初代四獣神と双子執事②
フィアラグーナはザブダクルを睨み据えて話を続けた。
「さてと、襲撃を受け続けたって古い話の続きだ。
最初はオーロザウラの支配を受けたヤツラだけだった。
そこに真ん中の地を欲した者やら、其処には宝が埋まっていると信じた愚かな欲の塊やらが加わったんだ。
時を経て支配を受けたヤツラが老い耄れて攻めて来なくなっても、欲深いヤツラは増える一方。
やがて それは戦乱期と呼ばれる程に酷くなった。
国と称する軍団になって、中央を征し、その宝を得た者こそが勝者だと、何代も何代も、継いでまでも攻めて来やがる。
場所を移したくても掘り出す隙すらも無いくらいにな。
それでも何度か出したそうだ。
だが出せばアンタの攻撃を受ける。
とてもじゃないが他の禁地になんか持って行けやしない。
ま、何処に逃げても同じだろうがな。
だから置いて逃げるしかなかったんだ。
掘り出しさえしなきゃいいんだと、人神じゃあ簡単には掘れない深さまで沈めたんだ。
いつか子孫達に託せる。そう信じてな。
だが鳳凰の長老が裏切り者だと朱雀様を追放したんだよ。
アンタを滅しろと派遣した長老じゃなかったらしいけどな。
それで揃って月に逃げたんだ。
道を作ったのも初代四獣神様だからな。
そ~いやアンタ、人神達が苦心惨憺して掘り出した時、何してたんだ?
獣神の地だったと伝えなかった副産物でアンタの事なんか知らない人神ばかりだったから良かったものの、滅されたかも知れねぇのによぉ」
「再誕に失敗し……已むを得ず魂を切り離した反動で、長く眠っていた間ではないかと……」
「あ~そっか。アミュラ様が仰ってたオーロザウラの縛りだな?
確かに、欠片に戻したいのに自力で再誕されちゃあ操禍を奪えないもんな。
ったくトンデモナイ親だよな」
「そんな縛りまでも!? 初耳なのですが……」
「まぁ誰しも子を生む時にゃあ何かしら込めるモンだ。
ただそれは普通は『願い』だ。
子の幸せを願って込める、ささやかなモンだ。
時には己が若い頃に果たせなかった夢や望みなんてのを押し付けたりもするらしいが、そうであっても小さなモノなんだよ。
オーロザウラが込めたのは呪と言っていいくらいのモンらしい。
だから『縛り』だ。
アミュラ様にも朧気にしか見えなかったらしいが、ロクでもねぇモンが込められてたのは確からしい。
もしかしたら、アンタがすぐに見境なくなるのも、他者の思いとかを掬い取るなんてのが鈍いのも、ソレに通ずるが他者を信じないのも縛りなのかもな。
けどよ、親が込めた何かしらは越えられるモンなんだよ。
俺なんかより遥か彼方に歳上なアンタに偉そ~言うけどな、ンなモン乗り越えて、強く生きやがれってんだ。
まずはコイツらを信じて連れてけよ?」
双子執事にニヤリとしてから、爪で器用にティーカップを取って飲み、シフォンケーキも爪で刺してパクリ。
「ふ~ん。コレを孫がねぇ♪
また人世に行くらしいがソッチにも通わせてやるよ。
そんじゃあな♪」笑って瞬移。
暫く呆気にとられていたが、ルサンティーナが笑い出した。
「とても爽快なお方ですね♪」
「はい♪」「それはもう♪」双子も笑う。
「それに やさしいね~♪ このケーキも~♪」
シャルダクルはシフォンケーキをもぐもぐしながらニコニコしている。
「いろいろとあり過ぎて……ああっ!
カイダーム殿、その……私は、御孫――」
「陛下。私なんぞに『殿』なんて大仰な。
お付けにならないでくださいませ。
それと、此方の国の前王様と現王様はカイダーミスト前・第1位公爵の御孫様で御座います。
私はカイダーム。別神で御座いますよ」
「しかし――」『邪魔するぞ』「また!?」
振り向くと黒狐がニヤリ。
「さっき遊びに来た龍と一緒にしやがったな?
失礼な奴だ。
王妃、支配はモグが解いている。
目覚めさせてやってくれ」
水晶玉を渡して去ろうと――「「ガイアルフ!」」
「何だ? ダムダムとは昨日も話しただろ」
「少々此方に」クウダームが引っ張って行く。
「聞かれちゃマズい話か?」尾を引かれながら。
「そうではありませんが……昨日の話で確かめに行ったのですよ。
カイの孫なのに、あの強い共鳴は何故?」
「カイの孫達を助けるのに、次の再誕用に預かっていたカイの欠片だけでは足らず、クウのも使っただけだが? 不満か?」
「とんでもない! 感謝しかありませんよ!」
「ま、カイならば子を救えなかったのだから怒りも納得だがな。
で、クウは何が言いたい?」
「つまりカイの孫というだけでなく、私共の子でもあるのですよね?」
「そうなるな。足せば親よりも多くなる。
もう親でいいだろ。それが問題か?」
「ですからっ! 問題だなんて言ってません!
確かめたかっただけですよ」
「と、まぁ聞いた通りだ。
俺を引っ張っておいて大声でバラしたのだから、カイもクウも覚悟して子の面倒も見ろ。
両王の間を行ったり来たりすりゃあいい」
「「えっ?」」「それはいい!」「あら♪」
「公爵な息子も喜ぶだろ。
それと――」【おいオフォクス、未だか?】
渋々顔のオフォクスと苦笑しているモノオクスが現れた。
「未だ暫く掛かるのですが……」
「お連れしましたけど、ただの光球ですよ?」
「構わん。ダムダムならば何かは分かる」
「では」「此方を」
オフォクスの背の毛からモノオクスが光球を取り出し、カイダームに渡した。
「まさかクウダリアスト!?」
「カイダリアストの協力を得た。
神王兄弟が持っていたペンダントに込めていた欠片と、孫娘の再誕でお借りしていた欠片から再誕させた。
ダムダムも同じ方法で再誕したんだろ?
神とは便利なものだよな♪」
愉し気に尾を揺らしてガイアルフは術移した。
「欠片に残っていた記憶の断片より、彼も又、地を掘り、現れた禍に襲われたと判りました。
幼子達を私共の父の元に預けようと旅していた途上だったようです。
先に預けておれば、との後悔が強く残っておりました。
クウダリアスト様の件の後、父達とドラグーナと儂は神世全土の地を探り、仕掛けられておった禍を全て滅しました。
何れの時も間に合わず、申し訳無いばかりで御座います」
「ですので、せめてもと兄弟交代で育てさせて頂いております」
カイダームから光球を受け取り、兄の背へ。
「あのっ!
兄の欠片は何故、何処から月に?」
「父が強い禍を感じて行った時、カイダーム様は既に小さな欠片だったと聞いております。
そのまま保護しており、父が捕らえられた際に保魂されたのではないでしょうか。
保魂域で見付けた息子からは、謎の人神魂として最奥に保魂されていたと聞きました。
もう1つはフィアラグーナ様が保護していた分ではないかと。
何事か起こった時の為、分けて持っていたのだろうと思っております」
狐兄弟は丁寧に礼をし、話しているうちにシフォンケーキを食べに戻っていた父を連れて去った。
「本当に今日は盛り沢山ですね♪
あなた、これからすぐに初代四獣神様の所に行かれますの?」
「そうだな。早急に謝らねばな」
「「でしたらお捜し致します」」
双子は掌を合わせて目を閉じた。
「人神の地」
「その四方の端から中心部に向けて
「集まろうとなさっておられます」」
「どうしてそんなに直ぐに?」
「再誕の際に」
「沢山の神力を「頂きましたので」」
「その礼も言わねばな」
「では私も。
シャルダクルと、この水晶をお願いしますね」
ルサンティーナは双子に託してザブダクルの手を取った。
「ラピスリ様から欠片をいただいて、私も術移ができるようになりましたの♪
シャル、お留守番をお願いね」「は~い♪」
―・―*―・―
これからに備えて眠ったとは言え、青生と彩桜には仮眠程度にしか猶予は無く、真夜中の邦和から月に向かった。
【イーリスタ様~♪ 俺達また来た~♪
カリュー行こ~♪】
【行こうと思ってたら来た~♪
今日も元気だねっ♪】現れた。
【それじゃ乗って隠れてねっ♪】
通路鏡を預かって背の羽毛に隠れると、神王殿を経由してカリューへとイーリスタが術移を繰り返した。
――古の人神の地、中央部の月の門から宙に残る道の痕跡に入った。
【あらら~掘り当てちゃってるねぇ】
【確かに無自覚で巨大な神力だよね】
【カケルはアレの鍵?】
【んとねぇ、始まったトコ?】
【そうだね。これは序章だね】
【そっか~♪ だから来るんだねっ♪
じゃあ せっかく来たんだから~♪
通路鏡の発動、お願いねっ♪】
【ほえ? あ、そっか♪
この鏡さんね♪ お話しする~んるん♪】
【まだ記憶の蓋を開けていないんですよ。
ですがお任せくださいね】
【な~んか企んでる~♪ 楽しも~ねっ♪】
【はい♪】【発動した~♪ あ、ザブさんだぁ】
【ん? ああ、ルサンティーナ様が連れて術移して来ているね】
【また瑠璃姉イラッとしちゃう?】
【もう大丈夫だと思うよ】【そっか~♪】
【ソッチは大丈夫かもだけど~】
前日よりも神もユーレイも少ない為に、ソラ達は更に不利な状況で苦戦していた。
【禍だけじゃなくて闇禍も居るねぇ】
【かなり多いね。禍の中にも入っているね】
【でも行っちゃダメだよねぇ】【そうだね】
歯痒く思いながらも見ていると、到着したザブダクルが禍を転じた『福』を膨らませ始めた。
【光神て自覚したのかにゃ?】
【まだ自覚していないみたいだよ。【あっ!】】
爽快に白輝一色!
【コレだよねっ♪
シッカリ隠れて掴まって身構えててねっ♪】
ゆっくりと浄化光が収束する。
見えるようになると、すぐ近くに純白の翼をはためかせている瑠璃鱗の龍が浮かんでいた。
【ブルー様だよねっ♪ やっと会えた~♪
チェリー様は? 一緒じゃないのかなぁ】
【アオ王子なのかもだよ?】【そっか~♪】
【そろそろ行くから静かにしててねっ♪】
【はい♪】【は~い♪ 鏡さん頑張ってね♪】
〖はい♪ サクラ王様♪〗
彩桜の手からイーリスタの翼の先へと飛んだ。
【ありがと彩桜♪ いっくよ~♪】
月の道跡から出たイーリスタは鳥翼を持つ瑠璃鱗の自称『ただの竜』に向かって飛んだ。
「アオ~♪」「えっ?」
鳳凰神イーリスタ、嬉しさ爆発状態でハグ♪
「ホントに来た~♪」
古い話から未来へと踏み出したと示したところで、舞台は古の人神の地へ。
とうとう、らしき鳥翼龍神が現れました。




