13
危うく緋骨をバラバラにするところだった朽木をようやくなだめ、僕ははたと考えた。
もしかして、他の緋骨の場所をこの緋骨は感じ取ることが出来るのではないか?
早速朽木に相談してみた。
「それは考えられることだけど、結界から出してしまうと居場所を察知されるわよ」
「誰にですか?」
「ったく、今探してる斉藤銅山にしろある程度、力のある術者、結界師、陰陽師の類ならすぐに探し出されてしまうわよ」
「うん・・・だけど、もし他の緋骨の隠し場所がわかれば、あるいは斉藤銅山を待ち伏せることも出来ると思うんですけど・・」
「それはそれでいい考えかも」
朽木はしばらく考えてはいたが、僕の提案に乗っかることになった。
「ただし、フミさんのところに行って、相談してからね。下手に動くとこの緋骨までなくすことになるから」
朽木はそう言って部屋を後にした。
僕はそのまま、奇怪課に戻った。
しばらくして、朽木も戻ってきた。その手にはハンバーガーとシェイクのレシートが握られていた。
「はい、支払いお願いね」
レシートを見るとハンバーガーの一番高いやつが5個とシェイクが3杯分の値段が印字されていた。
「朽木さん、これって約束が・・・」
慌てた僕の前に朽木は文字が書かれている包帯のようなものを放り出した。
「これを緋骨にまいたほうがいいって、フミさんが言っていたから・・」
そういいながら、朽木は勝手の僕の財布を取り出して中からお金を抜き取った。
僕は渋谷のハチ公前に立っていた。布製のリュックサックをグレーのスーツの上に背負っている。
どう見ても変だ。オタクにも見えないし、ましてや、サラリーマンには決して見えない姿だ。
なぜ、僕がこんな格好でここにいるのか?
時間を戻す。
朽木がフミさんからもらってきた包帯のようなものを緋骨に巻いたところから始まる。
以前よりも元気に動き回る緋骨。どうも朽木には敵対心があるようで、何かにつけて中指を立てて威嚇している。
どうやら、緋骨は僕の何かに反応して、周りとのコミュニケーションを取れるらしい。
試しに他の緋骨の場所がわかるか聞いてみると、親指を立てて誇らしげにしている。
ただ、それがどこなのか、言葉がないのでわからない。緋骨は人差し指で方向を示すが、人前でこの緋骨を取り出して方向を確認するのは無理だと判断した。
そこで、朽木が考え出したのがあの布製のリュックサックだった。
緋骨をリュックに入れて外に出る。方向などは緋骨の指先が僕の背中に矢印を書くことで知る。
自画自賛する朽木だったが僕の神妙ないでたちについては何にも気にしていなかった。
かくして、僕は緋骨の言うなりにこの渋谷へとやってきたのだった。