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「それで今回はなに?」
朽木は茨城総監に尋ねた。彼は真っ赤な色のファイルをテーブルの上に置いた。
「覚えているか?一ヶ月前にあった岩木物産の会長宅が火事で全焼。一家5人が行方不明になったやつだ」
「ええ、覚えてますよ。まだ見つかっていないんですよね」
「そうだ、遺体が火事で焼けた後はなかったし、足取りもつかめていない。煙のように消えてしまっている」
「で、何か出たの」
「現場あとを重機で片付けている最中に秘密の地下室が発見された。現場の写真はこれだ」
朽木は写真を見て言った。
「これはだいぶ古いタイプの結界ですね」
「そこで、ここの調査をしてもらいたい」
朽木は「はーい」と軽く返事をしてファイルを手にして部屋を出て行った。
僕は何がなんだかわからず、大きく会釈をして部屋を出て行く朽木の後についていった。
朽木はあたふたしている僕を見ながらニヤニヤと笑っている。
「さあ、現場に行くわよ、坊や」
「坊やじゃありません。保谷です」
と、強気のつもりで朽木に言い返したが、それは無駄だったことをすぐに感じ取った。
朽木に連れて行かれた現場にはすでに鑑識の車やら人間やらがいっぱい来ていた。問題の地下室の前にはメガネをかけた40代後半の男が立っていた。
「朽木さん、こっちこっち」
「お待たせ」
男は朽木を重機でぽっかりと空けた地下室への穴を指で指し示しながら言った。
「いやー、うちの若いのが言うことを聞かずに手を出して、あっちでのびていますよ」
「そんなに強いの」
「私の見た中では一番」
アルミの梯子が地下室への通路になっていた。