爆食! 楽園の絶品グルメ争奪戦
ルナリアの呪いを解き、楽園に再び平和が訪れてから数日。
世界樹の若木からは、清らかな魔力の雫が絶え間なく溢れ出し、森の浄化はさらに加速していた。
「……ふふ。みんな、今日も仲良しだね」
私が微笑ましく見つめる先では、長身のルナリアが私の背後にぴったりと張り付き、その柔らかな身体を惜しげもなく押し付けていた。一度心を通わせてからというもの、彼女の「密着度」は以前の数倍に跳ね上がっている。
「……当然ですわ。アリシア様は、私の魂の半分なのですから。精霊たちも、ずっとこうしているべきだと言っています……」
ルナリアの細い指が私の頬をなでる。そんな光景に、シノブが黙っているはずもなかった。
「アイヤー! ルナリア殿だけずるいでござる! 拙者も、アリシア殿の『癒やしの波動』を全身で浴びたいでござるよ!」
シノブがポニーテールを振り乱して突っ込んでくる。その細身な身体に似合わない豊かな双丘――自慢のEカップが、走るたびに忍装束を弾かんばかりに揺れていた。
「ちょっと、あんたたち! はしたないですわよ!」
フェリシアがスレンダーな肢体を揺らしながら、ため息をつく。
だが、そんな賑やかな昼下がりをぶち壊すように、一際大きな「お腹の音」が響き渡った。
ぐぅぅぅぅぅ……。
音の主は、地面に転がっていたメイリンだった。彼女は空になった酒瓶を寂しそうに眺め、虚ろな瞳で私を見上げた。
「……アリシア……。お酒……お酒がもう一滴もないアル……。それに、修行(組手)をしすぎて、お腹と背中がくっつきそうネ……。私、このままじゃシラフに戻って、恥ずかしさで死んじゃうアル……っ!」
◆ ◆ ◆
メイリンの切実な(?)訴えにより、私たちは森の深部へと食材探しに向かうことになった。
目指すは、伝説の『極楽茸』と、神の魔力を吸って熟成した『龍の果実』。
「シノブ、偵察をお願いできる?」
「任せてほしいでござる! 拙者の『忍法・千里眼』なら、美味しい食材も、アリシア殿の服の下の……おっと、これは秘密でござるな! ニシシ!」
シノブは不敵に笑うと、木々を飛び移りながら森の奥へと消えていった。
しばらく進むと、甘い香りが漂う開けた場所に出た。そこには、宝石のように輝く果実が実る巨木と――それを守るように鎮座する、巨大な『クリスタル・スライム』の姿があった。
「アイヤー! あれネ! あのスライムの中にある果実、最高に美味しいお酒になるアルよ!」
メイリンが目を輝かせ、チャイナドレスのスリットから引き締まった脚をのぞかせて構える。
だが、そのスライムは、ただの魔物ではなかった。
「……気をつけなさい。あれは、侵入者の『欲望』を増幅させて物理化する、厄介な性質を持っていますわ」
フェリシアが警告を発した瞬間、スライムの表面が波打ち、無数の触手のような粘液を伸ばしてきた。
「拙者の出番でござる! アリシア殿、拙者の『派手な活躍』、とくとご覧あれ! 忍法――『秘技・吸着縛り』でござる!」
シノブが印を組み、スライムに向かって飛びかかる。
彼女が放ったのは、特殊な魔力を帯びた粘着性の糸。……のはずだったが。
「……あれ? 忍法が……スライムの欲望に反転させられたでござる!?」
スライムが放った粘液が、シノブの放った糸と混ざり合い、あろうことか近くにいた私とシノブをひとまとめに絡めとったのだ。
◆ ◆ ◆
「きゃっ!? な、なにこれ……動けない!」
「 す、すまんでござる、アリシア殿! 拙者の『アリシア殿と密着したい』という煩悩が、術に混ざってしまったでござるぅ!」
絡みついた粘液は、まるでお互いの肌を吸い寄せるように強力で、私とシノブは正面から抱き合う形で完全に固定されてしまった。
シノブの細いウエストと、私の身体が隙間なく密着する。そして何より、彼女の豊かなEカップが、私のCカップの胸をむぎゅっと押し潰していた。
「ひぅ……。シノブ、熱いよ……。あと、胸が……苦しい……っ」
「んぅ……っ。拙者も……拙者も、アリシア殿の柔らかい感触がダイレクトに伝わってきて、忍道が崩壊しそうでござる……! ああ、でも……このまま一生解けなくてもいいかもしれないでござる……っ!」
シノブの顔が真っ赤になり、鼻息が荒くなる。オープンスケベな彼女も、ここまで密着すると余裕がなくなるのか、瞳がとろんと潤んでいた。
「ちょっと! 何やってるんですの、あの地味忍者! わたくしを差し置いて、そんな破廉恥な……っ!」
「……許せません。精霊たちよ、あの粘液だけを焼き払いなさい。……シノブだけ、少し焦げても構いませんから」
フェリシアとルナリアが嫉妬の炎を燃やしながら加勢し、スライムを瞬く間に粉砕した。
粘液が消え、私たちは地面に転がる。
「……はぁ、はぁ。……死ぬかと思ったでござる。……でも、アリシア殿、今の……『共同作業』、最高に派手でござったな?」
シノブが、はだけた忍装束を直すことも忘れ、恍惚とした表情で私を見つめてくる。
まったく、この忍者は……。
◆ ◆ ◆
キャンプに戻り、私たちは手に入れた食材で宴を始めた。
メイリンが手際よく調理した『極楽茸』の炒め物と、私が魔力を注いで熟成させた『龍の果実酒』。
「アイヤー! 生き返るアル! お姉さんのお酒、世界一ネ!」
メイリンは再び泥酔モードに入り、私の肩に頭を乗せて甘え始める。
ルナリアは私の膝を枕にし、フェリシアは私の隣で、お茶を飲むふりをしながら私の服の裾をぎゅっと握っていた。
「……アリシア。……今日のこと、忘れないでくださいませね。わたくしだって……その、あんたとあんな風に……っ」
フェリシアが顔を赤くして俯く。
シノブはといえば、「拙者、明日はもっと凄い『密着忍法』を開発するでござるよ!」と鼻息を荒くしている。
賑やかで、少しだけ淫らな、楽園の夜。
私は、四人の温もりを感じながら、幸せを噛み締めていた。
だが、そんな宴の最中。
ルナリアが、ふと森の入り口の方を向いて目を細めた。
「……アリシア様。……招かれざる客が、すぐそこまで来ています。……今度は、ただの先遣隊ではないようですわ」
ルナリアの言葉に、宴の空気が一変する。
森の外。
王国の旗を掲げた、本格的な『討伐軍』が軍勢を整えていた。
その中心には、カイル王子の姿と――そして、冷酷な笑みを浮かべるミーナの姿があった。
「……さあ、始めましょう。裏切り者の聖女に、絶望という名の引導を渡してあげるわ」
ミーナの手元で、黒い水晶が今までになく不気味な光を放っていた。




