進撃のブラ
チクチク、チクチク⋯⋯。
二郎の乳首ご開帳を間近で見た、制作者である兄、一郎は、プライドが傷ついたのかどうかは知らないが、弟のブラジャーの肩紐を必死に縫い合わせていた。
満を持した、という表情で顔を上げた一郎は、さっそくブラを弟に装着する。
装着した二郎をまじまじと観察してみた。
「うーん、たしかにブラ!てか、デカ!カップデカ!私の顔ぐらいあるんじゃない!?」
まさかの二郎は巨乳!?
⋯⋯⋯⋯いや、単に乳幅が広いだけだった。
「このカップの部分⋯⋯一枚だとどうしても心許ないのよね。もう少ししっかり出来ないかな?」
言うのは簡単である。
うーん、世の中のブラってどうやって作ってるのかしら?
「て、二郎のブラに時間も布も割いてる余裕はないのよ!刻一刻と私の胸が垂れてるの!二郎の乳は筋肉で支えてるんだから、心配ないはずよ!次!私のブラ!あとパンツ!」
ブラを付けてシャツを羽織ろうとする二郎が
「じゃ、なんで作ったんだよ⋯⋯」
と、ブツクサ言っていた。
あー!本当だったら今頃そのブラは、私のブラになってたはずなのにー⋯⋯!
「私も炭で描いてくるからちょっと待ってて!」
と、適当な布を二枚切って、寝起きしている部屋に入った。
「そうだった!一人じゃ脱げないんだった!」
一郎に服という武装を解いてもらって、やっと部屋に一人きり。急いで裸になると布をあてて、胸の形に炭で描いていった。
ネグリジェ姿で出来上がったものを持っていき、一郎に見せると
「小ぶりだな。布に余白がある」と述べてくれた。ムカ。
「うっさいわね!何も言わず受け取ってよ!」余計なふた言が多いっての!
一言が正式だがあいつは、一言どころか二言言って私の心を傷つけた。許せない。
「カップがペラペラで心許ないのよ」という私に
「ならば補強しよう」と一郎が提案してくれて、慣れた手つきで鋏を使い切り分けると、付いてる炭をはたき落として適当な大きさに切った布をあてて補強する。
そう言えば、ブラのカップ内側って布同士が真ん中でくっついてなかったっけ?あれは、パット入れる部分だったっけ?
「うーん、どうなってたっけ?思い出せない⋯⋯」
思い出せない間に補強が終わった。早。
「こちらが左胸だ。タロタロは両方渡すと左右間違えそうなので片方ずつ、印をつけてくるんだ」
と、左の胸部にあたる補強された布と細長い布を渡された。
せっかく手を拭って綺麗にしたのに、また炭を持ち部屋に戻った。この炭も他のものに代用できないかしら?
裸になり、まずは胸の下、アンダーの部分に細長い布を巻きつけて胸の前で結んだ。
次に左胸に補強された布をあてていく。
一郎は縫い合わせを考えて少し余白を入れて切っていた。
(ありがたいけど、どんだけ真剣なのよ⋯⋯)
細長い布の中に胸の位置に合わせて補強された布の余白を入れ込み、縫い合わせの端と端に炭で印を入れる。
「こんな感じかしら⋯⋯ま、いっか!」
結び目を解いて布を取っ払い急いでネグリジェを、身につけた。さむ!
(うう、寒い。今って季節いつなの?それとも夜だから冷えるの?)
ブルブルしながら部屋に戻ると、右の胸部の布を渡されそうになったが、「ちょっと待って!」と、手に持っていた炭と布を机に置いて、手を拭うと、足を包む皮袋を脱ぎ捨て、素足で暖炉へ。
(あったか〜い。火ってすごいわ、お湯も作ってくれるし、身体も温めてくれるし。料理だって出来上がるし。あ〜ボタンひとつでお風呂に入ってた時間が恋しい⋯⋯)
と、炭で汚れが残る手のひらを見つめながら、日本に思いを馳せていた。
隣に先客の二郎がいること忘れてた。そういえば、コイツずっとブラつけたままなんだろうか。
「ねえ、あんた。もしかして、ブラ付けっぱなしなの?」
と、聞いてみた。
「ぶら?この乳あてか?おう。さみいからな!」
「あ、そうなんだ⋯⋯」
金髪美形男(ブラ装備)が生まれてしまった。
身体が少し温まったので、今度は、右の胸部も同じように縫い合わせの端と端を書き込んで一郎に渡した。
私と二郎(ブラ装備)は、暖炉の前で完成を待ちながら一郎の手元を固唾をのんで見つめていた――⋯⋯なんてことはせず。
私は暖炉の前で、手についた炭を落とすことに集中して、二郎は暖炉の前で寝ていた。
「出来たぞ」
一郎が布に付いた炭をはたき落とす音で、うつらうつらとしていた私は、目を覚ました。
「えぁ⋯⋯!?出来たの!?」寝ぼけ眼で一郎が持っているブラを見た。
「ありがとう!」と、一郎から完成したばかりのものを受け取ると早速、部屋へと移動し試着してみた。
(あ⋯⋯なんだか、いい感じかも)
胸の位置で合わせたからか、ちゃんとホールドされている。欲を言えば、肩ひもも調節可能な結ぶタイプにすれば良かったな。
私は、水着のような感覚でブラ姿を一郎にお披露目することにした。
寒いのでネグリジェを着込んで、寝起きしている部屋から出た。
「いちろ〜、見て見てー」
部屋に入るなり、ネグリジェを肩口から脱いでブラ姿になると一郎を呼んだ。
振り向いた、一郎は「なっ!?」と短く叫び、ガタタッ!と音を立てて椅子から立ち上がった。
その音に目を覚ました二郎が、私のブラ姿とそれを見ている一郎を見て立ち上がった。シャツの合わせ目からブラが見えている。
戸口に立つ私(ブラ装備)と背後の二郎(ブラ装備)に挟まれる困惑した一郎(ブラ未装備)というシュールな図が出来上がった。




