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お天道様は見ている



 煮沸した苔が乾くまで、私は、一郎が縫ったサニタリー用品を分解していた。


(布は上下、各二、三枚重ねで良いかしら?その布の間に、カラッカラ予定の苔を入れて⋯⋯、肌にあたる部分に縫い目をつける、と⋯⋯)


 頭の中で想像する。


 うまくいく予感しかしない。⋯⋯勝ったな。


 謎の勝利を確信した私は、ほくそ笑む。


「どうした?タロタロ、イカれた顔して」と、ブラ二郎に言われた。


 ブラつけた男に“イカれた”なんて、言われたくない!


 

 しかし、ここで大きな誤算が私を襲った。


「乾いたかなぁ〜」と、サニタリー用品の分解を一時中断し、鼻歌まじりで、床に布、その上に煮沸した苔、の苔が暖炉の火に当たりやすいように、角度を変えようと触ってる時だった。


「なんか⋯⋯量少なくない?」


 一郎がどこからかむしり取ってきた苔。


 毟りって“少ない毛”て書くのひどくない?は、いいとして。


 ただフカフカ素材を私に見せるためだけに、毟り取ってきただけのものだからか、量のことなんて考えてもなかった。


「⋯⋯⋯⋯めちゃめちゃ、少ないじゃん」


 苔を見て、窓を見る。まだ雨は降っていた。


 ⋯⋯やるっきゃないじゃない。



「一郎!二郎!外に苔を毟りに行くわよ!!」


 私の号令に二人は真顔。


「⋯⋯⋯⋯なんで、俺らを巻き込むんだよ。一人で行けよ」


「風邪引かないように、気をつけるんだぞ」


 そう、言って全く椅子から立ち上がる気配がない二人。


「ヒドイ!薄情!あたしが困ってるのに!」


 顔を両手で覆い、泣く真似をしながら訴えた。


「知らねーよ⋯⋯。勝手に行けよ。お前が困ろうが俺が困るわけじゃねぇし」


 そのとおりである。


「エーン、ヒドイ、コンナニコマッテルノニ⋯⋯」


「そんな嘘泣き、通じるわけ」「泣くな、タロタロ。私も行こう」


 二郎の声に被せるように、一郎が言うと立ち上がる。


「あにき⋯⋯だまされ」「ほんと!?一郎!」二郎の声に被せるように私は、声を張り上げ、かき消した。


 私は、立ち上がると一郎に近付き


「ありがとう、一郎!誰かさんと違ってすっごく頼りになるわ!」


と、一郎の腕に抱きついた。


「う、うむ⋯⋯。そうか⋯⋯」


 一郎は、そう言うと、ふいっと私から視線を外した。


(ふ!チョッロ!)その様子に、心の中の私が、ほくそ笑む。


「ちっ、しゃーねぇなぁ。兄貴がこき使われてねぇか、俺が監視してやるよ」


と、二郎まで椅子から立ち上がった。


「監視なんて、要らないわよ。二人で頑張って苔取りするんだから、ねぇ〜いちろう!」


 私は、一郎の腕を更にギュッと抱き込むように掴んだ。


「⋯⋯うむ」


 実にチョロい男である。


「監視ついでに苔毟ってやろうと思ってんのに、あーそうかよ」


と、口をとがらす二郎に


「なんだ。一緒に取りに行きたいなら、そう素直に言えば良いのに⋯⋯。じゃあ三人で行きましょう!」


と、私は二郎の腕を取るのだった。



 しかし、雨はチョロくなかった。


「ひどい!なんで外に出た瞬間、どしゃ降るのよ!!」


 雨に濡れながら、一郎が教えてくれた場所で八つ当たりのように、苔を毟りに毟った。


 一郎と二郎の野グソの形跡なんてあったらどうしよう⋯⋯なんて、気にもとめず!!


 ここ一帯の苔、駆逐してやるわ⋯⋯ッ!!


 毟って毟って、一郎が持って外に出たザルにどんどん入れてゆく。


 三人で雨の中、必死に毟ったおかげか、あっという間に苔でいっぱいになった。


「⋯⋯ありがとう!二人とも!もう充分よ!お家に戻りましょう!」


 私の声に二人は作業を止め、小走りで家の中へと避難した。


(す、すごい雨だった⋯⋯)


 また、ネグリジェをずぶ濡れにしてしまった⋯⋯。


 しかし、今回は素っ裸でなく、ちゃんとブラもパンツも着用済み!ちょっと、色っぽいぐらいかしら!


と、チョロい男ども二人が赤面してるんではなかろうか、と見ると――


 そこには、お揃いでブラジャーを透けさせた二郎がいた。


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