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(第6章 永すぎた春の末に不倫)

結婚していない女には世間の目はキツい。「売れ残り」というレッテルを貼り、「寂しい女だ」と決めつけて、「かわいそうに」と冷笑する。「男日照り」とか、「欲求不満なのではないか」と噂をし、イヤラシイ想像を張り巡らせて愚弄する。

いきなり態度の変わった彼とは、本当に「永すぎた春」という感じで結婚するでもなく七年も付き合って別れた。その後すぐ彼は、若い女と、あっさり結婚した。そんなこともあって、四人の中で、由美だけは、独身貴族。声をかけて来るのは既婚者ばかり。それでも、一人で食事をするのも寂しいし、休みの日にデートもなく誰からも気にしてもらえないのは、いたたまれなくなっていた。

その時、気が合って優しくしてくれた上司と、深い関係になってしまった。不倫なんて、するつもりは無かったのだが、たまたま好きになったら妻子持ちだったのだから仕方ない。気がついたら三十代。まだまだ若いと思っていたが、肌のハリも、潤いも二十代とは全然違う。どれだけ高いヒールで闊歩してみても、ミニスカートなどで綺麗な足を見せびらかせたのは昔の話。歩くと男性達の視線が痛かったのに、今は気にもしてくれない。

女性にとって加齢が、こんなに残酷なものだとは知らなかった。いや、自分が三十歳にもなって結婚が出来ないなんてことは想像さえしなかった。ずっと売り手市場だったが、まるで潮が引くみたいに、男性達のお誘いは無くなった。

器量が、由美よりも悪くたって、若ければ男性達は、そちらになびく。美しく、あれだけモテていただけに周囲の目は憐んでいるようにも思えて、いたたまれなかった。

特に三十五歳というのは女にとっては微妙な年齢。四捨五入すれば四十歳だし、昔ならマル高と言われ、「出産もリスクがあるので気をつけるよう。」と言われるようになる。実際、初めてのお産だと難産になることが多いのは事実。キャリアウーマンが増え、女性は三十五歳が結婚適齢期だと信じ切って、呑気に独身生活をエンジョイしている女子がいるのは驚くばかりだ。男からすると、二十五歳までが結婚適齢期。若ければ若い程、ウェルカムなのだ。親や周囲の人が、大学卒だとか、社会経験がなければならないと言うので、気がつけば、目の前に二十五歳は迫っている。

学歴とかにこだわるのは、生まれた子供の知能を考えるからだろう。しかし、動物的には、男は十七歳位の若い女性に一番魅力を感じるそうだ。動物的な勘で、フレッシュな卵の臭いを嗅ぎ分けているのか?それなのに、女性は仕事に夢中で、気が付けば三十代。結婚が遅くなって、出産率も低くなっている。しかし、結婚できないのも、出産率が低いのも、女性の社会進出のせいだけではなさそうだ。子だくさんな時代の女性は貧乏の中でも、沢山の子供を産み育てていたのだから。親や周囲が、独身でいる方がいいと思って、いつまでも結婚しない子供たちを野放しにしたせいもある。豊かになった代償に『変な男と結婚する位なら、独身で苦労などさせたくない』と思う親も多い。

時代に翻弄され、虐げられた母親たちは、キャリアウーマンに、女性の自立という夢を娘たちに見たのかも知れない。しかし、結婚して、夫の稼ぎで安心して子育てするというカタチを否定したために、かえって女性は社会でも家庭でも働きづめという悲劇を招いた。

仕事の方が好きな女性も多い。家事の得意な男性もいる。しかし、子供を産み育てるのは女しかできない。母性本能も、男性には沸き上がって来ない感覚なのだから。

女は母親になると、別の生き物に変わったように子供のためなら命をかけて守ることもできる。子供に、どれだけ裏切られても、腹が立っても許してしまう。可愛くて仕方ない。どんなに年老いても、母親は無償の愛で子供に尽くすことが出来る。そして、子供も親になって初めて気づくのだろう。どれだけ、愛情をかけてもらっていたか?どれだけ大切に思ってくれていたのか?説教も苦言も心配すればこそ。怒るのにも、かなりのエネルギーを要することを子育てして初めて実感することだろう。そして、悲しい程の親の想いに気づいた時、晴れがましい自信がみなぎってくる筈。同時に、自然と沸き上がる感謝の気持ち。しかし、親が生きていたなら良いのだが、婚期の遅れた、あるいは結婚しない子供たちには一生恩返しなどできない。

家族を作らないという選択は、確かに背負わなければならない責任もない。でも、何の苦労も無い人生は、楽だろうが何も生まない。次へと繋がることはない。自分の命をかけて産み落とした命は、かけがえのない未来を創る宝物。たった一人で、子孫も残さず社会に迷惑をかけて孤独死する人も跡を絶たない現在。

結婚するなら今だと由美にもわかっていた。バツイチでも年下でも、贅沢は言えない。パートナー探しは困難を極めるだろうが、父亡き後には、帰る実家もない。弟夫婦の世話になっている母を引き取っても、由美の給料では養ってはいけない。独身女性は、税金も高いし、世間も甘くない。せめて、シングルマザーでもなれたら、福祉や社会の援助もあるようだが。仕事や才能のある女性なら生涯、世間は大切にしてくれるのだろうか?一人ぼっちで、病気をしたら?仕事を解雇されたら?親がいなくなったら?弟夫婦の厄介になるほど、仲良く付き合ってはいない。きっと、嫁さんは嫌がるだろう。母の面倒だって、文句を言っているのだから。四十歳までの一年一年がカウントダウンのように、由美を追い詰める。四十歳になると、女は急に恋をしたくなるそうだ。最後の女としての性が騒ぎ出す。もう女として扱ってくれない主人との生活に疑問を感じ、不倫する女性が多いらしい。

しかし、四十歳を過ぎたら、周囲の人も「子供を作れ」とは言わなくなる。体力的にもリスクが高い上に、たとえ生まれたとしても子供が二十歳になった時の親の年齢を考えると絶望的なことが多いからだ。



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