楽園の秘め事。四つの愛に溺れて
戦いの余韻が残る楽園の夜は、驚くほど静かで、そして芳醇な香りに満ちていた。
世界樹の若木から溢れ出す黄金の雫が、周囲の花々を狂い咲かせ、大気は肌に吸い付くような濃密な魔力を帯びている。
「……あ、熱い。……身体が、どうにかなっちゃいそう」
私は、植物が編み上げた柔らかな大床の上で、浅い息を繰り返していた。
一万の軍勢を退けた代償か、あるいは世界樹が私の昂ぶりに呼応したのか。全身を駆け巡る神の魔力が、出口を求めて疼いている。
「……アリシア殿。……拙者が、その熱を逃がしてあげるでござるよ」
最初に忍び寄ってきたのは、シノブだった。
月光に照らされた彼女の肌は、汗ばんで真珠のような光沢を放っている。腰まであるポニーテールを解き、艶やかな黒髪を散らした彼女は、忍装束の胸元を大胆に寛げ、私の上にのしかかってきた。
「んっ……シノブ……」
「拙者の身体、よく見てほしいでござる。……裏切り者の拙者を、アリシア殿は『綺麗だ』と言ってくれた。……だから、拙者の全部を、貴殿に捧げるでござる!」
細いウエストからは想像もつかない、豊満な双丘――彼女自慢のEカップが、私の胸に重なり、むぎゅりと形を変える。シノブの熱い鼓動が、私のCカップの胸越しに、直接魂を叩くように響いた。
彼女の指先が、私の寝間着の隙間から滑り込み、火照った肌をなぞる。
「あ……はぁっ……! シノブ、指が……っ」
「ニシシ、これぞ不知火流・愛撫の術でござるよ。……アリシア殿、そんなに震えて……可愛いすぎでござる!」
◆ ◆ ◆
「……シノブばかり、ずるいですわ。……わたくしも、もう限界ですのよ?」
反対側から、ひんやりとした、けれど情熱を秘めた肌が密着してくる。
フェリシアだ。彼女のスレンダーな身体は、シノブとは対照的に鋭く、けれど驚くほどしなやかだった。
彼女は私の首筋に鼻を寄せ、甘い吐息とともに、小さく牙を覗かせる。
「……フェリシア……。また、『吸い合い』……する?」
「当たり前ですわ。……わたくしの中は、今、あんたが欲しくて堪りませんの。……さあ、わたくしの奥まで、あんたの愛を流し込みなさいな」
フェリシアの牙が、私のうなじに優しく触れる。
瞬間、魔力の回路が繋がり、私の中に溜まった熱い奔流が彼女の中へと逆流していく。
「あ……ぁ、ああぁっ……! なに、これ……っ! 今日のは、今までよりずっと……濃いですわ……っ!」
フェリシアの身体が弓なりに反り、私の腕の中で激しく震える。
彼女の平坦な胸元が私の肌に擦れ、その繊細な刺激が、シノブの柔らかな圧迫感と相まって、私を快感の迷宮へと誘っていく。
◆ ◆ ◆
「……アイヤー! お姉さんたち、楽しそうネ! 私も、混ぜるアルよ!」
背後から、酒の香りを纏った熱い塊が飛び込んできた。
メイリンだ。酔って大胆になった彼女は、チャイナドレスのスリットから引き締まった足を覗かせ、私の腰に自分の足を絡めてくる。
「め、メイリンまで……っ。ふぅ、ん……っ!」
「お姉さんの身体、すごくいい匂いするアル……。私、これ食べちゃいたいネ! 修行、開始アルよ!」
メイリンの、鍛え抜かれたしなやかな指が、私の敏感な場所を容赦なく捉える。
Bカップの小ぶりながらも弾力のある胸が背中に押し付けられ、彼女の生命力そのもののような熱が、私の中へと伝染していく。
「ん、ぁ……っ! 身体が……溶けちゃう……誰か……っ!」
混ざり合う三人の吐息。三人の熱。
けれど、本当の「極致」は、ここからだった。
◆ ◆ ◆
「……ふふ。……アリシア様。……みなさんの愛、すべて私にも分けてくださいね?」
最後に現れたのは、ルナリアだった。
長身の彼女は、慈愛に満ちた、けれどどこか狂気を孕んだ瞳で私たちを見下ろしていた。
彼女が私の額にそっと触れた瞬間――。
「……っ!! あ、あああぁぁぁ……っ!!」
『感覚共有』。
ルナリアの精霊魔法が、その場の五人の感覚を一つに繋ぎ合わせた。
シノブが私の胸を愛でる快感も、フェリシアが魔力を吸い上げる悦びも、メイリンが私の肌を貪る熱も。
すべてが、五倍に増幅されて、私一人の脳内に、そして彼女たちの脳内に直接流れ込んでくる。
「ん、あぁ……っ! アリシア様が……感じていること、全部……私の中にも……っ!」
ルナリアが、私の身体の上から覆いかぶさるようにして、その柔らかな長身の身体を密着させる。
五人の手足が絡み合い、もはや誰が誰の身体を触っているのかも分からない。
ただ、そこにあるのは――。
アリシアという中心を巡る、終わりのない快楽の輪。
シノブの悶絶するような吐息が私の口内を灼き、フェリシアの震える指が私の意識を飛ばし、メイリンの熱い肌が私を現実から引き剥がす。
そしてルナリアの重すぎる愛が、そのすべてを繋ぎ止め、永遠に続く絶頂へと私たちを突き落としていく。
「はぁっ、はぁ……っ! みんな……大好き……っ! 私、もう……っ!」
黄金の光が舞う中、私たちは重なり合ったまま、幾度も、幾度も、意識が真っ白になるほどの波に飲み込まれていった。
◆ ◆ ◆
夜が明ける頃。
世界樹の下には、絡み合ったまま深い眠りにつく、五人の美しい少女たちの姿があった。
アリシアを中心に、シノブの腕の中、フェリシアの膝の上、メイリンの体温に包まれ、ルナリアの翼のような長い髪に守られて。
その時。
アリシアの胸の中で、世界樹の核となったあの『種』が、黄金の光を一際強く放った。
愛の魔力で満たされたその種は、ついに真の覚醒を迎えようとしている。
王国の滅亡。偽聖女の最期。
そして、この楽園が迎える、本当の『終焉』へのカウントダウン。
けれど、今はまだ。
愛し合う彼女たちの寝息だけが、静かに楽園に響いていた。




