パンツを作ろう!
戸口に立つ私のブラ姿を見ての感想が、
「なぜ、その格好で現れた?恥を知りなさい」
と、人におまるを渡してきた奴から言われた。腹立つ。
「水着みたいなもんじゃない。いちいちうるさいわねぇ〜、完成品見てもらいたかったのに。でさ、ここの肩紐、結べるようにしてほしいのよね。肩もしっかり固定したいのよ」
と、私はネグリジェから肩紐を覗かせて見せた。
「なるほど」
一郎が頷き、細布に触れる。
「たしかに、こう触ると余分がある」
うんうん、と頷き理解してくれた。
「じゃあ、次はパンツ作りね!」
「⋯⋯⋯⋯ぱんつ」
理解してない一郎に、私は、洗って乾かしていたパンツを見せた。
「こういうのだけど、これを直穿きするのよ」
手のひらの布の塊を見た一郎から
「それなら、生前の母のを渡したではないか」
(ドー◯のパンツじゃあ、生理の時だだ漏れよ!!)という言葉を心の中で吐きながら、「いえ、これも必要なのよ」と、目に力を込めて言った。
「んだぁ、このちいせぇ布っきれは?」と、服の下にブラを身に着けた二郎がやってきて、人のパンツをつまみ上げた。
「ちょっと!!!触る許可は与えてないわよ!!」
目に力どころか、顔に力を込めて私は吠えた。
その気迫に、そっ、と手のひらにパンツを返されたが、一郎から、
「しかし、タロタロ。触ってみなければ、どういう形状のものか分からない」
と、言われて仕方なく触る許可を出した。
“裏向きにするのは禁止”と“股の部分を絶対に触るな!!”
という条件付きで。
「⋯⋯この小ささで履けるというのか?⋯⋯なんと心許ない。⋯⋯⋯⋯ヒッ!大きくなったぞ!あ!小さくなった!」
と、人のパンツを何度も伸び縮みさせる一郎。
「ちょっと、あんまり強く引っ張らないでよ、ゴムが切れちゃうじゃない!」
と、言う私の抗議を聞いているのか、聞いていないのか。
「ううむ、面妖な⋯⋯」一郎、パンツをつまみ上げて眺めながら唸った。
(⋯⋯パンツに面妖なんてあるか)
「ふふん。これが私たちの時代の文明よ、恐れ入ったか」
フン!と鼻息を立てて私は胸を張った。
「うむ、ただのイカレ女では無かったということだな。すまなかった」
と、素直に謝る一郎。
「分かればいいのよ」私は、偉そうに頷いた。
「して、この布はどのように織っているのだ?」
と、質問してきたが。
「知らないわよ。買ってるんだし」という私の答えに、
「んだよ、やっぱ、ただのイカれ女じゃねーか」
と、ブラをチラリズムさせる奴に言われた。
(お前⋯⋯、その姿で現代日本で歩いてたら普通に職質だからな?今が多様性の時代で良かったな)
と、心の中で毒づいた。
「で、唯一あるあの布を使って作りたいのよね、これを」
と、私は一郎が伸び縮みさせて、二郎に見せているパンツをひったくった。
あの布とは、二郎も私も身につけているブラジャー作りで使ったシーツである。
「しかし、そのぱんつとやらの布は、まるで羽のような軽さだ。対してあの布は、重いし、伸びはせん。自重でズルズルと下がるぞ?」
という、一郎のもっともな意見に、
「たしかに⋯⋯」
うーん、と私たちは行き詰まった。
しかし、諦められない!
(だって、生理が来るもの!サニタリーグッズも作る予定なんだし!)
「私は、ある事情で股と布をどうしても密着させたいのよ!」
「なら紐で縛るのはどうだ?」
「ひも!?」
(紐だけ!?紐だけってどういう状況よ!紐パンでも、布はあるわ!⋯⋯⋯⋯ひも⋯⋯紐パン!?)
「そうよ、紐よ!紐パンよ!て、なにしてんの!?あんたたち!!」
天井を見上げて、紐パンを思い浮かべて、目線を一郎と二郎に戻したら、とんでもない光景が目に入った。
どこから出してきたか分からない縄のようなものを、一郎が二郎の股に食い込ませていたのである。
股に食い込ませた縄を器用に腰で一周、回して⋯⋯、って、どこの部族よ。
てか、二郎の股間に縄を食い込ませているせいで、見えてはいけないフォルムがズボンからくっきり形づいてるんですけど⋯⋯。
「いてぇよ⋯⋯、これイテェよ⋯⋯あにき⋯⋯」
弱々しく訴える二郎に対して、
「我慢だ。時に男子は我慢しなければならない時がある。それが、⋯⋯今だ」
そう言いながら、ぐっ、ぐっ、と縄を締め上げる一郎。
(いや、『今だ』じゃないのよ。なに兄弟でプレイしてんのよ、ちょっと、なにこの状況⋯⋯)
ブラを身に着けた弟の股間をTバック状にして縄で締め上げてる金髪美形兄弟の図なんて⋯⋯。
二人の状況を薄目で見ながら、
(この状態から、私のパンツって、完成するのかしら⋯⋯)
と、不安になるのだった。




