19
「なんで、拳銃を二つも持ってるんですか。警官といえども拳銃の携帯は一つだけでしょ。それって、違法ですよ」
「まあまあ、硬いこといわないで。これ、護身用だから」
朽木はそう言って、僕に拳銃を手渡した。
「小さいっていっても22口径だから身を守ることぐらい出来るはずよ」
「無理ですよ。僕、支給品のリボルバーしか、射撃訓練をしていないんですよ。これって、オートマチックですよね。撃ったことないです」
「大丈夫、大丈夫。引き金を引けば玉が出るところは一緒よ」
朽木はそのまま、本殿に向かって走り始めた。
僕は慌ててその後を追った。
しばらく参道を行くと鬱蒼とした木々が突然、途切れた。目の前には本殿であったはずのものが、現れた。
それは建物の半分が爆発で吹き飛ばされた、見るも無残な姿に成り果てていた。
「坊や注意して」
朽木の声が飛んできた。
僕はまだ、白い煙を黙々と上げている本殿の吹き飛ばされたところに目をやった。
煙の向こうに何か黒い人影のようなものが見えた。
「朽木さん、銅山です」
「どこ」
朽木が叫ぶ。
「本殿か裏側にある大きな岩のほうに人影が移動していくのが見えました」
「坊やは私を援護して、後ろから来て」
「わかりました」
僕は人影が走り去った大きな岩を注意しながら朽木の後を追った。
「パン」
乾いた銃声が鳴り響いた。
朽木はそばにあった小さな岩陰に隠れた。
僕はそばに植えられている小降りの松の木の影に身を寄せた。
大きな岩のほうを見た。そこは本殿裏に作られた庭園の一部だった。
脇には池があり、石灯籠がいくつか池の中に立っていた。