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愛の旋律
君を強く思い出す。
けれども、今ではその輪郭すら思い出せなくて。
僕は不幸を飾る作家なのだ。
だから、君は不幸の渦に呑まれた。
僕の傍にいたから、君が僕を愛したから。
もし、君が僕を愛してなどいなかったのなら、
君が死ぬことなどなかったのだろう。
僕は不幸を操る作家なのだ。
唯一残した作品は、僕たちの不幸の愛の旋律。
誰しもがその不幸に迷って、君をかわいそうだと思うんだ。
それでいいんだ。
それだけでいいんだ。
僕までそう思われれば、可愛そうだけではなく、惨めにまで思われるから。