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ドアには鍵がかけられていた。当たり前のことだがそれを開ける鍵を僕は持っていない。

「朽木さん、どうするんですか?開きませんよ」

「何言ってるの。こんなときこそ、そのブレスレットをはずすときでしょ」

「へ、僕の力って鍵も開けられるんですか?今までにそんなことはなかったですよ」

「まあね、その力ってあることをしないと開花しないからね」

「なんですか?そのあることって」

朽木はへらへらと笑っていた。

「笑っていないで、教えてくださいよ」

「聞いて、怒らないでね」

「怒る?なんですかそれ?」

「実はね、いろいろな秘薬を毎日のお茶に混ぜてたんだよね・・」

「えっ」

「でもいいでしょ、力が出るようになったんだから。それに最後には・・・キスもしてやったんだから」

「へっ」

「坊やが奇怪課で居眠りしてるときにぶちゅ~とね。そうしないと解師にならないんだもの」

「何でキスなんですか?」

「いや、ただ単に口移しにしなければいけない薬があっただけで、キスがしたかったわけではないのよ」

「いや、なんだか遠まわしに嫌なことだったけれども我慢してキスをしたと聞こえるんですが・・」

電光石火のごとく朽木の平手打ちが僕の左ほほにクリーンヒットした。

「あのね、あれって初めてだったんだからね。貴重なものだったんだから」

真っ赤な顔をする朽木の顔がマグライトの光の向こうにあった。いつもの朽木とは違う姿だったような気がした。たぶん、気がしただけだったと思う。

僕はリュックを朽木に渡し、ブレスレットをはずした。

扉の取っ手を握る。しばらくすると「ガチャリ」と重い音がして鍵が開いた。

重い鉄の扉を開ける。

中からは今までの通路とは違う別な匂いがした。

マグライトで照らす。以前、緋骨を発見した地下室と同じ構造の部屋だった。

部屋の中央には四本の柱と台座、御札の貼られた石棺が在った。

「朽木さん、あれって緋骨を収めてあるやつですよね」

「確かに、前のと同じね。坊や、とりあえず、石棺までの封印は解いておいて」

「いいんですか?封印を解くと面倒なことになりませんか?」

「中の木箱の封印が残っていれば何とかなるから」

朽木はそういうと緋骨の入っているリュックから何かを取り出した。それは緋骨を巻いている包帯のように文字が書かれた風呂敷のような布だった。

「これで箱を包めばしばらくは大丈夫。それにしても、こんな所に緋骨があったなんてね。びっくりだわ」

「ここって、地上でどの辺りなんでしょう」

「そうね、正確な位置はわからないけれど、たぶん、松涛美術館の辺りじゃないかしら」

「だとすると、誰かが財運を独り占めしていたわけではないんですね」

「もともと立っていた建物はもうなくなってしまったから、緋骨によって誰かが利益を得たわけではないみたいだけど、この辺は金持ちの住処だから少しは効果があるのかもね」

「それにしても、緋骨が無事でよかったですね」

「まあ、斉藤銅山を名乗る人物は専門家ではないみたいだし、ここまで細かく調査が出来ないんじゃないかな」

「ところで、緋骨って後何体あるのかな・・」

「それは緋骨に聴いてみれば」

朽木はブレスレットを元に戻した僕にリュックを手渡した。

背中に背負うとリュックの中で緋骨が僕の質問に答えるように背中を叩いた。

「トン、トン、トン、トン」

「あと四体か」

僕はつぶやいた。

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