうなの?」


「はい。でも可能性としての発見ですね。現場近くに建っていた建物が・・ですが」


「建物?」


「はい。もしかしたら疑いたくない情報からの結果になりますよ」



各地点のポイント近くにある建物にはある共通点があった。その共通点は知っている情報である。皆が調べれば分かるほど有名だからだ。



「私は分からないけど」


「神や妖怪は知らないかもしれませんが人間の世界では有名な企業なんですよ」


「へえ。今度その有名企業とやらに何匹か潜入させてみようかしら?」


「バレますよ」



今ある共通点からある建物へと向う。



「もしかしたら怪人と遭遇するかもしれませんね」


「その時は任せてね」



ガッシリと腕を組んできて歩き出す。

美艶は妖艶な美人である。そんな美人と腕を組んで歩けば注目されるのは当たり前である。和服美人で、しかも着崩している着方である。それは注目される。

警察とかに捕まって注意されないかと心配どころが増えた。



「ねえねえ優君。話は変わるんだけど良い?」


「良いですよ。何ですか?」


「九怨の事件後に発覚したことなのよ。実は九怨がどこかの組織か何かに繋がってたみたいなの」


「九怨がですか?」


「ええ」



九尾の狐である九怨がどこかの組織か何かと繋がっていた。それはとても重大な事である。

後始末をしていたら奥の方から開かずの間の鍵が出てきたようなものである。



「九怨を討伐した後、皆で後始末をしていたら手紙が出てきたの。その手紙に何か組織的な何かと繋がっているようなことが書かれていたわ」



現在、美艶を中心に九怨と繋がりのあった組織的何を調査中らしい。もし何かあれば力をまた貸してほしいということである。

それに関して蛇津優は首を縦に振る。継続的な依頼のようなものだ。ならば続きも関わろうと思うのであった。



(白羅さんを説得しないとな。それにギン達にも応援がほしいな)


「あの白蛇なら優君のために何でもするわよ」


「心読みましたか?」


「どうかしら?」



美艶にからかわれながら、ある建物のある地点へ到着する。



「着いた」


「ここがそうなの?」


「はい・・・・・っ!?」


「あらま」



いきなり件の怪人が現れた。しかも堂々と目の前からだ。



「目の前にいるのが『異形の目の女』の怪人」



黒いロングコートを着ており、フードで顔を隠している。そして赤く妖しく光る片目。その異形の目と目が合う。

そして急に嵐が荒らしく吹き起こる。その荒々しさに目を閉じてしまう。そして目を開けると空中には剣や槍などの武器類が浮かんでいた。

今まで集めた情報通りである。



「なっ・・・まさか!?}



凶器となった剣や槍が無慈悲に降り注ぐ。



「ダメよ」



美艶が神通力を使い、無数に降り注ぐ剣や槍を手前で止める。



「・・・・・意外に強いわね」



剣や槍が蛇津優たちの手前で止まっているがカタカタと今にでも動き出しそうである。

美艶は天狐という強き存在である。その強き存在である神通力と張り合う怪人もまた強大な存在であろう。



「ただの怪人じゃないわね。なら少し神通力の力を上げましょうか」



剣や槍を押し戻す。カランカランと地面に金属音を立てながら落ちていく。チラリと武器を見ると出来の良い武器だと素人でも分かる。



「『異形の目の女』・・・君は誰だ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」



『異形の目の女』と呼ばれる怪人は何も話さない。赤く妖しく光る異形の目でずっと見てくる。



(金縛りに遭うとか聞いたけどそうでもない。金縛りに関しては誤情報かな)


「・・・・・・・・・・・・・・・・」



西洋剣がいつの間にか握られていた。カチャリと構えて向ってきた。



「武器が無い」



冷静に今の状況を考える。武器は無し。しかし力ならある。白羅から貸してもらった神通力がある。



「白蛇之太刀」



美艶の前に出て怪人を迎え撃つ。西洋剣と白蛇之太刀がぶつかり、カチャカチャと競り合う。

至近距離まで近づいたがフードを深く被りすぎているためか顔を確認できない。分かるのは赤く妖しく光る異形の目だけだ。



「誰だ。話してくれ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



無言の一点張り。何も話さない。話せないのか話さないのか分からないがするべきことは1つ。蛇津優の目の前にいる怪人を捕まえる。それだけである。

怪人の後ろを見るとそこには美艶が周り込んでいる。手刀を構えて背後から近づいていた。このまま怪人を惹きつけるのに徹する。



(美艶さんお願いします)


(任されたわ。報酬は優君の接吻で)



アイコンタクト。

美艶の手刀が狐火を纏い、背後から怪人狙う。手刀の先には西洋剣の代表の1つであるレイピアの切先があった。



「ちっ・・・良い反応ね」



怪人のもう片方の手にはレイピアが握られていた。



「まるで息をするかのように武器を生み出せるみたいだね」



剣と剣の鍔迫り合いを止め、一旦離れる。美艶もまた離れる。

怪人を見ると両手に西洋剣を2本持っている。周囲にまた剣が何本も現れる。そして剣が飛んでくる。



「まったく、剣を矢のように飛ばしてくるなんてゲームみたな技だ。ティアが居ればテンション上がったかもね」


「優君、私の後ろに。また神通力で押し戻すわ」



飛んでくる剣を避け、弾き返しながらグルリと美艶の元まで走る。走り着いた瞬間に飛んでくる剣は止まる。

お返しにと止めた剣を同じように怪人に飛ばし返す。



「・・・・・・・・・・・・・・・」



無言で避ける怪人。だが次の行動に初めて怪人は驚いた反応をした。なぜなら怪人に右腕に水で形成された蛇が咬みついていた。



「水幻自在・蛇。蛇咬へびかみ



水蛇による咬みつき。だがただの咬みつきでは無い。腕に咬みついた瞬間に怪人の中に神通力を流した。神聖な力を蛇の毒のように使ったのだ。毒ではなく神通力ならば毒より強力である。

怪人は腕を抑えながら苦しみだす。その瞬間に白蛇の縄を現し、捕まえようとする。



「・・・・・・・・・・・・・く」



嵐が吹き荒れる。竜巻でも起こるような荒々しさ。そのせいで『異形の目の女』の怪人を逃がしてしまった。








                       ☆







『異形の目の女』の怪人を逃した後、蛇津優たちは休憩がてら近くの喫茶店に入る。

個室のある喫茶店であり、今回のことを気兼ねなく話せる場所である。注文はコーヒーにタマゴサンド。パクリと一口。シンプルな味付けだがとても美味しい。



(数多目から聞いたけど良い喫茶店だ。今度オレもオススメの店とか教えよう)



コーヒーを一口啜る。



「さて、美艶さんから見て怪人はどう思いましたか?」


「うん・・そうねえ。あの怪人だけど妖気を感じなかったら妖怪ではないわね。寧ろ神気を感じたのよ」


「じゃあ怪人の正体は神様・・・ということですか」



怪人の正体が神かもしれない。白羅が前に言っていた。神もまた穢れによって暴走している。



「うーん・・それなんだけど怪人は人間よ。神の力を持った人間と言うべきかしら」



それは最近日本中で怪奇事件を起こしているバイトの関係者かもしれない。力を得て、暴走して人間だ。

そんな人間が怪人となるのだろう。



(妖怪の力を使うなら怪人で神の力を使うなら神人と言うのが正しいかな)


「神の力を持った人間は面倒よ。それを正しく使うなら問題ないけど、暴走しているなら荒神・・・祟り神と同じよ」


「それは厄介ですね」



祟り神は触れていい神では無い。『触らぬ神に祟り無し』なんて言葉があるのはまさに祟り神のことである。

白羅も祟り神に関わるのは嫌だと言っていたのを思い出す。



「面倒だけど関わるしかないですね。白羅さんにも相手が神の可能性だということを伝えないと」


「それなら今聞いたから大丈夫よ」



いつの間にか白羅が蛇津優を後ろから抱きしめていても驚かない。なぜなら蛇津優はもう慣れてしまったからだ。

何度も蛇津優は思う。慣れとは恐ろしいということをだ。それでも背中や頭に柔らかいものが当たるのはドキドキしてしまう。それは男の性として反応はしてしまうのであった。



「白羅さんいつの間に?」


「さっきよ。優君の帰りが遅いから探しに来てみればまさか女狐と逢引してたなんて・・・優君大丈夫?」


「大丈夫ですよ。怪人に襲われましたが異常はありません」


「いや、そうじゃなくて。そこの女狐に性的に食われてないかって意味での心配よ」


「何を言っているのですか」


「だってここ個室じゃない。それにこの女狐と2人きりなんて食ってくれと言っているようなものじゃない!!」


「そんなこと無いですよ。ね、美艶さん?」



顔向けたら良い笑顔で顔される。その笑顔がどっちの意味での笑顔かが分かってしまい、タラリと汗を流す。

もし、白羅が来なかった未来を考えてしまった。それはそれで男として掛かって来いの姿勢だが後が恐いのであった。



「それにしても私が優君と一緒にいない間に怪人に襲われるなんて・・・許せないわ!!」



怒りを表しコーヒーをいっきに飲み干す。



「こうなったらもう怪人とかに襲われても対処できるようにずっと優君と一緒にいるわ。お風呂もトイレも部屋も!!」


「お風呂とトイレは止めて下さい。それに部屋は既に一緒に居るじゃないですか」


「え、優君・・この白蛇と一緒の部屋で寝泊りしてるの!?」


「そうよこの女狐。羨ましいでしょう!!」


「く・・・同じ部屋で寝泊りなんて、もう襲われてるじゃない!!」



なぜか既に襲われていると思われていた。まさかそんなことは無いと思いたい蛇津優であったが白羅を見たらチロリと舌で唇を舐めた。

飲んでいたコーヒーの苦味が無味に変化した。自分の知らないうちに何をされたのか聞きたい。



「何したのですか白羅さん?」


「ちょっと・・・それは言えないわ」



頬を赤くしながらまたチロリと唇の舐めていた。



「本当に何をしたんですか!?」



まずは怪人の解決よりも白羅が蛇津優の知らぬ間に何をしたかの解決をすることとなった。



「ここ個室なんで言っても大丈夫ですよ」


「だって女狐がいるじゃない」


「美艶さんが居ても言えない事をしたのですか!?」



金曜日の放課後はまだ長い。


読んでくれてありがとうございます。

感想等待っています!!


ついに怪人と出遭った蛇津優。その怪人の正体は一体!?

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