事故とは突然起こるもの
翌日、起きたら窓から見える外は、雨だった。てか、大雨。
(薪割りもしなくて良いし⋯⋯、私の下着づくりが出来るじゃない)
パンツとブラジャー。ブラは量産するのに一度解いて型取りのため一郎に渡してある。あとは、パンツ作製とサニタリー用品作製。
早速起きて、朝の支度。
おまるにも慣れた。煮沸した雨水は部屋に置いてビデ代わり。
一郎から頂戴して洗い直した布切れでそっと拭いたら、おまるの中身を捨てて、おまるは雨降る外に放置!
布っきれは、暖炉にくべて証拠隠滅よ。ふ。
ふ、じゃないわよ!どんどん自分が適応していく⋯⋯あぁ!!
(今日は、便意が来ないことを祈ろう⋯⋯)
だって、NOGUSO DAKARA⋯⋯!
(してる最中にずぶ濡れになんてなりたくない!)
ついでにトイレットペーパーなんてものも無い。
(濡れた葉っぱでお尻を拭くなんて、新手のウォシュレットかよ⋯⋯て)
「あー!!みずーー!!忘れてたー!!」
私はネグリジェのまま、急いで台所に向かった。
「一郎!雨降った!雨!瓶ちょうだい!瓶たくさん!」
台所に入ってすぐ、私は朝食を作っている一郎に催促した。
「瓶ならそこにあるのを、好きに使えば良い」
フリルエプロンを身につけた一郎が指し示す場所へと急いで行き、瓶を持てるだけ持つ!
「無理!意外に重い⋯⋯!」現代女子の非力さよ⋯⋯!
諦めて一つずつ持ち、台所から外へと続く扉を開けると、屋根から水が滴り落ちない場所に瓶を並べることにした。
雨に濡れながら、往復。
濡れながらトイレを済ますのは抵抗があるけど、生活用水のためなら全然気にならない。
全身ずぶ濡れになりながら、私は、ありったけの瓶を並べた。
ふー。達成感。あとは、溜まるのを待つだけ。
「おわったーおわったー」扉を開けると一郎と二郎がいて、私を見るなり固まった。
「ねぇ、なんか拭くものない?なるべく綺麗な布が良いんだけど」
近付く私に、二人は後ずさり。なによ。
「ちょっと、風邪引くじゃない。なんか拭くものちょうだいよ」
と、言ってたら、一郎からフリルエプロンを被せられた。
首から下はエプロン姿。まさかの料理当番?⋯⋯いや、そんなことはないはず、と思い、拭く布代わりなのか聞いてみた。
「ちょっと⋯⋯なにこれ、これで拭いていいの?」
一郎は、なぜか首を横に振り「着ていなさい」
二郎が手のひらで顔を覆って、くぐもった声で「おまえ⋯⋯見えてんぞ。ぜんぶ⋯⋯」と、言った。
「見えてるってなにがよ?」
「⋯⋯⋯⋯」「⋯⋯⋯⋯」二人無言。
なにが、見えてるってのよ、と二人の様子に嫌な予感。
被ったエプロンからソロリと自分のネグリジェを覗いた。
ずぶ濡れのネグリジェは、素肌に張り付いて透けていた。
(あーーーー!!!やってもたー!!!)
説明しよう!私は、ネグリジェの下は何も身につけていなかったのだ!
だって、パンツ一枚しか無いし!ブラは預けてるし!
雨で濡れて肌寒かったのが、熱い!全身一気燃え上がるように熱くなった。
「き、き、昨日、下着作らなかったからよ!!!!」
私は、そう言うと自室へと駆け出した。
ベッドにうつ伏せて、恥ずかしさで身悶えする。そう言えば、全身濡れてたけど、知ったこっちゃねぇ!!
「ううう、最悪⋯⋯!あいつら何秒見た⋯⋯?てか、私、自分から近付いて行ったしー!!死ぬー!!てか、一郎!あいつこの前まで平然としてたんだから、今回だって、平然としてなさいよ!って、比較的平然としてたか!だったらもっと早く教えなさいよー!!」
ストレス発散。心の声を全部、口から出していた。
しばらくすると、扉がノックされた。
「おい、朝飯出来たぜ〜」二郎の声だった。
「食べたくない⋯⋯」
「はあ?なにー?聞こえねぇ〜」
「食べたくない!」と、言った瞬間鳴る、腹の虫。
(裏切り者ー!!)ぐううう。
「兄貴が、タロタロがいないと下着が作れねぇ、ってぼやいてるぜ。早く行ってぱっと飯食って作っちまおうぜ、なぁタロタロ〜」
「⋯⋯⋯⋯」
ガチャ。
うるさいのでドアを開けた。あと下着も作りたかった。
「うわ、やっぱまだこの格好だったのかよ」
瞬間、ショールに包まれた。長椅子に掛けてるやつじゃん。
「身体冷えてるじゃん、暖炉の傍で飯食えよ。持ってきてやっから、な」
ぽんぽん、と背中を軽く叩かれた。
「⋯⋯⋯⋯」
そのまま、押されるように私は二郎に連れられて廊下を歩くのだった。
暖炉の前で一人御飯を食べる。
一郎が作って、二郎が持ってきてくれた朝御飯は、相変わらず、なにが煮えているのか分からないものだったが。
不思議とさっきまでの怒りと恥ずかしさは和らいでいた。
頃合いを見計らったのか、食べ終わる頃に、一郎が替えのネグリジェを持ってきたので、それに着替えることにした。
しかし、私の、は、はだ⋯⋯発禁!!を見たのには変わりなし。
償いとして一郎と二郎には私のブラとパンツを作らせる。
裸と下着は別だ!
ブラ量産は、裁断まで終わらせていた。仕事が早い。
パンツのための採寸の時は、また見られた記憶がチラついて、恥ずかしさで暴れたくなったが、目を瞑って、ぐっ、と堪えた。
足の付け根の採寸時、ネグリジェをたくし上げて測ってもらう。さすがに素肌は良くないと、パンツは履いた。
(くう。ブラもパンツも昨日作っていたら、雨に濡れたところで透けブラと、パンツぐらいで済んだのに⋯⋯)
この時、恥ずかしさで目を瞑っていた私は、気付かなかった。
二人がどんな顔して私を見ていたか、なんて。
さて、採寸も終わり気を取り直して一郎が裁断をしてくれるのを待った。
だがここで、昨日さっさと二郎のショートパンツを作っていた一郎から
「脚が丸見えはよろしくない。やはり私の母の下履きにしなさい」と、久しぶりにママ節が炸裂して、部屋から出ていくと案の定、ラピュ◯パンツを手に持って戻ってきた。
「えー⋯⋯」(てか、中古の時点で抵抗あんだけど⋯⋯)と、受け取り広げて良く見て、びっくり仰天。
「これ、下着の股の部分開いてるじゃない!!」
「そうなのか?見ずに持ってきたが、何が悪いのだ?脚は隠れるし、用も足しやすいではないか」
(どんな感覚よ!)
「いやいやいや、心許ないんだけど!」
「あんた、もし、私がうっかり股開いて座ってみなさいよ!丸見えよ!」
「まるみ⋯⋯」
しばらく経ってボッ!と、一郎の顔が赤面した。おっそ!!
そして、二郎まで赤くなっていた。
「はしたない。女性がそのように座るものではない」
と、目を閉じて顔赤らめた一郎はいう。
「なにそれ?男性は股開いて座って良いのに、女性はダメなの?おかしくない?」
「おかしくは、ない。それを言うなら男性は駄目だが、女性なら良しとするものもある。物事には、時には分別が必要なのだ」
「ふうん」
なんか、真面目な話になりそうだから、話題を終わらせることにした。
「まあ、とりあえず、この下着は私的には却下です」
(こんなの履いてて、生理始まったらどうすんのよ!ダダ漏れじゃない!股割れ下着なんて、ダメ、ゼッタイ!よ!)
珍しく二郎が大人しかったから、そっちに目をやると未だに赤面し、ブラを必死で縫っていた。
さっきまで、私を慰めていた余裕はどこ行った、初心かよ。




