監禁されていた総理
マーズが演奏していた頃、輝竜家には邦和各地で神マーズ達が保護した子供達が運ばれて集まっていた。
音楽が流れ始めて静かになっていったが、それまでは大騒ぎだったので若威は やっと新たに子供を連れて来た神マーズを捕まえる事が出来た。
「この子達は? どうして こんなにも大勢?」
事務所に引っ張って、短く尋ねた。
「マーズを敵視している親と喧嘩をし、忍ノ里に繋がるであろう中渡音を目指していた子供達です。
キツネの社に連れては行けませんので輝竜家で保護をお願い致します」
「輝竜さんは留守なのに……でも仕方ありませんよね。
解りました。
そう長期にはならないでしょうからお預かりします。
ただ、部屋の拡張をお願いしたいのですが」
誘拐騒ぎにならなければいいのだが、と懸念しつつ頼んだ。
「では元々の拡張を強化しておきます」
「ありがとうございます」
神マーズが去ると、若威はマーズやキリュウ兄弟の音楽を流し続けられるようにセットし、幼い弟妹を連れている兄姉達と話そうと大部屋に戻った。
大部屋では幼い子供達が眠っていたので、皆 静かに音楽を聴いていた。
「皆をマーズ学園の生徒として仮登録するから生活の面は心配しないでね。
IDカードを持っているか番号を覚えているなら廊下に並んでもらえるかな?
兄弟の代表だけでいいよ。
IDで登録できない場合は書いてもらわないといけないけど大丈夫かな?
氏名、年齢、親と離れた理由だけは書いてね。
登録人数分の食事や寝具、着替えなんかを用意しないといけないからね」
「はい」一斉に。しかし眠っている子達を起こさないように控え目に。
そして素直に長子が廊下に並び、弟妹は静かに待つ。
殆どがIDカードを持って来ていた。
空間が出来たので、持っていない子供達は若威の前に並んだ。
「用紙を配るから書いてね」
紙を平バインダーに挟み、スマート鉛筆を添えて渡す。
「慌てなくていいからね。
消す時は尖っていない方で軽くなぞるだけでいいからね」
目を見て微笑み、語りかけながら渡していった。
廊下では沙南がタブレットにIDカードを翳したり、手入力したりで登録が進んでいた。
親と離れた理由は、もう『同じです』しか聞こえなくなっていた。
マーズのファンは女性の方が多い。
年齢層としては若年層が多く、
新たに老年層が増えたんだよな。
30代後半から50歳代、ちょうど子供達の
親世代の認知度が低いのは知っていたけど、
こんな事になるなんて思ってもいなかったな。
さて、誘拐騒ぎにならないように……
と言うのは簡単だが、
相手はヘイト感情むき出しだから
厄介な難問だよなぁ。
にこやかに渡しつつ悩んでいると足音が迫り、
「若威君、これは……?」
女性の声に安堵全開で振り返ってしまった。
「香鳥先輩、ご協力をお願いします。
マーズ学園は幼児クラスから高校までにしないといけないようです」
申し訳ないが巻き込もうと決めた。
―・―*―・―
この日は夜遅くまで演奏しようと決めていたマーズだったが、途中で見田井が白玉と小倉を連れて入って来て『総理官邸にお願いします』というカンペを見せたのでキリ良く中断した。
【俺、フリューゲルと奏お姉さん連れて来る~♪】
桜マーズが瞬移し、赤と黒が追った。
【引き継ぎは彩桜に任せましょう】【だな】
「どのようなご用件なのです?」
「輝竜家に集まっている子供達の件ですか?」
銀と青が金を護るように両側に立ち、一歩前に出た。
「確かにその件なんですがね、我々は仲間なんですからぁ」
白玉が困り顔で怒らないでくれと込める。
「警察に子供が行方不明だと電話だけでなく殺到してるんですよ。
しかもマーズが連れ去ったのを見たと」
小倉も同様だ。
「では歩き続ける子供達を放置すれば良かったと?」
「そもそも家出の前に親子喧嘩があった筈だ。
それを先ずは確かめてもらいたい」
「マーズは子供達を保護して輝竜家に預けたんです。
親子喧嘩をしていないのなら迎えに行って構いませんよ」
「ただし嘘は許さんからな。
子供達はマーズに助けを求めて歩いてたんだからな」
「コレ、名簿なの。
まだ増えてるから途中なんだけどね。
警察には連絡するつもりだったの。
だから書いてもらってる真っ最中なの。
家出理由も書いてるから読んでね」
戻った桜マーズが簡単に綴った冊子を渡した。
「教育委員会も加わって?」「総合学園化?」
「夏休みだけど親子仲直りまで預かる為なの。
ちゃんと学園するの。
これからも家出少年少女の保護するの~♪」
「警察の対応は これを持ち込んで検討します」
「未成年保護、感謝します」一緒に敬礼。
「よろしくお願いしま~す♪」敬礼♪
白玉と小倉は急いで去った。
音楽の方はマーズが離れた直後はリプレイを流していたが、今はフリューゲル&カナデでのバラードが流れている。
「それで総理からは何と?」今度は見田井に。
「総理本人じゃなく代理なんですけどね。
当局に居る筈だから来るように伝えてくれとだけなんですよ。
何を聞いても答えてくれなくて、マーズに伝えないのなら考えがあると脅すんですよ」
「そうですか。
その事実を伝えては如何です?」くすくす♪
放送中のカメラを指差す。
「勘弁してくださいよぉ」
「では総理の方はマーズが直接」
「だな。問い詰めてやる」
「では緑 紫 黒 灰 藤 黄 橙 白 黄緑は輝竜家にて情報収集、各種対応を速やかに。
他は総理官邸へ」
「承知」一斉に瞬移した。
――総理官邸内、総理が居る部屋。
「マーズ!?」
「呼び出したの総理でしょ?」
「当然、忍者移動で来ます♪」
何故だか逃げようとした総理を飛んで捕まえた桜と空は宙を運んで椅子に戻した。
「東邦テレビを強迫したそうですが、どういったご用件ですか?」
「強迫!? 私ではないっ!
全ては対抗派閥の――」
ドアが開き、武装した特殊部隊が横並びで銃を構えていた。
その後ろに居るスーツ姿の男女の中から前に出た初老の男がニヤリ。
「皆さん両手を挙げて頂けますかな?
全ての罪を現総理とマーズとで背負って頂きますよ。
さあ、お早く――ん?」
予定とは違ったので振り返ると子供マーズ2人。
「ん? ここで野次るて決めてた?
残念でした~♪ 皆さん寝てま~す♪」「はい♪」
並んでいたスーツの男女は壁に凭れて座り込み、全く動かなくなっていた。
「う、撃て! 総理もろとも撃ちなさい!」
「おやすみなさいなの~♪」治癒眠なの~♪
「危険物は預かりますね♪」逆具現化です♪
「何故またっ!?」
前に視線を戻すと、特殊部隊も眠っていた。
「後ろヒト達おやすみなさいしたから♪」
「前の皆さんも、おやすみなさいです♪」
「クッ――」ドサッ。
「おじさんも♪」「おやすみなさいです♪」
スイッと団体さんを動かして室内へ。
ドアを閉めて
「「忍法、魂キラッキラの術♪」」
【【人用、浄魂の極み!】不穏は闇呼吸着♪】
キラッキラ☆な浄化光で包んだ。
「それじゃ「おはようございます♪」」反転治癒眠♪
一斉に目覚める。慌てて起き上がる。
キョロキョロもする。
女性は服が汚れていないか、髪や化粧が乱れていないかと忙しい。
「ええっとぉ~、状況、理解してる?」
「武器とかは後でお返ししますので♪」
「さて、正直に全て話してもらおうか」
銀マーズが低い声で凄む。
【やっぱり伝説の化石はコワイよねぇ】
【ヤメてよ彩桜、笑わさないで】兄達からも同様。
銀は神眼で桜を睨んでから続けた。
「早く吐かねぇとアンタらが計画してたのを現総理から国土大臣に置き換えるぞ?
特殊部隊はマーズと置き換えだな。
こんな所でバカやってないで復興に加わってもらいたいからなぁ。
取り巻き達も国土大臣と同じ地獄直行便に乗せてやるから安心しろ。
乗せる前に数日間の監禁もオマケしといてやるから感謝しろよな」
「か、監禁、だなんてっ」
「じゃあ、この状況を説明してもらおうか?
この部屋な~んだ?
この非常時に、ど~して総理が部屋着なんかでビクビクしてるんだよ?」
「そ、それ、は……」
「ぜ~んぜん使わない総理もいるくらいの特別な客間だから~、こ~んな非常時なんかに だ~れも来やしないから~、利用したんでしょ?
官邸で働いてるヒト達だ~れも、まさか総理が官邸に監禁されてるなんて思わないし~♪
でぇ、寝込み襲って連れて来たんでしょ?
続きは話さないと知らにゃいよ~♪
銀の兄貴、と~ってもコワイんだから~♪」
浄魂効果もあり、敗北を認めた若手議員達が手を挙げた。
「国土大臣、見限られたようだな。
そんじゃあ、ソッチから順にな」
「確かに総理を監禁していました。
非常時に何もしないどころか忍者達と企てを謀り、暴動を煽動しようとしていたとして、口封じも兼ねて一網打尽にと……」
「ふ~ん。次」
「マーズが地震を起こしたとしようと言ったのも国土大臣です。
それを流布するよう手配しました。
しなければ私の政治生命が尽きてしまいますので……」
「政治生命ね。
今は命そのものが尽きそうだがな。
じゃあ次は?」
「反マーズ派を作ったら、次は建築業者と対立させると、請け負えば業者が倒産しそうな額を突きつけたんです。総理の名で。
全ての悪は総理だと」
「国土大臣が、次の総理になる為だからと!
見返りは十二分に与えるからと!
政治の為だからと言ったんです!」
「ンな事わざわざしなくても他派閥からの唯一の大臣だろーがよ。
次期にと期待されてたんじゃねぇのかぁ?
なぁ総理?」
「その通りで……私は、そちらの派閥に繋ぐ為の襷でしかない。
私らの派閥から総裁が出るのは最後になるかもしれないからと、今回だけは閣僚を全て派閥内でと前の総理から指示されておりましたが、彼だけは次の為にと入れる許しを得たのですよ」
「さっき俺達を見て逃げようとしたのは?
窓から出ようとしただろ。最上階なのに」
「マーズに成敗してもらうと言われておりましたので、とうとう来たかと、つい……」
「監禁、強迫、煽動、文書偽造。
まだまだ有りそうだが十分だろ。
けどま、訂正やらの時間も惜しい。
業者への補助金の不足分はマーズが出す。
人件費の単価だけは訂正してくれ」
「物凄い額になりはしませんか?」
「業者には適度に請け負ってもらうよ。
ソッチにもマーズが援助するんなら、反マーズ派とやらも忍法での復元を選ぶだろ。
どっちに転んでもマーズなら、早くてタダがいいに決まってるからな」
「ありがとうございます。
国庫的にも大助かりですよ」
「そんじゃあ決まりだな。
国土大臣と取り巻き議員達にも働いてもらわねぇとな。
特殊部隊は土建屋と一緒に頑張れよ」
「ねぇねぇ大臣さんと議員さん達~。
お子さん達、家出しちゃってるよ?
ワルしてるの気づいてたみたいだねぇ」
一斉ザワザワ大慌て!
スマホをオンにしてゴソゴソわたわた。
「そ~んな慌てにゃくても~。
神マーズが保護して輝竜家に居るから大丈夫♪
でもねぇ、い~っぱい居るの。
現状シッカリ見て警察の対応に加わってねっ♪」
「煽動した結果ですから真剣な対応をお願いしますね」
金 銀を残して他のマーズは大臣と議員達を連れて忍者移動した。
「総理、人件費の件だけ速やかにお願いしますよ。
そんじゃあ土建屋ボランティア達、行くぞ♪」
「お話は後程、改めて参りますので」
金 銀マーズは特殊部隊を連れて忍者移動した。
人には見えない所から超越者が操っていたとしても、欲を利用されたのでしょうから罪は変わりありません。
マーズ学園の方は、香鳥が連絡すると教育長は
『幼児部から高等部まで全て申請されていましたよね?』
と香鳥をキョトンとさせ、
『若威君が真の教育者となった祝いです。
そういう事に』
と穏やかに電話を終えたそうです。
これにてマーズ学園は正式に子供達を預かれる準学校になりました。




