七曜の物語 土曜日の王宮
王都の中心にある王宮では、連日にわたって新王主催で贅を尽くしたパーティが開かれていた。
「はっはっは! 素晴らしきかな! 素晴らしきかな!」
「どうされたのですか? 随分とご機嫌がよろしゅうようで」
「そうか? それは、そうであろう! わかってしまうか! 決まっておろう! 邪魔者が消えて私が頂点に立っているのだからな! さーさ! 皆の衆も無礼講だ! 今日も宴じゃ!」
お酒ですっかり出来上がり、顔を真っ赤にした王様は、周りに美しい女性をはべらせてかなり上機嫌だ。
王がこのような様子であることをいいことに、官僚たちは不正を働き、自らの自由のために大臣へ賄賂を渡すといったことが日常茶飯事的に横行していた。
「まったく、このままでは、国の先行きが……」
「バカ! いくら無礼講だからって、そんな話はまずいだろ!」
この宴に呼ばれながら、部屋の隅でこそこそと会話しているのは、前王の時代から王宮図書館で司書をやっている人物とその古くからの友人である。
司書は、前王を慕っていた人物の一人で今の王が就任した時、王宮を追放されそうになったのだが、図書館を管理できるのは司書だけだという周りからの訴えにより、何とか王宮に身を置けている人物だ。
前王の考え方を強く受けている影響でまじめに仕事をし、賄賂を受け取らない彼は王宮の中では非常に狭苦しい立場となっていたが、友人のようにお金がなく、賄賂を渡せるような余裕がないものたちにだけは、慕われていた。
「まぁ司書さんよ。そのうち、あんさんの考え方をわかってくれる人が増えてくるはずさ。それまでの辛抱だ」
「さぁな。私の考えなどに賛同する人間などほんの一握りだ。この場にいるほとんどの人間は、自らの私腹を肥やすことしか考えておらんよ」
彼が言うことは実に的を射ている。
そもそも、王宮がこのような状態になっている原因は、王が変わったというのがあげられるが、そもそも前王を暗殺するように今の王をそそのかしたのは、現在権力を握っている集団だ。
簡単に言ってしまえば、自らの権力を手に入れるためだけに前王を暗殺し、まるで前王よりも今の王の方が素晴らしいかのように仕立て上げているのだ。
これだけのために国の貴重な財産ともいえる魔術師を無駄に浪費し、結果、国を守る結界が薄れ始めて外から魔物の進行が少しずつではあるが始まっている。
それにもかかわらず、王宮ではいつも通りの宴会が開かれているのだ。
「あきらめろとは言わない。でも、希望は捨てないでくれ。ただ、それだけだ」
司書の友人は、それだけ言うと自らの仕事に戻って行った。
「希望は捨てないでくれ……か」
司書のつぶやいたひとことは、宴の喧騒の中に飲み込まれていった。