罪深き無邪気
レースブラへと進化したブラを、私は、罪悪感を感じながら見上げていると、
「おう、タロタロ」と、私のブラにレースを施したであろう美形兄弟の弟、二郎の声。
振り向くと、やはり二郎だった。
「これ⋯⋯」私はレースブラを指してみる。
「おう!お前にも付けてやったぜ!どうだ?少しは、マシな見た目になったろ?」
金髪翠眼、とんでもない美形。
ニカっと笑った二郎が眩しい!
ああ⋯⋯っ!なんだかめちゃめちゃ罪悪感!
(ごめん!二郎!着けてるレースブラが似合ってる、なんて言って!まったく本心じゃなかったの!私は、ただ、薪割り要員が欲しかっただけだったの⋯⋯!)
と、言えたらどんなに楽か。
しかし、私は言えてスッキリしても、この懐いた犬みたいな二郎は、それを聞いたら途端にしょんぼりするよね。
(しょんぼりしたワンコなんて⋯⋯可哀想じゃない)
結局、言えなかった。
「うん!すっごく素敵!二郎ったらなんでも出来て凄いのね!それに、この前、雨降った翌日、瓶も家の中に入れてくれたんでしょ?おかげで助かっちゃった!」
こうして、人は、嘘に嘘を重ねて、取り返しがつかなくなるのね。
まあ、レース装飾も水が入った瓶の移動も、有難いのは本心なんだけど。
(けど、君が今日も着けてるブラは、変態のそれなんだよぉ〜!!)
気付いて〜!!なんて、虫の良い話である。
気付くわけ無い!だって、ブラジャーの概念が無い世界なんだもん!
二郎は純粋に、ちょっと洒落っ気を出した乳あて装備品と思っているのである!
(はあ〜、ブラ二郎ブームが去りますように⋯⋯)
そう願うしか無かった⋯⋯。
二人が仕事に向かった後、私は一人。
ならばやることは、ひとつ!!
大量に毟り煮沸した苔も乾いて、サニタリー用品作り。
私は、恐る恐る、ゆっくりチクリ、チクリ⋯⋯と、上下合わせて五、六枚に重ねた布を縫いだす。
針が刺さると死ぬ、と言われた。恐るべし。慎重にやらねば。
暫く、ちくり、ちくり。
「あ、これ裏返しにひっくり返せば、糸が見えなくなるじゃん」
裁縫経験ほぼゼロの私は、なにをするにも全てが初めて。
縫ってる途中で、その事に気づき裏返す。
「うんうん、そして、ここに乾いた苔を詰めて、真ん中に縫い目を付けたら、良い感じかも」
一人部屋でブツブツ。
「そういえば、小学生の頃、こんな縫い方も教わったような?」
名前は、忘れたが記憶を辿りながら、縫ってゆく。
とりあえず、色んな縫い方をして、後で苔を詰め込むことにした。
「ふう、疲れた⋯⋯」慣れないことは疲れる。
とりあえず、縫ったサニタリー用品なりかけ布を見た。
三枚。
「すくなっ!!!」
(あ、あんなに縫ったのに⋯⋯!?)
私は、素人クオリティに愕然とする。
私は、多い日用のサイズで縫っていた。
苔が本番で、どのくらい吸うのか分からないから。
ちなみに、一発本番の予定。
(もう、飽きた。縫い物なんてするもんじゃねぇ)
出来の少なさに、私の心は、やさぐれた。
(まあ、でも、やる気を失ったところで、生理は来ちゃうのよね。ああ⋯⋯ッ!!くそぉ!生理期間だけ男になりてぇぇっ!!)
心の口調だけは、男らしい。
私は、三枚だけ苔を詰めると、縫い合わせることもなく、テーブルに放置して、長椅子で眠ることにした。
(はあ、ショールに包まれてると、あったかくて⋯⋯すぐ寝ちゃうのよね⋯⋯)
――寝た。
物音がして目が覚めた。
人の気配に、気配のする方を見ると――。
一郎と二郎が、ナプキン縫ってた。
(⋯⋯⋯⋯!?ひぃ、こっそり縫おうと思ったのに!)
一回縫わしちゃってるけど!
あまりの重ねた布の固さに、何個も縫わしたけども!
長椅子の上に膝立ちになると、二人の作業風景を眺めた。
ある程度縫い終わると、二郎が縫い手を中断して、テーブルに溜まっている布を裏返し、その中へ苔詰め作業をし始めた。
苔を詰めると、テーブルにポイっと放置。
その間も一郎が、さっさか重ねた布を縫い、ある程度まで縫い終わるとテーブルに放る。
そして、二郎が苔詰めたであろう膨らんだ布を取ると、開いてる布の口を、器用に縫い綴じていた。
(作業効率良すぎない!?)
ちょっとした内職、もしくは従業員二人きりの町工場、ナプキン製造ラインである。
従業員ブラ二郎が、私に気付いた。
「おう、タロタロ、目覚めたか?」
苔ナプキンひらひら。
振って、私に挨拶。
私は呆気にとられて、返事もできない。
「これ、こうすると防御率上がると思うんだよな」
と、言うとおもむろにシャツを脱ぐブラ二郎。
そして、己のブラの中に、出来たばかりの苔布ナプキンを―――
ズボッ!
私のナプキンは、なんと二郎のブラパッドに早変わり!
「⋯⋯って、お前にそれ以上、ボリュームがいるかぁーー!!!!」
私は、訳もわからず叫んでいた。




