お姉様の教育的指導。一対四の愛の試練
エルセお姉様の「泡」の結界に阻まれ、島の上陸地点に取り残された四人のヒロインたち。
霧の向こう側から聞こえてくる、アリシアの甘い喘ぎ声と、エルセの慈愛に満ちた(けれど独占欲の強い)囁きに、四人の堪忍袋の緒がついに限界を迎えていた。
「……これほど濃密な魔力の霧、私の『天界流』でも拳圧で散らすのは難しいようです。……叩き割れるような岩壁なら、すぐにでも道を穿ってアリシア様をお助けできたのですが。……あ、いえ、今の物騒な発言は忘れてください。淑女らしからぬ言葉でした」
メイリンが顔を真っ赤にしながら、キュッと拳を握りしめる。彼女にとって、愛する人を目の前で連れ去られたもどかしさは、その「拳」の行き場を失わせるのに十分だった。
「拙者、もう我慢の限界でござるよ! アリシア殿の初めての添い寝がどうとか、そんな昔話を今更持ち出すなんて派手な宣戦布告でござる! 出てくるでござるよ、お姉様殿!」
シノブがポニーテールを逆立たせて叫ぶ。自慢のEカップが、怒りの呼吸に合わせて激しく上下していた。
「……ふん。わたくしも、あのような『余裕』を気取った女、一番嫌いですわ。わたくしたちがアリシアと築き上げた絆、思い知らせてやりましょう」
フェリシアがスレンダーな指先で氷の魔力を練り上げる。ルナリアも無言で精霊たちを呼び集め、その長身から威圧的なオーラを放っていた。
◆ ◆ ◆
「――あら。随分と威勢がいいのね。……アリシアは今、わたくしの膝の上でぐっすり眠っているわよ?」
霧がふわりと晴れ、そこには一人の女性――エルセ・ローウェルが、優雅な所作で立っていた。
しなやかな長身に、ルナリアと同じくらいの柔らかそうな胸。彼女は四人を「子供」を見るような瞳で見つめ、薄く微笑んだ。
「お姉様殿! アリシア殿をどこへやったでござるか!」
「お姉様……? ふふ、わたくしをそう呼んでくれるのね。いいわよ、認めてあげても。……ただし、アリシアの『隣』に立つ資格があるかどうか、わたくしが試させてもらうけれど」
エルセが指をパチンと鳴らすと、彼女の周りに無数の透き通った『泡』が浮かび上がった。
「一対四。全員まとめてかかってきなさい。……わたくしに一撃でも掠らせることができたら、アリシアとの『続き』を少しだけ見せてあげてもいいわ」
「続き……!? 拙者、絶対に見るでござるよおぉぉ!」
シノブが真っ先に飛び出した。目にも留まらぬ速さでクナイを放ち、爆破忍法を仕掛ける。同時にメイリンが地を蹴り、スリットから覗く脚で神速の蹴りを放った。
――けれど。
「――『泡消』」
エルセが静かに呟くと、シノブの爆発も、メイリンの渾身の蹴りも、すべてがふわりと浮かぶ泡に包まれ、弾けるように消滅してしまった。
「なっ……拙者の忍法が、無効化されたでござる!?」
「……私の拳が、空を打ったような感覚……?」
驚愕する二人の背後から、フェリシアの氷槍と、ルナリアの精霊魔法が襲いかかる。しかし、エルセはそれらを優雅にダンスを踊るような動きで躱し、泡を弾けさせて四人の身体を優しく、けれど強引に拘束していった。
◆ ◆ ◆
「……っ、ん、ああぁっ……! なに、この泡……力が、抜けて……っ!」
泡に包まれたシノブが、身体をくねらせて喘ぐ。
エルセの権能『深海の追憶』。それは、触れた者の魔力を散らすだけでなく、その魂を「海に抱かれたような安らぎ」で強制的に弛緩させる力。
「あらあら。シノブさんは少し活発すぎるわね。……この泡の中で、少しだけ大人しくしていましょうね?」
エルセは、動けなくなった四人の間をゆったりと歩く。
シノブの豊かな胸、フェリシアのスレンダーな腹筋、メイリンの引き締まった脚、そしてルナリアの柔らかな曲線。
「ふふ、どの子もアリシアが愛しただけのことはあるわ。……でも、アリシアを幸せにするには、まだ『熱』が足りないわね。……お姉様が、直々に『熱の入れ方』を教えてあげるわ」
エルセの指先が、泡越しに彼女たちの敏感な場所をなぞる。
「ひぅ、ん……っ! 嘘、でしょ……敵から、こんな……っ!」
フェリシアが顔を真っ赤にして声を漏らす。
エルセは四人のヒロインを翻弄しながら、その圧倒的な「姉の余裕」で戦場をエロティックな教練の場へと変えてしまった。
◆ ◆ ◆
一方その頃、島の奥で目を覚ました私は、霧の向こうから聞こえてくるシノブたちの「情けない声」に首を傾げていた。
「……あれ? みんな、どうしたんだろう」
私は、エルセお姉様が残していった『花の衣』を纏い、声のする方へと歩き出す。
そこで目にしたのは――。
泡に閉じ込められ、お姉様にいいように愛でられて蕩けている、四人の仲間たちの姿だった。
「……アリシア。……おはよう。……ちょうど今、この子たちの『教育』が終わったところよ」
エルセが、私を振り返って微笑む。
一対四の愛の試練。
結果は、お姉様の圧勝。……そして、なぜか四人のヒロインたちは、お姉様への恐怖の裏側に、言いようのない「敗北感と快感」を刻まれてしまったようだった。
「……アリシア殿……拙者、お姉様殿には、勝てない気がするでごじゃる……」
シノブの情けないセリフに、私は苦笑いするしかなかった。




