平穏は近い
元が頭を下げている間に、白玉と小倉が新と次野・万手内を連行した。
白玉と小倉を連れて来た銀マーズが元に寄る。
「元さん、煌麗山湖畔の別荘にいらっしゃる方々にもお話を伺いたいそうです。
よろしいですか?」
「構わないが、諸外国との交渉は?」
「問題ありませんよ。先回りしていますので。
だからこそのマーズタウンです」
「そうであったのか。
冗談抜きで邦和を担ってもらえないかね?」
「音楽好きなのでステージには立ちますが、本来、忍とは表に出ない者ですので」
「成る程な。どうにも惜しいが……諦めるより他に無さそうだな。
では別荘へ。
全てが明らかになった後に真実を公とし、隠居するとしよう」
「はい、お願い致します。では参りましょう」
連れて忍者移動した。
強制的にオフになっていたマイクが短くハウリングして正常に戻った。
『あっ、銀マーズと元氏は何と?
ええ~~、全てが明らかになればお話しくださるのですね? そうですか。
では展開に期待して、音楽祭りに戻りましょう!
え~、メーア、銀マーズ。次は――』
『移動だ! マーズ&キリュウ!』『承知!』
マーズはキリュウ兄弟だけでなくフリューゲルも連れてドイツへと忍者移動した。
―・―*―・―
欧州だけでなく、中東から西、西端は南北米大陸までを飛び回ったマーズ&キリュウが邦和に戻ったのは翌朝だった。
どの会場も長く待っていた筈なのに大喜びの大歓迎で、忍者達もコラボする歌手やバンドも全力で楽しんでいた。
「俺、戻るよ。警察に。
キャーキャー騒がれてるコスプレアイドルだと勘違いして……羨ましいのと悔しいのとで見ない聞かないにしてたのが間違いだった。
マーズに謝って、家族の為の家を建ててもらわないとな」
誰に言うでもなく思いを吐き出した男が立ち上がった。
「そうだな。やっかみだったよな」
次々と立ち上がり、出口に向かう。
途中の扉は鍵もバリケードも無く開いて通れたが最外の扉、そのガラスの向こうには不良達が居た。
怯んで立ち止まると後ろから押され、ガラス扉に着いてしまった。
「話をさせてもらえないか?
警察に戻りたいんだ」
震える声で、どうにかこうにか。
アタマらしい若者がガラスに顔を寄せた。
「迎えを呼ぶから待っててくれ。
かなり走ったのくらいは覚えてるだろ?」
頷き、後ろの数人に伝えると、
『座って迎えを待とう』
と伝言ゲームのように広がっていった。
そうなると中に戻ってマーズを楽しみながら待とうと動く者も多く出た。
外を見たり、後方の動きを見たりしていると、別の若者がガラスを軽く叩いた。
「中に戻っていいですよ。放送で呼びますから。
あ、通路モニターもオンにしますね。
画面は小さいですけどね」
持っていたスマホで操作できるらしく、触っていると通路の天井近くにある画面にもマーズが映った。
「あ、でも聞きたくなかったら階段とかトイレなら静かだと思いますよ」
「いや……これまでが間違っていたと気づいたんだ。
もっと聴きたいんだよね」
「そうですか♪」
さも嬉しそうに笑うと若者は離れた。
「ガラスを割るとかしないと思われてる?」
つい呟くとアタマが向いた。
「いや、何も……」
「目がマトモだから。もう暴れないだろ?」
「どうして あんな事をしてしまったのか、今では不思議でならないよ。
君達は? その格好は?」
「俺達はマーズ学園卒業者と賛同者だ。
この格好は、ただの威嚇用だな。
マーズ学園卒業者は春まではワルしてた。
マーズに捕まってキリュウさん家で人に戻してもらえたんだ。
経験者だからアンタ達にもマーズとキリュウさんを知ってもらいたかったんだ」
「そうか。ありがとう」
つまりアタマではなくリーダーなのかと納得。
「べつにファンにならなくてもいいけどな。
そこんトコ関係なく絶望しなくていいと思う。
きっとマーズとキリュウさんが助けてくれる。
エルサムの奇跡でロシアの救世主だからな。
あ、バスが来たな。
開けるから乗ってくれ」
「もっと聴きたいけど……行かないとな」
「たぶんバスにもテレビくらいあるだろ。
警察でもガンガン流してるみたいだし」
話しながら複雑な模様が入ったガムテープを剥がしていった。
「その模様……」
「忍法、結界封印の術だ♪
内からはマジで開かないんだからな」
ガラス扉を開けた。
次々と到着する観光バスに元・反マーズ派の殆どが乗り込んだ。
「チョイ足りない?」
人の流れが途切れたのでリーダーが中を確かめに入ると、穏やかなクラシック曲が流れていて、寝具にくるまった幸せそうな塊が彼方此方に落ちていた。
「一晩中マーズ見て寝ちまったか♪」
暫くは そっとしておいてやろうと外に出た。
―◦―
邦和中で同様の動きがあり、各地の警察署等々は再び満員御礼になった。
「あ♪ パパ~♪」「シュッチョーおわり?」
大喜び兄弟はダッシュで父の腿にハグ♪
が、ハッとして逃げた。
「もう怒らないよ。忍者ごっこしていいよ」
「「パパおかえりなさ~い♪」」改めてハグ♪
優しい人に戻ったと、妻は夫の背で泣いた。
「テレビ見ような」「「うん♪」」
子供達はラグへ。
「ん? テレビ?」
「マーズからのプレゼントなの。
あんな使い方があるなんて知らなかったけど最新のは そうなの?」
「あるのならCMとかで見てるよ。
あれも忍法なのかな?」
「そうなのかもね♪」
スタンドから外してラグに平らに置いたポータブルテレビの上では、小さな忍者達が演奏しながら踊っていた。
子供達も手を挙げる箇所はピッタリだ。
「よく知ってるんだな」
「そうなのよ♪
オモチャも服もマーズからよ♪」
「そうか……それなら動かないとな」
「え?」
「マーズに謝りたいと言ってみるよ」
「そうね。そこからよね」
―・―*―・―
この日もマーズは元気そのもので、外国からの中継を交えながら音楽を届け続けていた。
今は漢中国で舞踏雑技団のステージを見ながら打ち合わせているマーズが映っている。
スタジオに切り替わったとは視聴者には気付かせずにカメラが少し引いたという演出があり、モニター横に見田井が立った。
『各国の会場ではマーズと共演したいという希望者・団体が殺到しておりまして、マーズ待ちの間はオーディション的なステージが開催されているんですね。
どうやら自然発生的に そうなったようで、観客の投票で共演者が決まっているそうです。
出店も多く、本当にお祭りになっているんですね。
あっ、マーズがステージに上がりましたね!
漢華雑技団と馬頭雑技団の共演、どうぞお楽しみください!』
マーズが打ち合わせていた間のステージは、これに合わせてもらいたいと通しで見せていたものだった。
衣装を合わせたマーズが同じ演舞に加わると、より豪快なのに華麗に化けた。
演奏の方も音色が変わったと、後方で見え難い奏者達をよく見ればキリュウ兄弟が入っていた。
―◦―
キツネの社で休憩がてら瞑想していた響の前にソラの分身が現れた。
「どう? 順調?」
「すっごいね♪ ソラも♪」
魂に響く音色なので瞑想は真剣にしていたが聴いていた。
「それは……頑張らないとね。
この移動前に音神にしてもらったから」
「音色天使から昇格?」
「うん。黄緑達はまだだけど、みんなワンランクアップしたよ」
「音神の上って?」
「それは無いんだけど『響奏大神』って新しい称号を作ってくださったんだ」
「ソレって、なんだか……」
「響と奏お義姉さんだよね♪」
「うわぁ……」
「だから響も貰おうね♪
ボクも当然 目指すからね」
「そうよね! 頑張らないと!」
「そろそろ行くよ。
今度はSo-χだからね」
「ソラ、サーロンくんと空マーズしててロンサくんとシードくんもだし、その分身ソラも演奏?
大丈夫なの? 消えたりしないでね?」
今はサーロンも彩桜に引っ張り込まれてキリュウ兄弟と一緒に演奏している。
「しないよ♪
もう1人、おばあちゃんと一緒にシドもテレビを観てるし、ずっと維持できるようになったからこその称号だからね」
「私も修行してやるんだからっ!」
「一緒にね♪ 行こうよ」
「うん♪ って……キツネ様のお社、今どこにあるの?」
「メーアさんの領地♪」
「ドイツ!?」で瞑想していたと初めて知った。
「西海村から竜ヶ見台市までスッポリだよ♪」
「メーアさんって……?」
「貴族♪ 後でお城にも行ってみようね♪」
「うわぁ……」
もう時間が無いので連れて瞬移した。
―◦―
夜間は地星の裏側を巡るので、この日の邦和ラストはフリューゲル&マーズwithキリュウwith So-χ withユーレイ探偵団で、オーケストラかという程の大人数での演奏でメーアとカナデが歌った。
予定していた曲が全て終わり、皆が礼をしていると見田井が駆け込んで来た。
『移動はお待ちください!
反マーズ派だった方々から、マーズへのお詫びの手紙と共に、邦和に戻ってほしいとの署名が届いております!
マーズ、キリュウ兄弟。どうか邦和に戻ってください。
邦和国民の皆様、もう暴動は起こりませんから戻ってください。
蝦夷と琉球の皆様、独立なんてしないでください。
どうかどうかお願いいたします!』
『見田井サンが頭下げなくても』肩ポンポン。
『だって戻ってほしいんですよぉ~』うるうる。
『ま、一件落着って事で♪
音楽祭りは続行だっ♪』
『それじゃあ……?』
『心配すんなって♪
この祭りが終わったら一斉に戻すよ♪
移動す――うわっ!?』
突進して来た白玉と小倉が後ろから銀を確保!
『ナニすんですかぁ?』
「絶っっ対に戻ってくださいよ!」
「まだ後始末するんですよね?!」
『だなっ♪ ソレもしないと終われねぇよな♪
必ず戻るから離してくれ』
「では「お待ちしております!」」敬礼×2!
マーズは笑いながら仲間と楽器やらを連れて忍者移動した。
めでたしめでたし一件落着が近づいています。




