二次元ブラ
洗って乾いた白い布⋯⋯ではない、少し経年劣化した色の布を机に広げて、
一郎がスッスッと定規で測りながら糸を通した横並びに四方
、二カ所。
「タロタロ、この中に君が手振りで示してくれたぶらざーというものをここに描いてくれないか?⋯⋯こっちが右胸、こっちは左胸だ」
(ブラザーの左胸と右胸?⋯⋯⋯⋯いや、シーデーかよ!)
「ブラジャーね、ブラジャー」
(ちなみに、シーデーでなく、CD⋯⋯じゃなくて。この世界、筆記用具あんの?⋯⋯⋯⋯あったわね。覚えてないけど。インクと羽ペン?ん?でもそんなもの布に使えないわよね?)
裁縫道具になんか、書くやつの名前があった気がする⋯⋯。なんだっけ?
「あ、そうそう。思い出した。チャコペンよ、チャコペンないの?」
「ちゃこ⋯⋯ぺん?」
(でた、お家芸)
「布に描くやつよ」
と、言ってると、
「これでいいだろ」
と、二郎の声。
二郎に渡されて、うっかり手にしたのは、炭。
「⋯⋯⋯⋯」
手が真っ黒になるじゃないのよ!また洗わなきゃいけないじゃない!なんてことしてくれるのよ!
と、心の中の私が一気に文句を噴出させていたが、なにも言わずにそれを持って書くことにした。
布に炭をあてる。
(これ、一発勝負ってやつじゃん)
緊張。真面目に描いたつもりが、おにぎりみたいな形になった。
(こんなだっけ?)
「ふむ。では、右胸だ」
一郎に促され描いてみたが、左右で形が違うんだけど⋯⋯画力の壁が私の邪魔をする。
「一郎⋯⋯歪んじゃったけど、同じ大きさだからね?」
と、念を押した。
「ふむ、では、この三角を支える土台はあるのか?それとも先日手振りで教えてくれたように紐に縫い付けるのか?」
一郎に疑問を出される。
「うーん、それでも良いかも⋯⋯。いや、良くないわ。せめてリボンぐらいの太さにしてよ」
と、言うと一郎は定規で測った私のアンダーサイズで印をつけていた。
ハサミでチョキチョキ裁断して、一郎が手早く縫いつけた。
縫い合わされた布は、ふにょふにょ。
特にこの三角のおにぎり部位。
「そうよ!肩紐よ!肩紐がないわ!」
私は、身振り手振りで説明する。
それを見ていた。一郎から、
「それなら、先日測った。確かこれだ」
と、裁縫箱から紐を何本か取り出した。
「これだったかな?」
ふにょふにょの三角と背中部分を縫い合わせる。
「あー、なんかブラっぽい」
そこで、私はふと気付いた。
「これ、どうやって着用するの?」
アンダー部分がすでに一周していた。
下から?上から?てか伸縮性がないとキツいんじゃないの?
「これダメだわ。やり直しよ」
「なぜだ?君の要望通りだ」
「形はそうだけど、最終的には私が身につけるのよ。でも、これだと着れないわ。ここにホックがあるから最終的にはこの形になるんだけど、ここ外れるのよ」
「なるほど。だが、そんなものはない。布を延長して結ぶとかになるだろう」
「それなら、前で結べるようにしたいわ。こうやって、着てリボンで結んで留める、みたいな」
「分かった」仮縫い段階だったのか、糸はすぐに解かれた。
「俺等のひいじいちゃんとひいばあちゃんが服道楽で良かったな」と濡らした布を差し出してきた二郎から言われる。
「なんで?」と受け取り、炭で汚れた手を拭きながら聞くと、糸は高級品なんだそうな。
「まあ、本縫いじゃねぇから、粗末な糸でやってっけど」
(そうか⋯⋯糸ひとつ作るでも人力だもんね。すべて手作業なんだ⋯⋯)
自動化の恋しさが募る。
そんな話をしている間に、試作第一号のブラジャー完成、一郎が一人で仕上げた。
「ふむ」と言うと、一郎は、服の上からブラジャーをブレザーのように着込むと、前で結んだ。ギリギリの紐の長さが残る。
「⋯⋯て、なんでアンタが私より先に試着してんのよ!」
「いや、出来がどうか気になったのだ」
「それを気にするのは、私の役目だ。君はこれを常時着用するというのかね?」
一郎のマネをして言ってみたら、ム◯カ大佐みたいになってしまった。
「それもそうだな」ム◯カ大佐の説得力にさすがの一郎も納得したようだ。
結びを解いて渡されたブラを持って私は、部屋を出た。暗い!
「ねぇ!明かりない?明かり。暗くて」
移動用のろうそくを持って二郎がやってきた。
「んだよ、子供かよ」
「仕方ないじゃない。私の国にはセンサーがあって暗いところでも自動で点くのよ。その他もボタン一つで遠いところの電気もついちゃうし。」
「せんさぁ?ジドウ?ボタンヒトツデトオイトコロノデンキぃ?」
(でた。こいつも家元の弟だったわ)
「とりあえず、便利ってこと」
部屋に入っていざ、試着と思ったら、一郎から着せられた服の、まず、どこから手を付けねばならんのか。
最初の服のサイズが合わなかったからか、いつも違うサイズとデザインの服なのだ。
「はあ、めんどくさい」
部屋から出た二郎を呼び止めて、部屋に入って来たところで
「ねぇ、これ脱がせて」と、お願いした。
「は?」
「は?じゃなくて、構造が良く分からないのよ。あんたこの時代の人でしょ?ちょっと手伝ってよ」
「はあ、子供かよ」
近付き交差する紐をスッスッと解いていく二郎。
解きながら
「お前、兄貴に迷惑かけるのやめろよ⋯⋯」
と、釘を差された。
「迷惑かけてるっていうか、この服も私が着たいって言ったわけじゃないんだけど⋯⋯」
「兄貴はなにかと凝り性なの。問題が出てきたら解決したくなる性分なんだよ。今はお前の体型に合う服と乳あてに夢中だろ」
(ちちあてってなんだよ⋯⋯)
ネグリジェ一枚を残し、脱がし終わったので二郎には、部屋の外で待機してもらった。
ネグリジェを脱いで下着を装着。
――⋯⋯胸にホールド感が全く無い!!
アンダーはまだ良い。結び目で調整出来るから。
だが、おにぎり山の三角!オメーはダメだ!
(なんでこんなに包まれてる感じがしないんだろ?)
下を向いて確かめる。鏡がないって不便。
この形は⋯⋯あれだな。
上裸に片乳だけ装備してる戦士、みたいな。
(乳あてじゃん⋯⋯!!)
ダブル乳あての出来上がりである。




