魔女の拠点巡り⑤東京からハワイへ
キツネの社で『噛みつき玉』の浄化をオフォクスに頼み、また術と知恵の大神達に集まってもらった。
〖あの玉は地星の神の知らぬものですよ〗
早速、穏やかに警告するケイロン。
〖悪玉でしかない。人神は近寄るな〗
オーディンでも困り顔だ。
〖封じはしましたが異界の神力ですのでね〗
シヴァも自信が無さそうだ。
【って、やっぱり闇禍の悪知恵?】
〖〖でしょうね〗〗〖魔女にとっては知恵袋だ〗
【じゃあ打つ手ナシ?】
〖そうなるな〗
〖ですが結界解除の術は完成しましたよ〗
カリュー王妃達を代表してシャナカリュー。
【ありがとございます♪】
教えてもらい、一歩前進と喜んで次に向かった。
―◦―
稲荷堂の作業部屋では、カケルの額に紅火が人差し指の先を当てていた。
【紅火、どうだ?】
【理俱も当てれば分かる】
【そんなにヒドイのか?】
返事は溜め息。
【俺達の手枷足枷総動員なヤツだな】
【だが鍵だ。対処せねばな】
【けど紅火の手を止められるのは困る。
ソッチを先に考えないとなぁ】
【ふむ。頼む】
―・―*―・―
彩桜達が東京の高嶺の家に行くと、高嶺は居間で台本を読んでいた。
なので了承を得ようと電話すると、
『ありがとう。本当に『すぐ』なのね♪』
と喜ばれてしまった。
【黒瑯兄、高嶺さんから電話あった?】
喜んでいた声に違和感があったので神眼を向けると、高嶺は笑顔だったが、手が震えていたので確かめてみた。
【ああ。来てほしいだとよ。
近くに居るのが見えたから、誰かにすぐ行かせると答えといたぞ♪】
【そっか~♪ ありがとね♪】【おう♪】
「桜」「空「マーズ参上♪」」ワン♪
「ありがとう♪ 早速なんだけど……」手招き。
「「はい♪」」ワン♪
ついて行くと、高嶺が開けた大きなクローゼットの隅に小型の金庫があった。
「整理しようと出していたら……でも全く知らなくて……」
クローゼットの前には帽子や装飾品が入っているらしい箱が積み上げられているので、その奥に隠されていたらしい。
「調べますね♪」入って1歩で止まって【空ぁ~】手招き。
「うん。ショウは待てだよ」ワン♪
桜マーズは闇呼玉2つを金庫の上へと投げた。
不穏~禍の黒霧と一緒に叫びながら出た怨霊は、黒霧とは別の闇呼玉に吸い込まれた。
【毒殺された女優さん達……だから毒薬も入ってるし、神力源入りの噛みつき玉も入ってる。
噛みつき玉の中身……フレブラン様の真核もある!
……勝士喜くんからのだよ!】
【だから意識が虚ろになってるんだね?
開けられる?】
【やってみる】――詠唱――【封印結界、総解還!】
金庫を覆っていた人神の神眼にしか見えない魔女結界が消え、カチリと音がした。
【回収はボクが。高嶺さんに話してね】
【うん。未遂てコトにする~】【それがいいね】
空マーズは金庫に向かい、桜マーズはクローゼットの外へ。
「回収してるのは魔女の千里眼な水晶玉と毒薬です。
毒薬は未開封ですから、邪魔者に使う予定だったみたいです。
忍ノ里に持ってっていいですか?」
「金庫ごとお願いします。
怖いし、気持ち悪いから……」
「ですよね。貰って行きますね。
隣の部屋にピアノありますよね?」
「ピアニストの役をした時に弾き方を練習したみたいね。曲なんて弾けないけど。
今は発声練習用にしているわ。
弾いてくださる?」
「「はい♪」」【僕も聴く~♪】【【うん♪】】
数曲 連弾しつつ彩桜は癒し強めの治癒を、サーロンは優しい浄化を当てた。
「高嶺さん、バイオリン弾いてください♪」
「え……いいの?」
「「はい♪」」
と、怖い思いをしたのを少しでも上書き出来たらと提案したのだった。
―◦―
そうして落ち着きを取り戻した高嶺から、外国にも家を持っているらしいから調べて、魔女が残したものを回収してほしいと頼まれた彩桜達は、高嶺のアルバムを見て得たヒントからハワイに来ていた。
【あの家、高嶺さんの後ろに写ってたよね?】
【だよねぇ。お庭のお世話オジサン?】
【みたいだね。行ってみる?】
【もっちろん♪】「こんにちは♪」シュタッ♪
「ニンジャ!? 増えた!?」
「「マーズです♪」」ワン♪
「そうか。来てくれたか」ニッコリ。
「高嶺さんから聞いてましたか?」
「連絡は全くだから俺達の会社に頼んでたんだ。
家の中の掃除も裏庭の手入れも項目にあるんだが、行けないんだよ。
見えない壁があってね」
「調べます♪
芝生の手入れ、続けててください♪」
「ああ。頼むよ」
【て言ったのにオジサン見てるよねぇ】
【結界解除までならいいんじゃない?】
【俺達も入れないもんねぇ】印を結ぶ。空も。
獣神力では発動しないが一緒に唱える。
「「――封印結界、総解還!」」
演出でキラキラを舞い昇らせた。
「おお~♪ ニンジャは最高だな♪」
「芝生は?」
「もちろん刈るよ♪」
「まだ入らないでくださいね。
悪霊、待ち構えてますから」
「おぉ……そうだったのか……」
家の両側を確かめつつ裏庭で合流。
【彩桜、アレ……】【アレだよねぇ】
お陽さま燦々な表側の庭とは大違いに、どんよりしていて薄暗い。
そう見えるのは神眼にのみなのだが、どんより源は地中から噴き出している不穏禍やらだった。
総解還したので地中の封印も解けてしまったらしい。
【怨霊だね。しかも大勢……】
【巻き込まれちゃったみたい~】
【網で捕まえたらいい?】
【サーロン、闇呼玉 持っててね♪】両手に渡す。
【浄破邪で発動していい?】
【お願~い♪
ショウはユーレイに網ね♪】【うんっ♪】
【俺は普通霊ねっ! 癒しの破邪千華掌!】
ボコボコと出て浮かんでいる怨霊達へと蕾が飛び、開いては捕まえる。
逃げようと動き始めるよりも速いし的確だ。
捕まえると空マーズの闇呼玉へ。
【ショウ!】【ひゅ~ん♪ ぱ♪ しゅぽっ♪】
【昇華闇障暗黒、激天大闇呼吸着!】
網ごとの大きな塊を吸着した。
【おっしまい♪】
【下はカラっぽだよ~♪】クンクンワン♪
【ショウありがと♪】
3つの闇呼玉をジーーーッ。
【勝士さん居ないねぇ。
此処で戦ってるんだけど……】
【そうなの?】
【うん。最初が双子オバサンの家。
勝士喜くん、父ちゃんの神力補助あったから無意識瞬移して出られたの。
勝士喜くん連れて逃げて、隠したの。
沙由さん助けなきゃだったから。
でも反撃されて……婆ちゃん悪霊に、かにゃ?
此処に引っ張られて、戦って……】
【おじさん、祓い屋だったの?】
【違うみたい。単独だけど強いヒト。
爺ちゃんと婆ちゃんも。沙由さんも。
勝士喜くん、無自覚。
狙われてるから目覚めさせなかった、って】
【皆さんフレブラン様の欠片持ちなんだよね?
あれ? 彩桜、拾知してるの?】
【お話ししてたの~♪】保護珠を見せた。
【そっか。持ってたんだったね】
【うん♪ あ、うんうん♪
空マーズはソラくんで~す♪】
【彩桜っ!?】
【懐かしいでしょ♪
……そぉなの。だからユーレイ♪
影響? ナイナイ♪ 俺達、忍者だから~♪】
【彩桜ってば、ボクにも聞かせて――あ……】
【どしたの?】
【シドが お婆ちゃんと話してて、磯前さんは引っ越して来たって。
随分前らしいけど。
だからカジ兄ちゃんは西海の家しか知らないって】
【うんうん。そぉだって~。
悪霊魔女から逃げたみたいだねぇ。
祓い屋 知ってたら仲間入りしたかったって。
フレブラン様て人神様だから、お稲荷様でも見つけられなかったのかにゃ?】
【そうかもね。ボクも全然 知らなかったよ】
【でも知ったから♪
これからは祓い屋仲間ねっ♪】
【そうだね♪ それで、出してあげないの?】
【噛みつき玉、危険だからぁ。
コレ保護珠なんだもん】
【それでだったの? ありがと彩桜】
【それじゃ怨霊化させられたヒト達 助けよ~♪
女優さん達もねっ♪】
【不穏とか禍とかも浄滅しないとね♪】
【うんうん♪ ん?
オジサンも見たいのかにゃ?】
家横の隙間から覗いていたので走った。
もちろん『隙間』と言うには広いし、かなり離れて見ていたのだが。
【彩桜ってば! 見せなくていいからっ!】
【来て来て~♪ コッチでやろ~♪】
【怖がってるからダメだってば!】
魔女の丘での風葬遺体を運んで来た時と言い、時々彩桜って解らないと思いつつ、追って走る空マーズだった。
―・―*―・―
【紅火ぁ、堅固 頼めるかぁ? 兄貴トコだ】
【む。
理俱、カケルを頼む】瞬移。
【おいっ! ったく~】作業部屋へ。
瞑想しているつもりらしいカケルを見、集中維持で部品を作り続けているスサとヤタを見て、その差に溜め息。
【理俱師匠、ノイズがウルサイんですけど】
【赤虎師匠も困ってましたからガマンするしかないんでしょうけど……】
【確かになぁ。
存在そのものが呪みたいな奴だよなぁ。
部屋の隅に動かすよ】スイッと。
【【少しマシになりました♪】】
【そうか。これも試練だから我慢してくれ】
【【はい!】】
と、カケルの相手はしていない理俱だった。
人魂に入ってしまった魔女オーガンディオーネが目指していたのは人世の女王になる事です。
その後で神世も侵略して地星の女王にと考えていたんです。
闇禍を利用して、強い人神の神力を集めて、まずは王妃にと動いても、
そうそう一般女性を妃に迎えてくれる王は居ない。当然ですけど。
そこで目指せセレブ!――な訳です。
バラバラ細かくなっているのに、ことごとく一般人に生まれたようですね。
ま、王族や貴族なんて多くありませんからね。
噛みつき玉は人神の神力のみを対象としていますので獣神には噛みつきません。
魔女は獣神を穢らわしいと思っていましたので。
なのでソラは掴んでも平気ですが、彩桜とショウは逃げないといけないんです。




