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第2章 下弦の月(浮気、愛が欠けていく)

毎年行われる女子会も、35歳となると、そろそろ集まるのが難しくなる。子供が出来たり、結婚相手によって状況も変わるし、学生時代のようにはいかない。

15年前は輝くばかりに美しかった4人も、さすがに住む世界の違いが洋服にも容姿にも変化を見せていた。

医者と結婚した上田知恵は、その美しい足を誇っているかのようにルブタンの高いヒールを履いて、それに似合った最新のブランドで身を固めている。上流階級だと主張しているかのように、時計もバッグも隙がない。それに西岡由美は、唯一の独身貴族なのだが、キャリアウーマンらしくスーツ姿にハイヒール。学生時代から財布もカバンも、小物はヴィトンしか持たないというこだわりが変わらないようだ。この2人のヒールの高さは、彼女たちのプライドの高さのようにも映る。宮坂晴子だけが、やたら所帯じみていて、他の3人とは別世界に住んでいるかのように地味な格好をしていた。多分、その辺のスーパーでセールで買ったかのような洋服だったし、バッグも千円均一のワゴンにでもあった物のようだった。

以前は一番美しかったのに、平凡な生活に憧れ、2人の子供に恵まれ幸せだと言うが、生活苦というか貧乏なのが、どことなく臭ってくるのが痛々しい。

矢島裕子だけは、昔と同じフェミニンなデザイナーズブランドに身を包み、少女のようなあどけない顔をしている。4人の中で一番若く見えるのは、婿養子の旦那が6歳下のバンドマンで、まだ子供がいないせいかも知れない。知恵と晴子には子供がいるので、つい子育ての話になって、独身の由美や子供のいない裕子を白けさせてしまう。

知恵と裕子は、セレブらしく超豪華なレストランやブランドや、パーティで知り合った共通の知人の話で盛り上がる。なので、由美だけが結婚もしないで自由に仕事に充実していると、皆から思われ、嫉妬すらされているのだが、35歳になるとそれも風向きが悪い。

共通の話題もないし、接客で身に付いた処世術で話に乗っているが、本当はつまらなかった。しかし、この女子会に行っている間は、学生時代の自分に出会える気がして、つい来てしまう。結婚しても、益々美しくイキイキと活躍している知恵や裕子と会うと、束の間セレブな気分を味わえるのだ。

裕子が選んだお店も、お洒落で、来ている人も上品で風格のある方が多かった。隠れ家のような一軒家で、どこにも店名もメニューも無かった。座れば、オススメのコースがタイミング良く運ばれて来る。飲み物も、好きな物を好きなだけオーダーできるようになっていて、5千円というのは破格値だと思う。

裕子の父が常連らしく、足りない分は出してくれているらしい。そんな事はお首にも出さないが、由美が気に入って、次に使いたい時にいくらぐらいするものかと聞くと、法外な値段だったのに驚いたらしく、裕子が席を立った時に皆に教えてくれたのだ。ビールもエビスかプレミアム、地ビールしか置いていないし、ワインもボトルで原価でも6,000円以上のものしか見当たらない。飲み物だけでも、一杯バーで飲むと軽く千円は超える。

由美の好きなスペインのカバも置いてあった。それも上質なものを。これと生ハムとの相性は格別だったのだ。落ち着いた店内で、4人は一番賑やかだった。さすがに毎年訪れるものだから顔見知りになって、店員の愛想がいい。

「もう10年になるんですね。あんなに可愛らしかったお嬢様方が、立派な奥様になられて。毎年、お越しになるのを楽しみにしているのですよ」と、オーナーらしき初老の男性が歓待してくれる。

「ここの料理が食べたくって。今日は、どんな珍しい味に出会えるかと思うと、昨日から眠れなかったわ」と由美が快活に話している。

いくらかかるかわからないお店で食事が出来る身分になりたいものだが、きっとそれが許されるのは知恵と裕子ぐらいだろう。晴子も由美も裕福な家に生まれたお嬢様には変わりなかったが、田舎と都会の金持ちのレベルは違い過ぎた。特に、大阪の中心地にビルや不動産を代々所有している矢島財閥は、経営者なら誰でも知っている名家だ。知恵が結婚した上田病院の医院長の息子も、医者の家系で、医師会でも一目置かれている心臓外科では有名な所だ。

海外からの輸入に押されて衰退気味の繊維工業を福井で営んでいる由美の実家は、敷地面積では2人の家よりも広かったが、父が死去してからは弟が事業を受け継いでいるものの、以前のような勢いは無い。職業婦人に憧れてキャリアウーマンをしている風に思われているが、働いている会社も父のコネで入ったファッションメーカーだった。デザインやファッションに興味があったのは本当だったが、ずっと前に自分の才能の無さは思い知っている。そういう意味で、好きで仕事をバリバリしているわけでもない。実家からの支援が無くなって、結婚もしていない由美は、働かなければ食べて行けない状況だった。


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