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朽木はそんな僕を見て大笑いしていた。
「しょうがないな~」
「だって動いたんですよ」
「当たり前でしょ。まだ生きているんだから」
「生きてる?そんなバカな。骨なんですよ、骨」
「だから、落ち着いて聞きなさいよ。これは緋骨といって不老不死になった人間の成れの果ての姿よ」
「不老不死?そんなものあるはずが・・・」
「まあ、一般には知られていないというか、あまり、役に立たないから廃れたといったほうがいいかしら」
「役に立たないって?」
「緋骨になって不老不死になるにはいろいろ条件があって、まず一つ目は若い女性であること。二つ目は生まれが丙午であること。三つ目が儀式に耐えれること。ただ、不老不死になってもこの通り、骨だから見えない、聞こえない、しゃべれない。これじゃあ、不老不死になってもね・・・」
「ど、どうするんですか」
「どうって何が?」
「この骨ですよ」
「そうだな・・・残りの骨も見つけるってのはどう?」
「残り?」
「そうよ。なんたって不老不死なんだからきちんと全体の骨が残っているはずよ。それにこれは、弁財天の符がかけられているみたいだし」
「なんですか、その弁財天の符って」
朽木はため息をついた。
「財運が良くなるおまじないのこと。緋骨はバラバラにされるとまた一つになろうとする力が働く。そのうちの一つの骨を莫大な財宝と一緒に隠すと他の骨を持っているものに莫大な財宝と同じぐらいの財運が引き寄せられるというものよ」
すると、そばで聞き耳を立てていた玄さんが言った。
「俺の部屋に飾ろうかな」
朽木は笑いながら玄さんの肩をバンバンと叩いた。
「だめだめ、このまま持ち出したらすぐに見つかって持っていかれるよ。あの地下室にあったみたいに弁財天の符を施さないとだめだよ」
玄さんは不機嫌な声で言った。
「ここは大丈夫なのか?」
「だいじょうぶ、部屋全体で結界を作っているからね。その代わり、財運も防いでいるから、お金持ちにはなれないわ」
朽木は笑った。そして、緋骨の箱を元に戻した。
「ねえ、玄さん。あの地下室の作られた年代はわかった?」
「ん、まあ、大体のところしかわからんが、明治時代の中ごろだと思う」
「その頃から岩木家が住んでいたのかしら」
「その辺りはまだわかっていないな」
朽木は僕のほうに振り返っった。
「坊や、あの家について詳しく調べてきて」
「何を調べればいいんですか?」
「何時、建てられたのか。誰が建てたのか。そんなところかな。登記所にいってちゃちゃっと調べてきて」
「わかりました。それと、その坊やって言うのやめていただけませんか?」
朽木は妖艶な笑みを浮かべた。
「だ~め。だって気に入ってるんだから」
僕は諦めのため息を着きながらその部屋を後にした。