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光明は、外にあり



 生活基盤が揃わないと心に余裕なんて生まれない――。


 家もある(居候)

 御飯もある(厚意)

 水もある(雨水・樹水)


 でも、女性には他にも大事なものがある⋯⋯ッ!


(ダダ漏れなんて、ぜっっっったいに、イヤ⋯⋯ッ!!)


(考えるのよ私!!なにか良い案が他にも!!)


 吸水性ゼロのサニタリー用品を前に私は、頭をひねった。


 そこに――


「これ、なかなか良いな」


 声のする方を見ると二郎が、人のサニタリー用品をテーブルの上で肘置き代わりに使っていた。


 その横で一郎が、肘置きになってしまったサニタリー用品をせっせと量産している。


「ちょっと!なに人の大事なもの、肘置きクッション代わりに使ってんのよ!それは、クッションでも座布団でも無いん⋯⋯だ⋯⋯から」


(クッション⋯⋯ざぶと⋯⋯ん)


「これだー!!」


「なにがだ」私の叫びに、一郎が反応した。


「よせよせ、アニキ。どうせ、またろくでもねぇこと思いついたに決まってる」


 二郎が、サニタリー用品を肘置きに、アンダーショーツを縫いながら、首を横に振る。


「失礼ね!ろくな事に決まってんじゃない!」


 ⋯⋯私にとっては!大事なことよ!!


 私のひらめきは、これ!


 今、一郎が縫ってるサニタリー用品に、クッションの中綿のようなフカフカ素材を中に詰め込み、座布団のように真ん中に縫い目を付ける。


 そうすると、その縫い目を伝って下に落ちるんではなかろうか!と。

 そして、真ん中にくぼみが出来ることで、血液が一時的にそちらに流れるのではなかろうか、という狙い!


「肝心なのはフカフカ素材よねぇ⋯⋯」


「ねぇ、一郎や二郎は、ウンコとかおしっこした後、どうしてんのよ?」


 ズバリ、聞いてみた。


「⋯⋯⋯⋯」「⋯⋯⋯⋯」


「排便と排尿したあとよ。なにで拭いてんのか、て聞いてんのよ。葉っぱだけ?」


「⋯⋯⋯⋯。そこにあるものなら、色々使うが。排尿の時は何もしないぞ」


「ぺぺっとして終わりだろ」 


(ぺぺっ、てなによ⋯⋯)


 今後は、二人のズボンの股間の染みチェックをしてしまいそうな予感に頭を振る。


 てか、こいつらパンツ履いてんだろうか。二郎は一枚手に入れたが。


「うーん、なにか良い素材はないかしら。フカフカして柔らかいもの⋯⋯」


 目を瞑って考える。


「⋯⋯⋯⋯フカフカして柔らかいかどうかは分からないが、あるぞ」


と、声のする方に「え!?」とぶたを開いて見ると、一郎。


「あるの!?」


 一郎は私の問いかけに、コクリ、と頷き「ここで待っていろ」と告げると、部屋から出ていった。


 しばらく経つと、雨で濡れたのか、一郎が戻ってきた。


(うーん⋯⋯、こうやって濡れた髪をかき上げてる姿は、めちゃくちゃ格好良いのに⋯⋯)


 勝手に残念な気分になる。


「ほら」と、一郎は手にフカフカ素材を持っているのか、右手を私の前に突き出してきた。


 両手を出してそれを受け取る。


 ビチャアァ⋯⋯。


「ひ⋯⋯っ!」思わず手を振りそうになるのを堪え、目をつむる。


 手に載せられた謎の物体を恐る恐る薄目で見た。


 ⋯⋯濡れたこけだった。


「なにこれ?⋯⋯苔?」


「ふかふかどうかは分からないが、肌触りは良い」


 私と一郎の会話に、二郎が椅子から立ち上がり、私の手に持っていたものを覗き込む。

 

 わたしは、つい二郎の胸元に目をやる。昨日と違ってブラチラはなかった。


 どうやら今日の二郎は、ブラはしていないようだった。


(良かった。今朝のネグリジェ透け事件、ブラ二郎に慰められたのかと、ずっと気になってた)


 二郎は、私の手の中の苔を覗き込みながら、


「ああ、それ良いよな。水気含んでて、しっとりしてて。尻の穴が痛くならねぇし」


「は?」私の口から勝手に声が出た。


 とんでもない発言である。


「そうだな」


 一郎がその言葉に微笑み、頷く。


(いや、君たちの尻事情なんて知らんがなぁー!!!てか、苔でウンコぬぐってたんか、君たちは!!)


 何気に苔ウォシュレットしていた美形兄弟。


(⋯⋯フカフカの物は欲しくても乾いてるフカフカなんですが。こんなに水気含んでて、どうやって吸い取るんって言うのよ、⋯⋯⋯⋯ん?待てよ?)


(⋯⋯洗って、乾かせば良いのでは?)


 ファインディング・◯モだって、イソギンチャクの中に隠れているのだ。


(この苔の中にだって、◯モみたいな微生物的生き物が隠れているかもしれない⋯⋯)


 絶対に洗って乾かさねば。

 

 そうと決まれば、次の目的は、あの暖炉にかけてある、湯と化した雨水である。


 まだ、一郎と二郎のうなじと耳の後ろを拭き上げていない。


 私の洗顔だって、歯磨きだって、まだだ。


「作業は一旦中断よ!朝の支度が途中だったわ!」


 とりあえず、器にしゃくで必要なお湯をすくう。二郎と一郎と私の分。


 外に続く戸口で三人並んで、木の枝で歯磨き。渋みにも慣れた。

 熱すぎない温度を指で確認し、洗顔。

 顔を拭いた布をお湯に浸し絞り、頭にホカホカに濡れた布を巻く。


 部屋に戻ろうとする、一郎と二郎の腕を掴み、頭に巻いたタオルを取って、一郎と二郎用のお湯に再度浸す。


 絞って二人のうなじと耳の後ろを、ゴシゴシ、と磨き上げた。


 そして、最後に二人のうなじに鼻を近づけ、臭いチェック。

 うん!まあ、マシかな!


 アブラ臭なんて許さないんだから!


 二人を解放した私の次の目的は、

 

『苔をサニタリー用品化』


 である。



 ぼちゃん。


 暖炉にかけていた鍋の残り湯に苔を投下した。


 煮え死ね、微生物。


 衛生を求めるあまり凶悪な考えになる私。


 だって、この苔に生息してる微生物なんて、◯モじゃなくて、きっとダニよ。ダニ。股間にダニは飼いたくない。


 杓子で鍋を優しくかき混ぜ、水流で苔に付いた余分な泥を落とす。


(苔、バラバラにならないでね⋯⋯)


と、思いながらすぐに引き揚げた。


 一郎に催促して持って来てもらっていた、比較的綺麗な布の上に乗せ、優しく叩いて、水分を飛ばす。


 そのまま、暖炉の前に放置した。


 上手くいけば、今後、苔を大量に洗って量産よ。


 一郎には、布切れを縫う行為は一旦止めてもらい、ショートパンツ型のアンダーショーツの量産を再開してもらう。


 暖炉の前に置いた苔を眺める。


(カラッカラになると良いな⋯⋯)


 祈らずにはいられなかった。



 両手を胸の前に組んで、お祈りをしている私の横で、「乾いた、乾いた」と二郎がブラを装着していた。


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